6月27日 ちらし寿司の日
高橋 バイトの先輩。記念日に詳しい。好きな寿司ネタは穴子。
田中 バイトの後輩。「〜っす」が口癖。好きな寿司ネタは中トロ。
ここはとある郊外のコンビニ。
「高橋さん…こ、これを見てください」
「どうした?おっ、握り寿司の廃棄が出たのか。珍しいな」
「そうなんすよ。ぼく、初めて見ました」
「コンビニで寿司買う人いるのか?って思ってたけど、かなり売れるんだよな、これ」
「…」
「どうかした?急に黙って…食べるなら休憩時間にな。先に休憩入っていいから」
「…えっ?」
「だから食べるなら休憩時間にって」
「いえ、そこじゃなくて。…これ、ぼくがもらっていいんすか?」
「ん?ああ、別にいいよ。俺は他の食べるし」
「マジっすか‼︎お寿司ですよ!絶対取り合いになるから、ジャンケンか闇のゲームをしないといけないって考えてたっす!」
「なんだ、その2択…」
「マジでうれしいっす!ありがとうございます!いやー、やっぱ高橋さんっすね。高橋しか勝たんってやつっすよ!よっ、副大統領!」
「なんで副なんだよ。ほら、廃棄を裏に持っていってくれ。あと寿司は傷まないように冷蔵庫に入れておいたらどう?」
「ガッテンっす!」
「しかし、ほんとに寿司好きなんだね」
「大好きっすよ!三度の飯よりお寿司が好きっす!」
「寿司も飯の一種だろ…ちなみに今日はちらし寿司の日だぞ」
「ちらし寿司の日っすか?語呂合わせ…ではないっすよね。どこかの店の創業日とかっすか?」
「いや江戸時代の備前岡山藩主、池田光政の命日だそうだ」
「んん?ちらし寿司と何の関係が?」
「岡山にばら寿司っていうちらし寿司みたいな郷土料理があるんだけど、それができるきっかけになった人と言われてるんだよ」
「料理人だったってことっすか?」
「いや、この人が領民に倹約のため一汁一菜令ってのを出したといわれてる。それなら一菜を豪華にしよう、ってことでできたのがいろんな具材を酢飯に混ぜ込んでできたばら寿司ってわけだ」
「なるほど、逆転の発想っすね。必要は発明の母ってやつっすか」
「高知のカツオのたたきもその類だな。生で食べるなっていわれて炙って食べるようになったらしい」
「へー。でも池田さんも贅沢させないように命令出したのに、そんな豪華なもの作られて悔しがってるんじゃないっすかね?」
「そんなことないんじゃないかな。領民を大事にした明君として語られることが多い人だし。最近は一汁一菜令なんて出してなかったとかいわれることもあるしな」
「…えっ?じゃあ今までの話はなんだったんすか…」
「まあ、ちらし寿司の日が制定された経緯なのは間違いないから…歴史によくある『諸説あります』ってやつだな」
「はあ…ま、いいっす。そんなことよりそろそろ休憩時間っすね!」
「ちょっと早いけどいいんじゃない。お先どうぞ。さて、俺は何を食べようかな」
「あざーっす!他のお弁当もいくつか廃棄出てたっすよ」
「あっ、そういや店長からおすすめコーナーの廃棄もらったんだった。それ食べてみるか」
「ふーん、何もらったんすか?」
「パンの缶詰」
「そんなのあのコーナー置いてありましたっけ?」
「いや、記憶にないが…これ5年保存できるって書いてあるけどいつからあったんだ?」
「それっすか?マジで見たことないっすね…」
「…賞味期限、1年前だ…」
「…」
「ま、いけるだろ」
「絶対やめたほうがいいっす」