11月9日 119番の日
高橋 バイトの先輩。記念日に詳しい。救急車の方が好き。お世話になってるから。
田中 バイトの後輩。「〜っす」が口癖。消防車の方が好き。カッコいいから。
ここはとある郊外のコンビニ。
「最近消防車がよく通りますね」
「そうだな。空気が乾燥してきたし、火事が増えてるのかもな」
「高橋さんも寝タバコとか絶対ダメっすよ!」
「大丈夫、家で吸わないから。そういや店長のおすすめコーナーに火の用心の夜回りセットが置いてあったな」
「夜回りセット?ああ、このカチカチ鳴らすやつと提灯のセットっすか」
「そうそう。毎年恒例なんだよ。鳴らすやつは拍子木っていうんだけど、店長の手作りらしい」
「へー。でも毎年恒例ってそんなに買う人いるんすか?」
「なんでも微妙に拍子木の出来が違うらしくて、コアなファンは毎年買うらしい。ちなみに今年のは『過去最高といわれた2013年に匹敵する出来』だそうだ」
「ボジョレーヌーボーじゃないんすから…でも火の元には注意しないといけないっすね。火事なんか起こしたらシャレにならないっす」
「そうだな。万が一に備えて消火器を準備しとくのもいいかもね」
「なるほど。あとはすぐに消防車を呼ぶとかっすかね。高橋さん、今まで消防車呼んだことあります?」
「いや、ないな。救急車は何回かあるけど」
「どっちも119番でしたっけ?これってたとえば消防車を呼びたいってときはどうすればいいんすか?消防につながるまでリセマラするんすか?」
「そんなわけないだろ…かけたら最初に『消防ですか?救急ですか?』って聞かれるんだよ。あとはあっちの質問通りに答えて状況を伝えれば大丈夫」
「なるほど〜 詳しいっすね、高橋さん」
「まあ今年すでに2回かけたからな…滝川くんの時とトラックの事故の時と…ちなみに今日は119番の日だぞ」※8月15日、10月9日参照
「119番の日…これは語呂合わせとしてもわかりやすいっすね!でも1月19日でもいいじゃないっすか?」
「まあ多分火事が増え始めるこの時期の方が啓蒙活動するのにちょうどいいんだろ。今日から1週間は秋の全国火災予防運動が行われるんだ」
「確かに1月も火事は多いっすけど、予防って意味では今からがいいっすね」
「ちなみに1月19日は家庭消火器点検の日になってる。これは119番の日より後にできた記念日だけどな」
「へー。でも119番って実際かけるとなるとめっちゃ緊張しそうっすね…」
「かといって練習するわけにもいかないしな。この前俺がトラックに轢かれておけば田中くんが119番通報するチャンスだったかもな、ははは」
「…冗談でもそんなこと言わないでください。怒りますよ」
「す、すまん…」
「…高橋さんが初めて119番したときってどんな状況だったんすか?」
「えっと…大学1年の頃だったかな。横断歩道渡ってたら右折の車がノーブレーキで突っ込んできてな、俺ともう1人が跳ね飛ばされたんだよ」
「えっ?」
「その車は逃走していったんだけど、もう1人の跳ねられた人がうずくまって動けなくなっててさ。すぐに119番したな。テンパってて何言ったか覚えてないけど」
「というより高橋さんは大丈夫だったんすか⁉︎」
「それが面白くてさ。夜だったから周りに人も居なくて、なんとか怪我人を路肩まで移動させて看病してたんだよ。それで救急車が来て隊員の人から言われたんだけど、俺、頭から流血して顔面血まみれだったんだよ。手足も骨折してたし、なんだかんだ俺の方が重症だったってオチでさ」
「いや、全然笑えないっすよ…頭打っておかしくなったんじゃないっすか…?」
「失礼な!その事故の前からこんな感じだぞ」
「なお悪いっす!」