10月7日 ミステリー記念日
高橋 バイトの先輩。記念日に詳しい。ミステリーツアーに行ってみたい。
田中 バイトの後輩。「〜っす」が口癖。将来の夢がミステリーハンターだった時期がある。
ここはとある郊外のコンビニ。
「名探偵になりたいんすよ」
「…急にどうした?名探偵コナンでも読み直したの?」
「いえ、金田一少年の事件簿っす。ここ数日で読み直したんすよ」
「ああ、そっちか…それで?名探偵?」
「そうっす!絶海の孤島の洋館でみんなを集めて推理ショーをしたいっす!じっちゃんはいつもひとつ!っす!」
「決め台詞混ざってんじゃねーか。でも名探偵なんてなろうと思ってなれるものでもないだろ」
「ふふふ、そこは考えてありますよ!今後何かの事件に巻き込まれたときに類稀なる推理力を発揮して、事件を解決すればいいんすよ!そうすれば名探偵として一躍有名になるって寸法っす」
「…まず前提条件が達成できなさそうだが…」
「店長のおすすめコーナーにあったチェック柄の帽子はすでに買いましたからね!あとは事件に遭遇するだけです」
「たしかに探偵っぽいけどさ…ちなみに推理力の方は大丈夫なのか?」
「そこなんすよ。推理力ってどうやって鍛えたらいいんすかね?」
「一番大事なとこが欠けてんじゃねーか。推理力ねぇ…それこそ推理小説を読んで謎解きにチャレンジするとかどうだ?」
「推理小説っすか…うーん…」
「あっ、そういや活字読むの苦手だっけ?」※6月29日参照
「いえ、最近は店長の息子さんの作品を読むようになって苦手意識は無くなりましたね。推理小説も何冊か読んだんすけど…途中で気になって答えを見ちゃうんすよね…」
「駄目じゃねーか。ちゃんと推理しろよ…」
「わかってるんすけどね…うん、でも名探偵になるためっす。今度はしっかり推理しながら読みます!」
「頑張ってくれ。ちなみに世界初の推理小説を書いたエドガー・アラン・ポーの命日から、今日はミステリー記念日って言われてるぞ。推理小説読み始めるにはぴったりの日だと思う」
「おっ、そうなんすか!これは世界がぼくに名探偵になれと言っているに違いないっすね!ちなみに世界初の推理小説ってなんて題名のやつっすか?」
「えっとたしか『モルグ街の殺人』じゃなかったかな」
「ちょっとそれ読んでみます!ふるきをたずね新しきをしるってやつですよ。『音信不通』っす」
「『温故知新』な。連絡取れなくなってどうすんだ」
「そ、そうとも言いますね。あっ、でもほら、連絡手段のない山小屋とかでよく連続殺人事件が起こるじゃないっすか。そういうとこにどんどん足を運んだ方がいいっすかね?」
「それはフィクションの中だけの話じゃないかな…それこそ金田一少年の事件簿とかで多いよな。…そういえばここ数日で読み直したっていってたよな?」
「え、ええ、そうっすけど」
「君、また漫画をたくさん買ったんじゃないだろうな?」
「うえっ⁉︎な、なんでそんな結論になるんすか⁉︎」
「金田一少年の事件簿は全巻俺の家に置いてあったよな?漫画読むだけなら、田中くんはうちに来ることを俺に事前に言うんじゃないかと思って」
「…」
「言わないってことは他に目的がある…たとえば新しく漫画を買ったせいで、自分の部屋に入りきれなくなった漫画を持ってくる、とかな」
「なるほど…あなたは探偵ではなく推理小説作家になるべきですね」
「うわ、テンプレみたいな犯人のセリフだな…」
「証拠はあるんすか!証拠は!ぼくが静かなるドン全巻セットを買ったという証拠は‼︎」
「いや、別にないけど…静かなるドンだとは誰も言ってないぞ…」
「はっ!…み、見事だ明智くん…」
「自爆しただけじゃねーか…」