11月2日 習字の日
高橋 バイトの先輩。記念日に詳しい。習字は普通。毎年書き初めはする。
田中 バイトの後輩。「〜っす」が口癖。習字は得意。ギャップ萌えとよくいわれる。失礼な!
田所 バイト仲間。親戚が亡くなったことにしてバイトをサボる常習犯。習字は苦手。だいたい半紙が破れる。
チョコ コンビニの常連の黒猫。とても賢い。習字は得意。割とマジで上手い。
ここはとある郊外のコンビニ。
「そういえば最近チョコさんは来てるんすか?」※9月29日参照
「ああ。ちょくちょく来てるよ。そうか、この前来たのは7時前ぐらいだったから、田中くんは帰った後だったか」
「そうなんすね。来る時間って大体決まってるんでしたっけ?」
「あんまりかっちりとは決まってないけど、店長と雑談したいときは7時前ぐらいに来るみたいだな。毎日夜勤との引き継ぎとおすすめコーナーの入れ替えのために店長がいるからさ」
「雑談、っすか?」
「ああ。この前も30分ぐらい話して帰ったぞ」
「…チョコさんって猫ですよね…どうやって話してるかも謎ですし、会話の内容も謎なんすけど…」
「店長クラスになるとマジで普通に会話してるからな。この前は温室効果ガスの削減方法について話してたぞ」
「えぇ…ぼくらより真面目な話してるじゃないっすか…」
「ははは、違いない。そうだ、チョコさんがいつ来たかは帳簿を見ればわかるぞ」
「たしかに。ちょっと見ますね。…意外とぼくが思ってるより来店されてるんすねぇ。…話変わりますけど、高橋さんの字って独特っすよね」
「よくいわれるわ。子どもの頃にもっと練習しておけばよかったよ」
「あ、いえ、いい意味でっすよ。なんか味があるというか。悪い意味で独特なのは田所さんっすよ。マジで読めないっす」
「あー、あの人の字もクセがあるからな。この前どうしても読めなくて本人に聞いたら、自分ですらわからんっていわれたぞ」
「それじゃ書く意味ないじゃないっすか…店長の字はめっちゃ上手いっすよね〜」
「そうだな。…店長のおすすめコーナーでユーキャンのボールペン字講座が申し込めるんだけどさ、店長が直筆でおすすめする文章を書いてるだろ?」
「あーありますね。あれは宣伝効果抜群でしょ」
「…店長は別にボールペン字講座受けてないからな」
「ウソでしょ⁉︎詐欺じゃないっすか…あんなに上手くなるなら受けてみようかと思ったのに…」
「でも田中くんは字、上手じゃん。羨ましいよ」
「そ、そうっすかね。ふふん!まあそれほどでもありますかね!小学生の頃に習字習ってたおかげかもしれないっす!」
「なるほどなぁ。でもタイムリーな話題だな。今日は習字の日っていう記念日だぞ」
「習字の日っすか…11月2日…フッ、わかりましたよ!『11 2』で『いい字』の語呂合わせでしょ!」
「惜しい、『11 02』で『いい文字』の語呂合わせだ」
「なん…だと…そんなの卑怯っすよ!『0』を『も』なんて読まないでしょ!どこっすか、この記念日を作ったのは⁉︎」
「そんなに怒らなくても… 公益財団法人日本習字教育財団ってとこだけど」
「よし、ちょっと殴り込みに行ってきます」
「やめてあげて…でも語呂合わせで0はかなり無理な読まれ方することがちょくちょくあるよな。多分O扱いで『お』の段の言葉を全部カバーするように使われるんだろうけど」
「そういわれるとそうっすね…仕方がない、ぼくの字の上手さに免じて許してあげますよ!」
「なんだその理由…まあいいけどさ」
「あっ、でも店長は習字もうまそうじゃないっすか?あの人のことっすからひょっとしてプロ級とか」
「前に聞いたらなんか筆で字を書くのは禁止されてるって言ってたぞ」
「禁止?どういうことっすか?」
「えーと、『言霊が強すぎて大変なことになるからな』って言ってたような…なんか聞いちゃいけない内容な気がしたから、そこから先は聞かなかったけど…」
「…店長ってもしかして能力者バトルもののマンガから飛び出してきた人なんすかね…?」
「…その方が納得できるかもな…」