11月12日 洋服記念日
高橋 バイトの先輩。記念日に詳しい。店員からおすすめされた服だけを買うようにしている。
田中 バイトの後輩。「〜っす」が口癖。スポーツウェアを私服にしてることが多い。
ここはとある郊外のコンビニ。
「夜はやっぱり冷えますねー」
「ああ。日中は暖かかったりするから服装に悩むよな」
「それっす。アウターを羽織ったりして調整してますけど…バイトのときはもう少し着込んだ方が良さそうっすね」
「そうだな。風邪ひかないように気をつけないと」
「大丈夫っす!うがい、手洗い、感謝の正拳突きを欠かさずやってますから!」
「最後のは別に要らないだろ…」
「高橋さんは割と着込んでますよね。暑くないんすか?」
「寒いの苦手なんだよ。このくらいでちょうどいいくらいだ」
「たしかに冬場はすごいモコモコした格好をしてたような…」
「そうだな。ヒートテックの肌着に店長のおすすめコーナーで買ったセーター、その上からウルトラライトダウンと店長からもらったコートを着ることが多いかな」
「ユニクロと店長が交互になってる…そういえば手編みっぽいマフラーもつけてませんでした?だ、誰からもらったんすか?」
「店長からだ。もちろん店長の手編み」
「えぇ…もしかして店長と付き合ってるんすか?」
「そんなわけあるか!一時期お金に困ってたことがあって、そのときに店長がいろいろくれてな。丈夫で重宝してるよ」
「へー。愛しの店長からもらったもの以外はユニクロが多いんすか?」
「愛しのってなんだよ…まあそうだな。そろそろ冬物を追加で買いに行こうかな。今日はちょうど洋服記念日だし」
「洋服記念日っすか?」
「ああ。全日本洋服協同組合連合会が1972年に制定した記念日だ。明治5年11月12日付で『爾今礼服には洋服を採用す』っていう太政官布告が出されたことに由来してる」
「太政官布告?」
「明治初期の法令みたいなものだ。国から洋服を使うように、ってお達しが出たってことだな」
「はー、なるほど。洋服記念日ってことは、例の如く別に洋服の日があったりするんすか?」
「2月9日が服の日、11月29日がいい服の日って記念日だけど、洋服の日ってのはなかったと思う」
「そういうパターンもあるんすね…理解しました。これでまた一歩記念日マスターに近づきましたよ」
「なにそれ…そんなの目指してたの?」
「いえ、別に」
「じゃあなんで言ったんだよ…」
「それはさておきですね、今日ユニクロ行くんすか?何時ごろの予定です?」
「んー、研究室行ってからだから18時19時くらいかな。それがどうかした?」
「そこまで言うならしょうがないっす!ぼくもついていってあげましょう!」
「いや、何も言ってないが…」
「夕飯奢りで手を打ちますよ!しょうがないっすね〜!」
「…まあいいや。店の前集合で。時間はまたメールするわ。何が食べたいか考えておいてくれ」
「了解っす!」
「あ、ちゃんとあったかい格好をしてきてくれよ。また冷え込むみたいだから」
「まかせてくださいよ!心は錦っす!」
「ほんとに大丈夫かな…」