10月12日 豆乳の日
高橋 バイトの先輩。記念日に詳しい。豆乳は好き。湯葉も好き。
田中 バイトの後輩。「〜っす」が口癖。豆乳は好き。豆乳鍋も好き。
ここはとある郊外のコンビニ。
「さっきの休憩時間、クッキー食べてませんでした?」
「ん?ああ。食べてたけど、どうかした?」
「いや、高橋さんがそういうの食べるの珍しいなーって思って。どこで買ったんすか?」
「いや、貰い物。作り過ぎたからお裾分けってことでもらったんだ」
「へ、へー、そうなんすかー 誰から貰ったんすか?」
「店長からだよ。今度おすすめコーナーに並べる予定らしくてな。その試作品だそうだ」
「なんだ、そういうことっすか。美味しかったっすか?」
「ああ、かなり。もう少しあるけど食べてみるか?ちょうど客もいないし」
「いいんすか⁉︎ぜひぜひ!」
「ちょっと待っててくれ…はい、これ」
「いただきます!もぐもぐ…甘さ控えめで美味しいっすね!でもなんか普通のクッキーと違うような…もしかしてこれおからクッキーじゃないっすか?」
「すげぇ!よくわかったね!俺は言われなきゃ絶対わからないと思うわ」
「ふふん!まあこのくらい朝飯前っすよ!ぼくは神の毒舌を持ってると言われてますからね!」
「それ味覚と関係なくないか…まあいいか。なんか店長が豆腐を作るのにハマってるらしくて、おからがめちゃくちゃ余ってるらしい」
「それで今日のおすすめコーナーもおからだらけなんすね。…豆腐って個人で作れるものなんすか?」
「できなくはないんじゃないかな。大豆を水に浸してすり潰して、煮てこしたのが豆乳だろ?それににがりなんかの凝固剤を入れて固めたのが豆腐だ」
「豆乳って豆腐の前段階なんすね。あれ?おからはどこで出てくるんすか?」
「こした残りのとこがおからだよ。豆乳とか豆腐を作ると必ずセットで出てくることになるな」
「なるほど。でもおからも嫌いじゃないっすけど、このクッキーはなおのこと美味しいっすね。どうやって作るんだろ?」(もぐもぐ)
「企業秘密って言ってたな。でもちょっと意外だ。田中くん豆腐嫌いみたいだったから、おからも好きじゃないのかと思ったよ」
「えっ?ぼく豆腐嫌いじゃないっすよ?」
「あ、そうなの?でも湯豆腐にはブチギレてなかった?」※10月2日参照
「あれは湯豆腐が『私が主役です』って顔をしてるからっすよ。高橋さんもよく考えてみてくださいよ。今日のメインは豆腐と昆布を茹でたものです、って言われたら怒りません?スーパーサイヤ人になっちゃいますよ」
「そんなにか…というより昆布は食べないんだっつうの」
「豆腐自体は好きですよ。豆乳だって毎日飲むくらい好きっす」
「そうなんだ。健康的だな」
「でしょ!もう5.6年ぐらい続けてますからね!豆乳にはあれが入ってますからね。あの…イソギンチャクみたいな」
「イソフラボンな。でも、5.6年前っていったら中高生ぐらいじゃないか?そんな時期から健康に気をつけてたんだな。やっぱりスポーツしてたから?」
「え、ええ、まあそんなとこっす」
「? なんか歯切れ悪いな。あっ、そういや今日は豆乳の日だぞ」
「へー、そうなんすか。なんで今日なんすか?」
「10月なのは体育の日、今はスポーツの日か、それがある月で健康や体に気をつける月だからで、12日なのは『十 二』で『とう にゅう』の語呂合わせからだな。日本豆乳協会が制定した記念日だ」
「日本豆乳協会…日本にはなんでも協会がある説が濃厚になってきましたね…」
「そういえばうちの妹も中学時代に毎日豆乳飲んでたな。数ヶ月でやめてたけど」
「なんでやめちゃったんすか?好みじゃなかったとか?」
「それが…豆乳にな、なんかこう…胸を大きくする効果があるって聞いて始めたらしいんだけど、それがガセだったって知ったらしくて。それで飲むのやめたらしい」
「…えっ?」
「ん?どうした?」
「イヤ、ナンデモナイッス」
「なんでもなくは見えないが…胸の大きさなんてどうでもいいだろって言ったんだが、その時の彼氏が巨乳好きだったそうでな。…思えばあいつは中学時代から恋人がいたんだな…はあ…」
「…そんなこと言って、高橋さんも胸が大きい方が好きなんでしょ?どうせ…」
「なんだ、どうせって…まあ魅力的だとは思うけど、そんなのどうでもいいだろ。もっと大事なことがあるさ」
「ふーん、たとえばなんすか?」
「そうだな…無視せずに話をしてくれるとか…」
「基準が低すぎるでしょ…悲しくなるからやめましょ…」