11月29日 いい肉の日
高橋 バイトの先輩。記念日に詳しい。肉は好き。でも最近胃もたれするようになってきた。
田中 バイトの後輩。「〜っす」が口癖。肉は超好き。無限に食べられる気がする。
ここはとある郊外のコンビニ。
「高橋さん!今日は何を食べに行きますか?」
「あれ?…ごめん、何か約束してたっけ?」
「何言ってるんすか!今日がいい肉の日だってことは調べがついてるんすよ!」
「ああ、日付変わって29日か」
「店長のおすすめコーナーにもいい肉の日ってことでいっぱいお肉が並んでますし!」
「そういやそうだったな。…なんで全部マトンなのかはわからんが…」
「記念日ジャンキーの高橋さんならきっとお肉を食べに行くだろうと思いまして!どうせぼっちで行くんでしょ?どうしてもっていうならついて行ってあげてもいいっすよ!高橋さんの奢りで!」
「めっちゃ失礼なこと言われた気がするが、こんだけ振り切れてると怒りすら湧いてこないな…こういう絡みをして他の人は怒ったりしないの?」
「まさか!こんなこと高橋さんにしか言わないっすよ!高橋さんは特別っす!」
「…あんまり嬉しくない特別だな…まあいいけどさ。あと、すまん。今日は用事があるから飯は奢ってあげられないんだ」
「えっ⁉︎シフトは入ってなかったっすよね…まさか、男ができたんすか⁉︎」
「まだそういう趣味趣向はないかな…別のバイトだよ。前に働いてた焼肉屋の助っ人に呼ばれてるんだ」
「もう!バイトとぼくのどっちの方が大事なんすか⁉︎バイトに決まってますよ!頑張ってくださいね!」
「お、おう」
「高橋さんって他のバイトもしてたんすね。焼肉屋さんってどこのですか?」
「今は基本ここだけだけど2年くらい前まではいろいろやってたんだよ。大学の側の店なんだけどわかるかな?北門の近くなんだけど」
「あー、ありますね。いつも混み合ってるイメージっす。なんでわざわざ助っ人に?」
「毎年いい肉の日にフェアをやるんだけど、その時めちゃくちゃ客が来るんだよ。それを捌くためにな。去年も呼ばれたんだ」
「へー。フェアってどんなです?」
「特上カルビが1人1人前に限り、11円ってのだ」
「それはすごいっすね⁉︎ぼくも行こうかな…誰か来れそうな人いるかな?」
「予約なしで並び順だから、かなり待つのは覚悟しておいた方がいいぞ。それでもよければお待ちしておりますので」
「わかりました!ちなみに何かおすすめのメニューってあります?」
「そうだな…タンはかなり美味いな。あと意外と豚と鷄のメニューが豊富で美味しいぞ」
「あれ?いい肉の日って牛以外でもいいんすか?」
「日本記念日協会に認定されてるのはより良き宮崎牛づくり対策協議会が制定したものだから、それでいうと牛肉、むしろ宮崎牛だけの日だな。でも日本全国いろんなとこでいい肉の日のイベントが行われてるし、牛以外も対象になってるとこが多いよ」
「なるほど、それなら牛以外もモリモリ食べないといけないっすね!」
「食べなきゃいけないことはないが…あー、それなら裏メニューのいい肉の日カレーってのを食べるといいかもな」
「裏メニューっすか!心惹かれますね!いっぱいお肉が入ってるんすか?」
「ああ、全部で20種類くらいな」
「に、20種類⁉︎」
「牛、豚、鷄、羊、鹿、熊、馬、猪、ワニ、ダチョウまでは聞いたんだがな…それ以外は教えてくれなかったよ」
「他に何かありましたっけ…?」
「パッとは思いつかないな…ちなみに材料はうちの店長から仕入れるらしい」
「ますます得体が知れなくなりましたね…」