10月23日 おいもほりの日
高橋 バイトの先輩。記念日に詳しい。いもほりは実はしたことがない。
田中 バイトの後輩。「〜っす」が口癖。小学生の頃に一度いもほりをした。神の手と評される上手さだった。
ここはとある郊外のコンビニ。
ウィーン ピンポーン
「ゴミ捨て行ってきましたー」
「お疲れさま。ありがとう」
「いえいえ。でもなんか急に冷え込んできましたね…」
「まあ今日は霜降だしな」
「そうこう?なんすかそれ?」
「二十四節気っていう古い暦のうちのひとつだよ。『霜が降りる』って書いて『霜降』って読むんだけど、文字通りこの辺りから秋が深まって霜が降りることが多くなるらしい」
「へー。季節の変わり目ってやつですね。風邪引かないように気をつけないと…」
「そういや去年はちょくちょく風邪ひいて休んでたね」
「そうなんすよ…毎年1回は寝込むぐらい酷いのを引くんすよね…こんなに鍛えてるというのに!もっと血反吐吐くまで鍛えないとダメか…」
「ストイック過ぎるせいで風邪引くんじゃないか…?俺は滅多に風邪引かないなぁ。怪我は多いけど」
「ああ、あれっすか。バカはなんとか引かないってやつっすかね」
「ぼやかすとこ、そこじゃないだろ…バカ丸出しじゃねーか。でも実際そうかもしれんな。風邪引いてることに気がつかないことがあるし」
「…んん?どういうことっすか?」
「3年ぐらい前だったかな。バイト中、なんかテンションも高めだし、体の動きも良くて調子がいい日があったんだけどさ。バイト終わりに店長から熱を測るように言われて、測ってみたら39℃だったことがあってな」
「…えっ?マジで気がつかなかったんすか?」
「うん。今までも熱に関しては周りから指摘されることが多かったな」
「…今は大丈夫なんすよね?」
「多分…普段よりテンション高そうに見えたら要注意みたいだ」
「いや、自分のことでしょ…自分で気がつきましょうよ…」
「まあどんなに熱が出ても、前に店長のおすすめコーナーで買った店長特製生姜湯を作って飲めば半日で熱が下がるし。3年前もすぐに治ったよ」
「…それほんとに生姜湯なんすかね…?なんか変な薬入ってませんか?」
「さあ…しかし何より風邪引かないことが重要だよな。しっかり栄養とって、寝るのが大事だろ」
「それは同意っす。まあ秋は美味しいものが多いっすからね。むしろ食べすぎないようにする方が大変っすよ」
「たしかにな。霜降に関連していえばさつまいもが美味しい時期だな」
「さつまいもはたしかに秋の味覚っすけど、霜降と関連してってのはどういう意味っすか?」
「さつまいもは霜が降り始めるまで太り続けるって言われてるから、理論上この時期が最も成長したいもがとれるんだよ」
「はー、なるほどー …こういう豆知識が高橋さんから出てくるってことはズバリ、記念日っすね!今日はさつまいもの日でしょ?」
「惜しいな、今日はおいもほりの日だ」
「くっ、外しましたか…でもずるいっすよ!おいもほりなんて当たるわけないじゃないっすか!」
「いや俺に言われても…えっと制定したのはさまざまな食品容器や包装資材の製造・販売を手がける東洋アルミエコープロダクツ株式会社ってとこだ。いもを包んで焼くだけで簡単にやきいもが作れるって商品もあるらしい。おいもほりの教育的な意義の再確認とさらなる普及が目的の記念日だ」
「ふーん。たしかに自然との触れ合いもできて、なおかつ食育にもなりますしね。教育的かも知れないっす」
「そうだな。芋掘り遠足もバカにできない行事なのかもな」
「よし!それじゃあぼくらも芋掘りに行きましょう!いつにしますかね、明日、明日にしましょうか。うん、決定っす!」
「決定が早すぎてついていけないんだが…あと明日はめっちゃ寒いらしいぞ。風邪引いたらいけないから他の日にしようよ」
「大丈夫っすよ!バカは風邪引かないなんとかっすから」
「もう何も隠せてねーじゃねぇか!」