11月22日 長野県りんごの日
高橋 バイトの先輩。記念日に詳しい。りんごといえばりんご飴。
田中 バイトの後輩。「〜っす」が口癖。りんごといえばコンポート。
ここはとある郊外のコンビニ。
「…」
「休憩時間だけど田中くん先に入るか…って、どうした?難しい顔して。悩み事?」
「あ、いえ、そんな大したことじゃないんすけどね。小腹がすいてるのは間違いないんすけど、何が食べたいのかわからない空腹迷子状態でして…」
「あー、たまにあるな」
「ぼくの腹は何腹なんだ…?って状態なんすよ…あっ、休憩時間でしたね。ぼく、もう少し悩むんで高橋さんお先にどうぞ!」
「そうか。じゃあお言葉に甘えて」
「あ、ちなみに高橋さんは何か食べるんすか?」
「店長のおすすめコーナーでだし巻き卵の缶詰を買ったから食べてみようかと思ってる」
「そんなものがあるんすか…でもだし巻きっすか…うーん、なんとなくそんな気分じゃないっすねー」
「君がひと口ちょうだいって言ってこないところを見るとほんとに迷子状態なんだな…」
「失敬な!でも自分のことながら割とマジで重症だと思います…」
「せめてどんなジャンルがいいかだけでも決まればな…甘いものなのかそうじゃないのかとか」
「そこすら迷うぐらいなんすよ…ちなみに高橋さんは今食べたいものってなんすか?」
「そうだな…アップルパイとか」
「アップルパイ…アップルパイ!いいっすね、それ!ぼくの胃袋はアップルパイを求めてたんすね!でもこの時間にアップルパイなんて売ってないっすよね…」
「いや、ここのオリジナル商品で冷凍のパイがあったはずだぞ。オーブンで作った方が美味しいけど、電子レンジでも作れるはず」
「マジっすか⁉︎ちょっと見てきます!…あっ、ほんとだ!…でもなんでアップルパイとニシンのパイの2択なんすかね…?」
「たしか魔女の宅急便を見たのをきっかけに作った商品だったんじゃなかったかな」
「それでニシンなんすね…でもこの時間にアップルパイが食べられるのは助かります!」
「それはよかった。何を食べるか決まったんなら、先に休憩入ったら?」
「いいんすか⁉︎じゃあそうします!早速レンジに入れてきます!…でもほんとにありがとうございます!高橋さんの助言のおかげで助かりました!ナイスアップルパイっす!」
「今後の人生で聞くことがないであろう言葉だな…まあ、今日が長野県りんごの日だったからな」
「長野県りんごの日?そんなローカルな名前の記念日があるんすか?」
「ああ。全国農業協同組合連合会長野県本部が制定した記念日で全国生産量2位の長野のりんごのおいしさをアピールするための日だ。日付は長野県の主要なりんごの品種であるふじから『いいふじ』の語呂合わせで11月22日になったってのが理由の一つだな」
「一つ?ってことは別の理由もあるんすか?」
「11月22日はいい夫婦の日でもあるんだが、夫婦からの連想でアダムとイブ、そして2人が食べた知恵の実といわれるりんごってことも理由らしい」
「うーん…ちょっと無理矢理な気が…でもそのおかげで今アップルパイという答えに辿り着いたわけっすからね。全ての物事は繋がってるってことっすね。森羅万象に感謝っす」
「ど、どうした?急に悟りを開いたようなことを言い出して…」
「まあぼくらはみんな知恵の実を食べたアダムたちの子孫っすからね。このくらいのインテリジェンスは発揮して然るべきってことっすよ」
「お、おう」
ピー ピー
「あ、パイが温まったみたいっすね。さらにりんごを摂取して賢くなってしまうってわけっすか。いやー、困っちゃいますね!」
「…まあいいや。ごゆっくり」
「ありがとうございます!…あ、高橋さん、今温めたのニシンのパイの方でした…」
「注意深さは足りなかったみたいだな…」
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