10月20日 はっかない恋デー
高橋 バイトの先輩。記念日に詳しい。恋バナを聞くのは割と好き。
田中 バイトの後輩。「〜っす」が口癖。恋バナを聞くのは超好き。恋に飢えている。
ここはとある郊外のコンビニ。
「日中に友達数人とカフェでお茶してたんすけどね」
「うん」
「そのうちの1人の最近の恋愛の話になったんすよ」
「ほう」
「合コンで出会った人らしいんすけど、たまたま同じマンションの隣の部屋の人だったらしくて」
「へー!すごい偶然だな」
「実はそれだけじゃなくてですね…そのあと5人くらい登場人物が出てきて、いろんな恋愛模様が繰り広げられるんすけど、その全員が同じマンションの住人なんすよ…」
「なんだそれ…連続ドラマでも作れそうな内容だな」
「実際聞き応えがあって、3時間ぐらい話を聞いてたんすけど、最後までワクワクドキドキでしたね」
「すごい話だな…それで、田中くんの友達は誰かとくっついたの?」
「ええ。最初の合コンで知り合った人と付き合ってます。惚気話もだいぶ聞いたんで、お腹いっぱいっす」
「ふーん。まあハッピーエンドなら何よりだ」
「でもやっぱり恋バナはいいっすね!高橋さんも何か恋の話ないっすか?」
「恋の話ねぇ…今日は店長のおすすめコーナーに鯉のぼりが売ってるぞ」
「いやそっちの『こい』じゃないっすよ!つーかなんでこんな時期に鯉のぼりが…あれ、手作りって書いてるんすけど、まさか店長が作ったんすか?」
「いや、店長のお父さんって言ってたぞ」
「ほんとに芸術一家なんすね…」
「まったくだな。今置いてある分も買えるんだけど、今から受注して作るとちょうど来年のこどもの日に間に合うから、この時期に売るらしい」
「へー…いや、じゃなくてですね。ぼくは恋の話が聞きたいんすよ!」
「ちっ、ごまかされなかったか…うーん…今日は一応はっかない恋デーって記念日なんだけどさ」
「儚い恋デーっすか?ちょっと聞き捨てならない記念日っすね!」
「いや、はっかない恋デー」
「ん?『っ』がいるってことっすか?」
「ああ。北海道北見市の「まちづくりプランニング」ってとこが制定した日でな。北見市は昔はハッカの生産量が世界の70%を占めるくらいだったんだけど、今は天然のハッカは無くなっちゃったんだ。そんなわけで『ハッカ無い』と『儚い』をかけて、儚い恋に悩んでいる人の手助けをして、まちづくりに役立てるのが目的だそうだ」
「親父ギャグじゃないっすか…はっ倒しますよ」
「なんでだよ…その君が時折見せるギャグへの厳しさはなんなんだよ…?」
「恋と絡めてあるのも怒りポイントっすね。…そういえば北見市ってなんかハッカの日か何かのときにも出てきませんでしたっけ?」
「おっ、よく覚えてたな。ハッカじゃなくてペパーミントの日だけど。これも北見市の団体が制定した日だ」※6月20日参照
「ハッカに関する日とハッカがないことに関する日の両方があるんすね…」
「ああ。時代の流れだな」
「…まあこのモヤモヤは後でまとめて高橋さんにぶつけることにしましょう。ペガサス流星拳とかで」
「やめて、マジで死ぬから」
「そんなことより恋の話っす!高橋さんの恋バナを聞かないと、廬山昇龍波をぶち込みかねないっすよ!」
「命懸けの雑談になってきたな…うーん、ちょっと待って。思い出すから」
「そんな前の話になっちゃうんすか…ちなみに初恋はいつです?」
「それは覚えてるわ。たしか幼稚園のころだったと思う」
「おっ、おませさんっすね!お相手はどんな子っすか?」
「メロンパンナちゃんだったな」
「…叶わぬ恋ではあるのかもしれないっすけども…じゃ、じゃあ3次元の初恋は?」
「えーと…うーん…えっ?…マジで思い当たらない…俺もしかしてこの歳まで初恋もまだなのか…?」
「えぇ…」
「田中くん…恋ってなんなんだろう…?」
「いや、そういう哲学的な話をしたかったわけじゃないんすよ…」