12月6日 姉の日
高橋 バイトの先輩。記念日に詳しい。姉はいない。いたら下の名前で呼び捨てで呼ばれたい。
田中 バイトの後輩。「〜っす」が口癖。姉がいる。下の名前をちゃん付けで呼ばれる。
ここはとある郊外のコンビニ。
「高橋さんって長男でしたよね?」
「ああ」
「年上の兄弟が欲しかったとか思うことないっすか?」
「兄か姉が、ってこと?うーん、あんまり考えたことないが…どうして?」
「ぼくは末っ子なんで弟か妹が欲しいんすよね。高橋さんはどうかなーって思って」
「そういやこの前そんな話してたな。どうだろう?いると楽しいものなのかな?」※9月6日参照
「実際悪くないものだと思いますけどね」
「そうか、田中くんはお兄さんもお姉さんもいるんだったな」
「なんだかんだ頼りになりますよ。兄はムカつきますけど。兄はムカつきますけどね」
「2回も言わなくても…でも年上の兄弟がいたら今の俺ではなかったと思う」
「どういうことっすか?」
「自分が一番上で、弟、妹が双子で急にできたって状況が今までの人生の中心だからな。上に頼れる人がいればまた違っただろうし」
「…」
「上の兄弟がいればぼっちじゃなく陽キャだったかもな!」
「それはないっすね」
「即答かよ…」
「でもぼくは…今の高橋さんがす、す…素敵だと思いますよ…」
「おっ、そう言ってもらえると嬉しいねぇ」
「まあぼっちは卒業した方がいいと思いますけど」
「それは善処するわ…そういや今日は姉の日って記念日だな」
「姉の日?この前は妹の日でしたよね?」
「そうそう。実は同じ人が制定した日なんだよ」
「えーと、兄弟姉妹型か何かの研究をしてた人でしたっけ?」
「ああ、漫画家の畑田国男さんだ。日付は妹の日のちょうど3ヶ月後ってことと、この日が聖ニコラウスの祝日ってことに由来してる」
「聖ニコラウス?」
「サンタクロースの起源になったともいわれる聖人なんだけど、貧しい家の三姉妹を陰ながら救ったっていうエピソードがあってな」
「ふむふむ。でも姉の日っすか…久々にうちの姉に会いたくなってきたっす」
「今は関西に住んでるんだっけ?」
「そうっすね。お淑やかで大和撫子って感じの人なんすよ!優しくて自慢の姉っす!」
「ほう。田中くんの家族はみんながみんな体育会系ってわけじゃないのか」
「姉はインドアな趣味が多いっすねー あ、でも高校の頃は薙刀をやってましたよ」
「薙刀⁉︎ちょっと珍しいな」
「強くて有名だったんすよ。巴御前とか言われてましたね」
「なるほどな」
「でも圧倒的な強さだったんで、うちの兄は『ありゃむしろ弁慶だろ』って言ってましたね。それを姉に聞かれてボコボコにされてましたけど…」
「…さっきお淑やかって言ってなかったか…?」
「基本お淑やかっすよ。…怒らせると1番怖いってだけで…ま、まあいいじゃないっすか!あ、そういやこの前の妹の日には店長のおすすめコーナーに妹キャラのグッズがありましたよね?今回はそんなのないんすか?」
「あー、そういやなんか姉キャラのグッズ準備するって言ってたな。今日まだ見てないわ」
「見に行きましょう!まあどうせサザエさんのソフビ人形とかでしょうけど…ってなんすかこの神々しい木彫りの人形は…?」
「えーと…天照大神って書いてあるな…たしかに日本最古の姉キャラかもしれんが…」
「というよりこの人形、若干光ってません…?」
「どういう原理なんだ…これ国宝クラスの代物だろ…」