10月31日 天才の日
高橋 バイトの先輩。記念日に詳しい。天才といわれたことはないが、なんでも平均ぐらいにはこなせる。
田中 バイトの後輩。「〜っす」が口癖。「ある意味天才」とよくいわれる。
太一 高橋家に住み着く子どもの幽霊。生まれついての幽霊。IQがすこぶる高い。
ここはとある郊外のコンビニ。
「今日はハロウィンっすね」
「そうだな」
「そんなわけで高橋さん、トリックオアトリートっす!」
「それ仮装していうやつだろ。いつも通りのバイトの格好じゃねーか」
「ふふふ、甘いっすね、高橋さん!これはぼくのドッペルゲンガーの仮装なんすよ!いつもと同じ姿に見えて当然なんです!」
「おー、理屈は通ってるな…詭弁だけどそういう考え方もあるのか」
「どうっすか、この悪魔的発想!ハロウィンだけに!」
「うん、まあ言いくるめられたし、俺の負けだな。えーとお菓子か…ちなみにイタズラの方を選ぶと何をされるんだ?」
「そうっすねー 48の殺人技のどれかをお見舞いすることになるっすね」
「イタズラってレベルじゃねぇ…まだ死にたくはないからこれをあげよう。店長のおすすめコーナーで買ったアイシングクッキーだ」
「ありがとうございます!…これ何の絵なんすか?」
「オランウータンって言ってたぞ。ハロウィンだからって」
「ハロウィンとオランウータンに何の関係が…?」
「たしかにそうだな…あっ、ジャックオーランタンとかけてるのかな?」
「オーランタンとオランウータンをかけたギャグっすか…まあ普段なら滅殺するところっすけど、今日はお菓子もらった立場なんで自重しますよ。命拾いしましたね」
「だから君はギャグに対して殺意高すぎだろ…なんで俺はハロウィンで2回も死線をくぐらにゃいかんのだ…」
「まあ本物のハロウィンは恐ろしいものっすからね!」
「こういう人間的な怖さじゃないと思うんだが…でも、田中くんの理論なら俺も仮装してるってことになるな。じゃあ田中くん、トリックオアトリート?」
「高橋さん、セクハラっすよ」
「ハロウィンに参加しただけで⁉︎」
「だってバイトの後輩に『イタズラするぞ〜ぐへへ』って言ったのと同じっすよ。セクハラでパワハラっす。…そんなにぼくにイタズラしたいんすか?えっち」
「撤回するから勘弁してくれ…ハロウィンに関して攻撃力も防御力も高すぎるだろ、君」
「ふふふ、すごいでしょ!天才的でしょ!将来楽しみでしょ‼︎」
「クレヨンしんちゃんかよ…今日はそんな君にぴったりの記念日だぞ。ズバリ天才の日だ」
「おっ!それはぼくに相応しい日っすね!しょうがないっすね〜10月31日も田中の日にしてもいいっすよ!」
「いや、それは別に…ちなみに自分の才能に気づき、天才のひとりであることを再確認する日ってことで記念日登録されてる。日付は『10 31』の語呂合わせからだ」
「久々に語呂合わせがきましたね!覚えやすくていいっすね〜」
「…ギャグには厳しいのに、語呂合わせには寛容だよな」
「まあ覚えやすくしようっていう一般ピーポーの気持ちも理解できますからね!天才ですから‼︎」
「わかりやすく調子乗ってるな…まあそんなとこも田中くんらしくていいけどさ」
「そうでしょうとも!あっ、天才だから気がついたんすけど、高橋さん、なんでクッキーを買ってあったんすか?いつもあんまりこういうの買わないじゃないっすか?ちょっと天才に教えてみてくれません?」
「天才天才うるせえな…家で太一くんからもトリックオアトリートされるから、そのために買ってあったんだよ。忘れずもう一個買っとくか」
「太一くんにっすか⁉︎じゃあぼくも買うんで渡してもらっていいっすか?」
「ああ、ありがとう。きっと喜ぶよ」
「そうだと嬉しいっす。でも太一くんの仮装ってどんなのなんすかね?」
「去年は家のチャイムがなって、玄関開けても誰もいなくて、おかしいなって思いながらドア閉めて振り返ったらすぐ後ろに青白い顔をした男の子が立ってるってやつだったな。地縛霊の仮装って言ってた」
「それは仮装じゃなく本業では…?」