11月5日 縁結びの日
高橋 バイトの先輩。記念日に詳しい。縁結びは行ったことがない。正直諦めてる。
田中 バイトの後輩。「〜っす」が口癖。縁結びはよく行く。パワースポット巡りも好き。
田所 バイト仲間。親戚が亡くなったことにしてバイトをサボる常習犯。縁結びは昔はときどき行ってた。彼女ができてからは行ってない。
ここはとある郊外のコンビニ。
「旅行楽しみっすね!」※10月28日参照
「そうだな!」
「さすがに明日、もう日付変わって今日っすけど、バイトは入ってないっすよね?」
「さすがにな。遠出でしかも運転するし。田所さんに代わってくれって言われたけど断ったよ。すごいびっくりした顔してたな」
「あの人はまったく…ちなみに今まで断ったことってあったんすか?」
「ここ5年くらいで2回あったんじゃなかったかな。のっぴきならない事情で断った気がする。頼まれたのはその30倍以上あるけど」
「…へへへ、ぼくとの旅行はのっぴきならない事情ってわけっすね!」
「まあな。正直めっちゃ楽しみにしてるぞ。今年一かもしれん」
「そ、そうすか/// と、当日はどこ集合にします?高橋さんの家に行けばいいっすか?」
「いや、わざわざ来てもらうのもアレだし、迎えにいくぞ?」
「それは悪いっすよ。あっ、じゃあここに集合にしません?飲み物とか買いたいですし」
「それいいな。じゃあ7時にここで」
「了解っす!寝坊しないでくださいよ!あ、ちょうど店長のおすすめコーナーで目覚まし時計フェアやってますし、1個買っていったらどうですか?」
「いやうちにももうあるし…でもいろんな種類があるんだなぁ」
「これとかどうです?ベルの音がモスキート音になってるらしいっすよ!」
「あー、最近その音聞こえにくくなってるからだめだな…」
「加齢っすね…いつのまにか記念日大好き中年おじさんになってたんすね…」
「おじさん部分を強調するのやめろ。まあ事実だけどさ…」
「それならこっちはどうですか?時間になると自分の吹き込んだ声が流れるタイプっす」
「へー。でもそれって起きられるのか?」
「たとえば他人に知られたくない秘密を吹き込んでおくと効果抜群だと思いますよ!」
「なるほど。止めるには起きなきゃならんってことか」
「ぼくが高橋さんについてないことないこと吹き込んでおきましょうか?」
「100%デマじゃねーか!やめてくれ、普通に起きるから…それよりあっちについてからの予定はこの前ざっくりたてたけど、他に行きたいとこ何かあった?」
「あっ、そうでした!西の河原公園の奥に草津穴守稲荷神社って神社があるらしいんすよ。そこに行ってみたくて」
「へー。全然大丈夫だと思うぞ。有名なとこなの?」
「縁結びで有名らしいんすよ!恋の伝道師のぼくとしては外せないっす!」
「出た、その二つ名…なんかルビ振ってあるし…でも神社か…」※6月15日参照
「何かまずいっすかね?」
「いや、11月だから旧暦だと神無月なんだよな…」
「あっ…じゃあ神様がいないかもしれないってことっすか?たしか…出雲大社に行ってるんでしたっけ?」
「そうそう。逆に島根県は神有月なんだよな。それに関して島根県の神話の国・縁結び観光協会は11月5日を縁結びの日に制定してる」
「縁結びの日っすか」
「ああ。11月なのは旧暦で神様が集まる月だからで、日付は『115縁』の語呂合わせだな」
「へー…ってことは出雲大社に行ったほうが効果ありますかね…明日の行き先変更しませんか?」
「ここにきてか⁉︎まあできなくはないが…その距離だと移動は新幹線か飛行機がいいよな…今からとれるかな…?」
「あ、冗談っすよ、冗談!神様が留守なら伝言を残しておけばいいだけの話っす。きっとご利益あるでしょ!それより高橋さんこそ縁結びが必要なんじゃないんすか?」
「あー…まあ神様にもできないこともあるだろうしな…」
「諦め過ぎでしょ…」
「それより悪縁を切りたいな…今日の明け方に田中くんと同じゼミの人が客で来たぞ…」
「えっ⁉︎ど、どんな人っすか⁉︎」
「丁寧に自己紹介されたな。たしかてらしま、っていってたと思う」
「千佳ちゃんだ…な、何か話したんすか?」
「君と旅行行くことについて軽く話した後に、『ちなみにほんとにそういう関係なんですか?』って聞かれたんだよ」
「…なんて答えたんです?」(ゴクリ)
「ちゃんと口裏合わせておいたぞ。『唯一の友人である後輩に泣きついて旅行についてきてもらう人』って思われてるはずだから『俺にはあの子しかいないんで』って答えておいたよ」
「…///」
「縁がないと思ってたからその設定でいいだろって思ったけど、まさかこんなとこで会うとはな…ちょっと恥ずかしい…って君は恥ずかしがり過ぎだろ…顔真っ赤だぞ…」
「すみません、不意打ちだったもので…///」
舞台裏を番外編に投稿しました。