10月19日 TOEICの日
高橋 バイトの先輩。記念日に詳しい。英語の成績は普通。
田中 バイトの後輩。「〜っす」が口癖。英語の成績は割といい。しかし、喋れない。
ここはとある郊外のコンビニ。
「英会話ができるようになりたいんすよ」
「英会話?海外に行く予定でもあるの?」
「いえ、予定はないですけど。でも、このグローバル化が進む現代を生き抜くには、日本語だけ出来てもダメだと思うんすよね」
「ふむ。なるほど」
「英語、中国語、ヒンドゥー語、ウルトラサインぐらいは出来ないと」
「最後のは要らないと思うけど…」
「でもまずは英語を身につけないと始まらないと思うんすよ!それこそ話せるようになりたいんす!」
「まあたしかに英語は大事だよな。でも読み書きは少しぐらいならできるけど、会話は正直全然できないわ…」
「えっ、でも高橋さん、ちょくちょく海外の方の接客してるじゃないっすか?」
「コンビニに来て店員に話しかけてくる人なんて、何か買いたいものがあるか道を聞きたいかどっちかだろ?そのくらいならふわっとした会話で対応できるさ」
「それもぼくにはハードル高いんすけど…」
「あとは慣れもあるんじゃないか?店長は接客中に使う英語なんて『Hi!』と『Thank you!』と『Get out!』の3つしかないって言ってたぞ」
「接客する気ないでしょ、それ…追い出してどうするんすか…」
「まあそうはいってもあの人、数ヶ国語マスターしてるからな。海外に自分で買い付けとか行ってるし」
「そうなんすか⁉︎マジでなんでも出来ますね、あの人…」
「ほら、今日の店長のおすすめコーナーにある木彫りの仮面も、店長が仕入れてきたものらしいぞ」
「どこの民族のものなんすかね…いったい何語が喋れたら買えるのかもわからないっす…」
「どこって言ってたかな…うーん、ド忘れした。とりあえず呪術に使いやすいって言ってたよ。あんまり深く追求しない方がいいと思ってそれ以上聞かなかったけど…」
「ぼくもそれがいいと思います…そんなことより英会話っすよ!どうやったらできるようになりますかね?」
「うーん…英会話スクールに通うとかかなぁ…というよりできてない俺に聞いてもあんまり意味なくないか?」
「ぼくよりはうまいじゃないっすか。ちなみに高橋さんはどうやって英語を勉強したんすか?」
「普通に学校の授業と…あとはちょっと前にTOEIC受けるのに勉強したな。参考書使って」
「TOEICっすか…なるほど…」
「田中くんは受けたことある?」
「実はまだないんすよね…受けた方がいいっすかね?」
「受けて損することはないと思うけどな。英語の勉強って面でも、就活の面でも。ちなみに今日はTOEICの日って記念日だ」
「またタイムリーな記念日っすね。10月19日…語呂合わせっすか?」
「ああ。日本でTOEIC Programの実施と運営をする一般財団法人国際ビジネスコミュニケーション協会が制定した日で、記念日を通して英語の楽しさや自分の英語能力の確認をして欲しいって願いが込められてるらしい」
「なるほど…なおのことタイムリーっすね!ちょっと本気で勉強して受けてみようかな…高橋さんは何点だったんすか?」
「俺は580点だったよ。ちょうど平均点ぐらいのパッとしない点数だった」
「じゃあぼくは581点を目指します!高橋さんにドヤ顔で自慢しまくりますんで!」
「TOEICは5点刻みだけどな…まあ頑張ってくれ。俺が使ったので良ければ参考書あげようか?」
「ほんとっすか!ぜひお願いします!よーし、頑張るぞー!」
「ちなみに英会話の方はどうするんだ?」
「あっ、そっちが本題でした…」
「経験を積むって意味なら、海外からの客が来たときに対応するってのが手っ取り早いかもな。君、いつもしれっと俺に押し付けてるだろ?」
「うっ、バレてましたか…だ、だって緊張するじゃないっすか!」
「まあ慣れだよ、慣れ。一回練習しとくか。ほら、仮に海外からの客が入ってきて、レジに並んだとしよう。どう対応するんだ?」
「え、えーと…あーっと…あ、Get out!」
「…相当練習が必要だな…」