6月22日 ボウリングの日
高橋 バイトの先輩。記念日に詳しい。使うボウリングの玉の重さは13ポンド。
田中 バイトの後輩。「〜っす」が口癖。使うボウリングの玉の重さは11ポンド。
ここはとある郊外のコンビニ。
「廃棄登録完了っと。裏持ってきますね」
「サンキュー」
「よいしょっと。あいたたた」
「どうした?どっか怪我してるのか?」
「あ、いえ、筋肉痛っす」
「持ってくの代わるよ。ほら」
「あ、すんません…」
「よっと。なんか運動したの?」
「実は今日友達とラウンドワン行ったんすよ」
「夜勤のバイトの日にラウンドワンか…体力あるねぇ」
「スポッチャを満喫して、バッティングして、最後ボウリングで締めてきたっす」
「フルコースだな。俺だったら最後のボウリングとか玉投げられなさそうだ」
「ふふふ、実はぼくボウリングには自信があるんすよ」
「へー、上手いんだ」
「友達からは『スペアの神』と呼ばれてますからね!」
「う、うーん、すごいんだろうけどなんとなく微妙な感じがする呼ばれ方だな…でも今日はそんな田中くんにぴったりな記念日だぞ。ズバリ、ボウリングの日だ」
「おお!『無駄なカーブボールの達人』のぼくにぴったりじゃないですか!」
「また微妙な異名が出てきたよ…」
「なんで6月22日なんすか?日本初のボウリング場ができたとか?」
「惜しいな。1861年6月22日附の英字新聞に日本初のボウリング場が開設したって記事が載ったからだそうだ」
「なんで記事になった日が記念日に…記念日って何かひねりを入れないといけない決まりでもあるんすか?」
「いや、そんなことはないけど…」
「高橋さんはボウリングは得意っすか?」
「いや、やったことあるくらいだな。もう何年もやってない」
「そうっすか!じゃあ今度勝負しに行きましょう!負けた方がご飯奢りで!」
「勝てる相手とわかった途端これだよ…まあいいよ。スペアの神ってのと無駄なカーブボールってのはちょっと気になるし」
「よし!今度日程決めますんで逃げないでくださいよ!」
「はいはい。一回ぐらい練習に行っとくか」
「無駄っすよ!ぼくさっき勉強のためにボウリングの本買いましたからね!これでもっと上手くなるっす!」
「本気すぎるだろ。さっき?どこで買ったんだ?」
「店長のおすすめコーナーにあったっす。ジャーン、『ボーリングポケットブック』っす!ちょっとお高めだったっすけど、これ読んでプロ目指しちゃおうかなー」
「…田中くん、その本チラッとでも読んだ?」
「えっ、まだ見てないっすけど」
「それボウリングの本じゃなくて、地質調査とか井戸掘りとかの穴をあける方のボーリングの本だぞ…こんなのコンビニで売れんのかよって思ってたんだけど…」
「えっ…あっ、ホントだ…」
「…返品したら?」
「レシート捨てちゃったっす…」
「じゃあ無理だな」
「高橋さ〜ん…」
「…ゴミ箱あさるぞ。一緒に探してやるから」