10月29日 ドリアの日
高橋 バイトの先輩。記念日に詳しい。好きなドリアはシーフードドリア。
田中 バイトの後輩。「〜っす」が口癖。好きなドリアはミラノ風ドリア。
ここはとある郊外のコンビニ。
「友達が風邪をひいてダウンしまして」
「ほう」
「他の友達たちとお見舞いに行ってきたんすよ」
「へー、優しいね」
「まあそれほどでもありますね!それで食べ物とか飲み物とか買っていこうって話になって、その友達に何が欲しいか聞いたんすけど…高橋さんだったら何を頼みます?」
「そうだな…そんな友達はいないから幻覚だと思うかな」
「…その答えは悲しすぎるんで、友達がいる仮定で答えてもらえないっすか…」
「そういうことなら…桃の缶詰かな」
「あっ、いいっすね〜 体調悪いときでも食べやすそうっすね!」
「なんか食べたくなるんだよな。その友達は何を頼んだんだ?」
「それがですね…チョコワだったんすよ」
「チョコワって…あの牛乳かけて食べるやつ?」
「それっす。なんでも体調悪いときに無性に食べたくなるらしくてですね。人それぞれなんだなー、って思いました」
「チョコワか…でも言われてみれば体調悪くても食べやすいかもしれん。田中くんは何が食べたくなる?」
「ぼくは母が作ってくれるクタクタに煮たうどんっすね!むしろあれを食べるために風邪ひいてるとこがあるくらいっす!」
「お母さん、悲しむぞ…体調悪いときの食べ物で思い出した。今日はドリアの日なんだけどさ」
「ドリア?ああ、あのフリーザの部下の?」
「それはドドリアだろ。ピラフにベシャメルソースをかけてオーブンで焼いた料理だよ。グラタンの下に米があるみたいな」
「冗談っすよ。わかります、わかります。でもなんでドリアの話を?」
「ドリアって日本生まれの料理でさ、作ったのはホテルニューグランドの初代料理長であるサリー・ワイルさんっていうスイス人のシェフなんだけど…作った経緯ってのが、来日してた欧州の銀行家から『体調が良くないので、なにかのどごしがいいものを』って要望されて即興で作ったらしいんだよ」
「…えっ?体調が悪いって言ったらドリアが出てきたんすか?」
「ああ。…お国柄が違うからそう思うのかもしれんが、体調悪いときドリアはキツくないか?」
「キツいっすね…もっと消化のいいものを食べたいっす」
「でも大評判で、ホテルの定番メニューになって、これだけ一般的な料理になるくらいだから、ヨーロッパ的には正解なんだろうな…」
「うーん、このグローバル化社会を生き抜くためには、風邪ひいた時こそカツ丼とか食べられるようにならないといけないのかもしれないっすね!」
「絶対に吐く自信があるわ…まあ体調悪いときは前も話した店長特製生姜湯が1番だけどな」
「ああ、あの得体の知れないやつっすか…」※10月23日参照
「ちなみに今日の店長のおすすめコーナーにはもっと直接的なものが売ってるぞ。その名も店長特製元気の出る薬だ」
「怪しさ全開っすね…赤字で『元気なときは絶対に飲まないこと!』って書かれてるのがなお怖いっす…」
「まあ中身は実はただのお菓子だけどな。ちょっと栄養ドリンクとかの成分が入ってるだけの」
「なんだ、そうなんすか。ジョークグッズみたいなものなんすね」
「ああ、今はな」
「…今はってことは前までは違ったんすか…?」
「…」
「黙らないでくださいよ…めっちゃ怖いじゃないっすか…」