12月25日 クリスマス
高橋 バイトの先輩。記念日に詳しい。クリスマスといえばきよしこの夜。
田中 バイトの後輩。「〜っす」が口癖。クリスマスといえばクリスマスキャロル。
武 高橋家に住み着く男性の幽霊。
貴子 高橋家に住み着く女性の幽霊。
太一 高橋家に住み着く子どもの幽霊。生まれついての幽霊。ラップ音は「パチパチ」。12月25日生まれ。
ここはとある郊外のマンションの一室。
ガチャ
「はぁ…疲れた…」
「あ、おかえりなさい」
「ああ…ただいま…」
「お、遅かったっすね?ケーキ屋さんってこんな時間まで開いてるんすか?」
「いや、店自体は20時閉店なんだけど、その後の閉店作業までやるとこの時間なんだよ…」
「なるほど。お疲れ様っす」
「まあ毎年のことだから…あれ?なんで田中くんがいるんだ?」
「ようやくっすか…普通に受け入れられたんで逆に焦りましたよ…」
「すまん…疲れで判断力がミジンコ以下なんだよ…それでなんでうちに?」
「太一くんの誕生日のお祝いをするって言ってたじゃないっすか。ぼくもお祝いしようと思って来ました!」
パチパチ!
「そっか。わざわざありがとう」
「いえいえ!あっ、そうだ。高橋さん、夕飯食べました?」
「いや、まだだけど」
「ちょうどよかったっす!おじゃまする代わりといっちゃなんですけど、クリスマスっぽい料理を作っておきましたよ!夕飯にどうぞ!」
「えっ、マジで!それはほんとに助かるわ!嬉しいなぁ、ありがとう!」
「そ、そんなに感謝されるとは…じゃあ座っておいて下さい。すぐに準備しますんで!」
「ああ!ありがとう!」
「お待たせしました!クリスマスといえばこれっすよね!」
「なんだなんだ?」
「ジャーン、おでんっす!」
「おー、おでんかぁ!いい匂いだ…早速いただいていいかな?」
「え、ええ」
「モグモグ…あー、美味い…良くしみてるし、体も温まって最高だな!」
「そ、そうっすか。それはよかったっす!」
「はぁ、ほんとに美味しい…あれ?おでんってクリスマスと関係あったっけ?」
「ほんとに判断力がヤバいっすね…どうしたんすか⁉︎自分はツッコミマスターだ、って自ら豪語してたじゃないっすか!」
「すまん…俺そんなこと言ってたか…」
「いや言ってないっすよ…ツッコミ待ちだったんすけど…マジで限界みたいっすね。早く寝た方がいいっすよ」
「ああ…でも太一くんのお祝いをしてからな。ケーキを準備しよう」
「あ、ぼく、クラッカー買ってきましたよ!店長のおすすめコーナーに売ってました」
「お、ありがとう。おすすめコーナーはパーティーグッズ特集だったの?」
「いえ、誕生日パーティー特集でした。メッセージカードも売ってたんで買ってきたっす。キリストさんの誕生日だからっすかね?」
「かもね。まあ実際キリストの誕生日ってわけじゃないらしいけどな、クリスマスって」
「えっ、そうなんすか⁉︎」
「キリストの降誕祭ってのは間違いないんだけど、12月25日ってされたのは4世紀前半ごろらしい。冬至の時期でいろんな宗教の祭が行われる時期でもあるから、この日にしてキリスト教の布教拡大を狙ったんじゃないか、とかいわれてる」
「えー、そうなんすか…でもぼくが読んだ本ではキリストさん本人が誕生日だって言ってましたけどねぇ」
「まあ説の一つだから何が正しいかわからんけどな。ちなみになんの本?」
「聖☆おにいさんっていうんすけど」
「…立川が聖地のやつか。たしかにそんな話あったな…ん?さっきメッセージカード買ったって言ってたっけ?何に使うんだ?」
「えっ、太一くんの誕生日プレゼントにつけるに決まってるじゃないっすか」
「あっ、プレゼントまで準備してくれたのか⁉︎」
「もちろんっすよ!ちゃんと武さんと貴子さんに太一くんの欲しいものを聞きましたからね!」
「…優しいねぇ、田中くんは。ほんとにありがとね」
「太一くんの喜ぶ顔が見えるならお安い御用っすよ!まあ顔は見えないんすけど…」
「ちなみにプレゼントは何にしたんだ?」
「これっす!土下座戦隊ユルシテホシインジャーのデラックス会釈ロボのおもちゃっす」
「…今やってる戦隊モノか?どうやって敵を倒すんだ…」