12月12日 漢字の日
高橋 バイトの先輩。記念日に詳しい。好きな漢字は『日』。
田中 バイトの後輩。「〜っす」が口癖。好きな漢字は『田』。
ここはとある郊外のコンビニ。
「12月12日、今日って漢字の日っすよね?」
「ああ、そうだな。珍しいな、田中くんから記念日の名前が出てくるの。どうした?俺の唯一のアイデンティティを奪いにきたか?」
「いや、だから高橋さんは記念日以外でもキャラが濃いですって…ほら、今日って清水寺で今年の漢字が発表されるじゃないっすか」
「今年の世相を反映した1文字ってやつか」
「あれ好きなんすよねー いつかあの書くのをやってみたいっす!」
「あれ住職さんだろ?なかなか難しい夢だな…」
「そういやなんで12月12日なんすか?」
「『いい字 一字』の語呂合わせだよ。日本漢字能力検定協会が制定した記念日なんだけど、毎年いい字を一字ずつでも覚えてほしいっていう願いが込められてるそうだ」
「なるほど。今年は『鏖』って漢字を覚えたんでぼくはクリアしてますね」
「それはいい字なのか…?」
「ところで高橋さんは今年を漢字一文字で表すと何ですか?」
「うーん、そうだな…『遊』かな」
「おっ!陰キャの高橋さんらしくない楽しそうな字じゃないっすか!」
「失礼だな、君は…」
「ちなみにどういう意味なんすか?ぼく的には高橋さんはむしろいつも仕事を頑張ってたイメージなんすけど…」
「今年は田中くんがいろいろ誘ってくれたおかげで、今までの人生で1番いろんな遊びをした一年だったよ。こんなに遊んだことはなかったし…何より楽しかった。ありがとうね」
「そ、そうすか///…ふ、ふふん!こんなもので満足してもらっちゃ困りますよ!これからもぼくの遊び地獄に付き合ってもらいますからね!」
「なんだ、遊び地獄って…?まあでも楽しみにしてるわ。田中くんは今年の漢字はなんなんだ?」
「ぼくっすか?そうっすねー 『活』っすかね」
「ほう。それはどういう意味で?」
「今年はいろんなことに挑戦したり、活発に活動した一年だったっす!料理とか運転免許とか!あとは就活も始まりましたし!…はじまりましたし…」
「テンション下がってんじゃねーか。まあでも大変だよな…調子はどんな感じ?」
「ぼちぼちって感じっす…高橋さんはどうなんすか?」
「うちは研究室が割と強いからな。なんとかなるんじゃないかと思ってる」
「羨ましいっす…ぼくも何かコネが欲しいっすね…」
「うーん…店長に弟子入りするとか?木彫りとか金物作りとかで」
「あれはもう人間国宝級じゃないっすか…店長のおすすめコーナーにある手作りバターナイフを見てくださいよ…」
「バターナイフって手作りできるものなんだな…素人目に見てもなんかすごいのがわかるもんな…」
「あれは弟子入りしてもできる気がしないっす…」
「それもそうか…あー、そういや店長からこの店の社員にならないかって言われたことがあるな」
「その手がありましたか!ぼくも雇ってもらえますかね⁉︎」
「やめておいた方がいいと思うぞ…社員研修の座学の中に呪術って項目があったから…」
「…何をやらされるんすかね…」