12月20日 ブリの日
高橋 バイトの先輩。記念日に詳しい。ブリといえばブリ大根。
田中 バイトの後輩。「〜っす」が口癖。ブリといえばぶりしゃぶ。
ここはとある郊外のコンビニ。
「食欲の秋っていうじゃないっすか?」
「うん」
「たしかに秋は美味しいものが多いっすけど、その点であれば冬も負けてないと思うんすよね」
「あー、たしかにそうかも。魚も肉も脂が乗ってうまいよな」
「そうっすよね!あとは寒さもスパイスになってると思うんすよ。温かいものの美味しさが倍増するじゃないっすか」
「それもあるな。寒いからこそ鍋とかシチューとかが美味く感じるわ」
「でしょ!やっぱり食欲の秋より食欲の冬なんすよ!そんなわけでですね、ちょっとぐらい食べ過ぎちゃうのはしょうがないんす。そう、しょうがない…」
「誰に対する言い訳なんだよ…そんなに気にしなくてもいいと思うけどな」
「だって年末年始はクリスマスやお正月でご馳走を食べる機会が多いんすよ⁉︎それなのに今からこんなに食べ過ぎては…うぐぐ…」
「自分に対しての言い訳だったか…」
「その分運動はしてますよ!いつも以上に頑張ってますもん!」
「この前のフットサル大会もめっちゃ活躍してたもんな。途中でイナズマイレブンみたいな技を出し始めたのはビックリしたけど…」※12月18日参照
「フッ、ちょっと本気出し過ぎましたかね」
「若干人間やめてた気もするが…そういや年末年始のご馳走といえば店長からもらえるブリの切り身の時期だな」
「えっ、なんすかそれ?初耳なんすけど」
「あれ?田中くん、去年の年末はバイト入ってなかったっけ?バイト入った人は全員、ブリの切り身がもらえるんだよ」
「なんでブリなんすか?まさか店長が釣ってくるとか…?」
「いや、知り合いの漁師から仕入れるらしい。一部は店長のおすすめコーナーでも販売してるぞ。ブリなのは年取り魚だからだろうな」
「年取り魚?」
「大晦日の食事で食べる魚のことだよ。東日本ではサケ、西日本ではブリを食べるが多いみたいだな」
「へー。なんで魚を食べるんすかね?」
「縁起物として食べられるそうだ。サケは『栄える』に通じるからで、ブリは『出世魚』だからってことで」
「出世魚…成長すると名前が変わるってやつっすね」
「ああ。関東ではワカシ、イナダ、ワラサ、ブリ、関西ではモジャコ、ワカナ、ツバス、ハマチ、メジロ、ブリって順で呼び方が変わるな」
「ふむふむ。でもハマチって特別よく聞く気がするんすけど」
「それは多分養殖物だな。ブリになる前ぐらいの大きさのもので養殖物をハマチ、天然物をワラサって呼び分けることがあるらしい」
「へー!これだけ詳しいってことは…」
「ご想像の通り、今日はブリの日だ。ブリの漢字が魚編に師と書くことから師走の12月、20日なのは0を輪と読んで、『ブリ』の語呂合わせからだな」
「ふーん。でもブリの切り身がもらえるなら年末どこかでバイト入ろうかな…照り焼きっすかね?塩焼きっすかね?」
「俺は毎年照り焼きにするな。脂が乗ってて美味いんだよなぁ」
「あー、いいっすね!…はっ!そうやってぼくにさらに食べさせようって寸法っすね!その手には乗りませんよ!」
「いや、別にそんなつもりはないが…でも縁起物だったら少しぐらいいいんじゃない?」
「うーん、たしかにそうっすね!それにお魚だったら体にいいし、ゼロカロリーみたいなものっすよ!無限に食べてもいいってことっすね!」
「考えが極端なんだよなぁ…」