11月18日 雪見だいふくの日
高橋 バイトの先輩。記念日に詳しい。雪見だいふくは必ず向かって右から食べる。
田中 バイトの後輩。「〜っす」が口癖。別にどっちでもいいでしょ…
ここはとある郊外のマンションの一室。
ガチャ
「ただいま」
「おかえりなさい!待ちかねましたよ!」
「またコタツに潜り込んで…はい、アイス。バニラでよかったんだよな?」
「ありがとうございます!すみません、買い出し行ってもらっちゃって」
「まあそういうルールでやったしな。つーかほんとに将棋強いな!気がついたら負けてたわ」
「ふふふ、そうでしょう!でもぼくの実力はこんなものではないっすよ!今後も目が離せないっすね!」
「自分で言うのか…でも『なんでも言うことを聞く』ってルールでアイス買ってくるだけでよかったのか?」
「もちろんっすよ!『地球温暖化を解決する』ってのと迷ったんすけどね」
「そっちじゃなくてよかったよ…飲み物を準備しようかね」
「温かいココアがいいっす!あ、『いやいや悪いっすよ〜』って先に言ったことにしてもらっていいっすか?」
「追加で言うくらいなら遠慮しなくていいわ。ココアはなかったな…そうだ、店長のおすすめコーナーで買った自家製チャイがあるけどどうだ?」
「チャイって自分で作れるんすね…ぜひお願いします!」
「はいよ」
「ほい、おまたせ」
「ありがとうございます!あー、美味しいっすね!」
「そうだな」
「そしてコタツに入りながら食べるアイスがまた美味しいんすよ!」
「わかる。でも逆もよくないか?夏にクーラーの効いた部屋であったかいもの食べるのも好きだな」
「あー、めっちゃわかります!なんていうか贅沢っすよね!」
「そうそう。よし、俺もアイス食べるか」
「高橋さんはなんのアイスを買ったんすか?」
「雪見だいふくを買ってきたぞ」
「雪見だいふく…だと…」
「ど、どうした、そんな愕然とした顔をして…?」
「そ、その手がありましたね…まさかそれに思い至らないとは…なんてことだ…」
「ショック受けすぎだろ…」
「だって絶対それが正解っすよ!バニラアイスも美味しいっすけども…30分前の自分をぶん殴りたいっすね…大馬鹿野郎っすよ…」
「そこまでいわなくても…なんなら一個食べるか?」
「…えっ?い、今なんて言いました?」
「いや、だから一個食べるかって」
「そんな…雪見だいふくっすよ⁉︎それを一個他の人にあげるなんて聖人君子が実在するなんて…」
「大袈裟だろ…そんな大層なことじゃないさ」
「いやいや、自分の半身を渡すようなもんすよ!ほ、ほんとにいいんすか?あとで言われても返せないっすよ⁉︎」
「別にいいよ…まあ雪見だいふく選んだのも今日が雪見だいふくの日だからだし」
「じゃあお言葉に甘えて一個いただきます!もぐもぐ…あー、やっぱ最高っすね!それで雪見だいふくの日でしたっけ?」
「ああ。販売してる株式会社ロッテが商品のPRのために制定した日だ。日付は11月なのは『いい』の語呂合わせ、18日なのは18が付属のフォークと雪見だいふく2個に見えるからってことらしい」
「なるほど!言われてみればそう見えますね!でも冬に食べたくなるアイスって珍しいっすよねー」(もぐもぐ)
「というより夏に向かない商品だから冬向けに売り出したって方が正しいかもな」
「と言いますと?」(パクッ)
「低温にしてもカチカチにならないように加工してるらしいんだけど、逆に気温が高いとドロドロになっちゃうらしい」
「はー、なるほど。それで冬場に売り出すってわけですね。それは納得っす」(もぐもぐ)
「…とか話してるうちに全部食べてるじゃねーか…」
「えっ?…あっ!す、すみません、無意識のうちに…ほ、ほら!やめられない、とまらないってCMでもいってるじゃないっすか!」
「それはかっぱえびせんだろ…まあいいけどさ」
「ははは…すみません…」