12月29日 シャンソンの日
高橋 バイトの先輩。記念日に詳しい。シャンソンといえば美輪明宏のイメージ。
田中 バイトの後輩。「〜っす」が口癖。シャンソンっすか…シャンソン…
ここはとある郊外のコンビニ。
「高橋さんは年末年始の予定って何かあるんすか?」
「いや、ここのバイトぐらいだな。あとは家でのんびりするよ」
「ふーん。ちなみにいつっすか?」
「えっと、30日31日の夜勤と1月1日の夕勤、夜勤、2日3日の夜勤だったかな」
「毎日じゃないっすか⁉︎いくらなんでも入りすぎでしょ…」
「店長から入れるところは全部入ってくれ、って言われてな。他にやることっていっても初詣ぐらいしかないし」
「バイトだけでぎっちり予定が詰まってると思うんすけど…どこで初詣行くつもりなんすか…?」
「うーん、1日の夜勤が終わった後にでも行くかな。まあ別に行かなくてもいいし。正月三が日は店長のおすすめコーナーでおみくじが引けるしな」
「あー、なんか今年もあったような…なんでしたっけ?一言おみくじみたいなのっすよね」
「そうそう。今年の運勢が一言で表されてるっていう店長特製のおみくじ。1人1回無料で引けるんだ」
「あれ無料なんすか?それなら引いとけばよかったっす…ちなみにどんなことが書かれてるんすか?」
「えーと、今年引いたのには『諦めるな!』って書いてあったな」
「…えっ?それってどういう運勢なんすか?」
「解釈は自由らしいぞ。まあ正直よくわからん。去年は『遡れ!』だったかな」
「自由すぎて意味がわからないっすね…とにかく何かアドバイスめいたことが書いてあるってことっすね」
「いや、そうでもない。一昨年は『かまぼこ』だったし」
「ほんとにそれ運勢なんすか…?」
「謎すぎて逆に毎年地味に楽しみなんだよ。田中くんも来年は引いてみたら?」
「そうっすね。でもそんなにバイト入ったら遊びにも行けないっすね…せっかく初売りで色々買ってもらおうと思ったのに…」
「なんで奢る前提なんだよ。でも買い物ぐらいなら付き合うよ?」
「いや買い物に行く時間ないでしょ…あと新年といえばあれに行ってみたかったんすよね。あの、新春シャンション…あれ?…しんすんさんそん…」
「…新春シャンソンショーか?」
「それっす!そのサムソンティーチャーとかいうのをみてみたかったっす」
「魔界にでも見に行くつもりか?シャンソンな。でもたしかに有名な早口言葉だけど、実際にやってるのか?」
「わかんないっす。というよりまずそれ自体がなんなのかわからないっすね…」
「言ってみたかっただけか…言えてなかったけど。シャンソンってのは元々はフランス語で『歌』って意味の言葉で、フランス語の歌曲のことだ」
「へー、知らなかったっす。高橋さんはそのジャクソンに詳しいんすか?」
「わざとじゃないかってぐらい言えてないな…別にシャンソン自体には詳しくないな。今日がシャンソンの日だからちらっと調べたぐらいで」
「記念日もあるんすね。なんで今日なんすか?そのシェンロンが生まれた日とか?」
「いやさすがにわざとだろ…1990年のこの日に銀座の有名なシャンソン喫茶の『銀巴里』ってお店が閉店したんだ。このお店は日本初のシャンソン喫茶で『東の銀巴里、西のラ・ベル・エポック』と呼ばれるほどの日本有数の店だったらしい」
「ふむふむ。でも閉店の日が記念日になるなんて珍しいっすね」
「それだけ惜しまれながらなくなったお店なんだろうな。でもこういう情報は調べたけど、実際の曲とかは聴いたことないな、そういえば」
「そうだ!それなら一緒に歌えるように練習しましょうよ!そしてその新鮮ちゃんちゃん焼きショーに出場しましょう!」
「…まずは新春シャンソンショーって言えるようになるところから始めようか…」