10月6日 夢をかなえる日
高橋 バイトの先輩。記念日に詳しい。夢といえば夢グループ。
田中 バイトの後輩。「〜っす」が口癖。夢といえば夢芝居。
ここはとある郊外のコンビニ。
「今日は10月6日か…」
「どうしたんすか?しみじみと」
「いや…今日は夢をかなえる日っていう記念日なんだけどさ」
「夢をかなえる日っすか?なんか素敵な響きっすね」
「株式会社KUURAKUGROUPっていうところが制定した記念日で、民間企業が若者の夢を叶えるためにバックアップをする組織を設立したりしたらしい。日付は『10リー6』の語呂合わせからきてる」
「う、うーん…語呂合わせに無理があるような…それになんか企業色が強いし…うん、友達になれないタイプっすね」
「なんだその評価…まあやってることは素晴らしいし、俺は嫌いじゃないけどな」
「でもその日がどうかしたんすか?」
「ああ、夢をかなえる日自体がどうこうじゃないんだけどさ。この記念日のことを初めて知った時にも思ったんだけど、俺の夢ってなんなんだろうって思って」
「…んん?自分の夢がわからないってことっすか?」
「まあ端的にいえば…いろいろと考えてみたんだが、特にこれといって思いつかなくて」
「いやいやそんな、何かあるでしょ。将来どんな職業につきたいとかないんすか?」
「んー、今の研究が形になって、どこかしらの企業に勤められたらとは思ってるが…これって夢というより人生設計じゃないか?」
「うーん、わかるようなわからないような…高橋さんの思う夢ってたとえばどんなものっすか?」
「そうだな…この話を前に店長としたときに店長の夢を聞いたんだが、自分の店を持って、自分がいいと思ったものをみんなに売って知ってもらうのが夢だったって言ってたな。それ聞いたときにはすごいいい夢だなって思ったよ」
「なるほど…店長のおすすめコーナーは夢の集大成だったんすね」
「そういうことだな」
「でも今日売ってるの金のう○この置物っすよ…集大成がこれでいいんすかね…?」
「まあたまにはそんな日もあるだろ…金運アップの効果があるらしいぞ、うん○だけに」
「…」
「そんな冷ややかな目で見るなよ…別に俺が考えたわけじゃないぞ」
「まあそれは置いておいてですね…高橋さんは夢を難しく考えすぎっすよ」
「どういうこと?」
「なんであれ自分のやりたいこと、成し遂げたいことは全部夢なんすよ。他人の夢と比べるようなもんじゃないと思います」
「ふむ」
「『どこか企業に勤める』、いい夢じゃないっすか!他人に何か言われても、自分のやりたいことは自分だけは認めてあげないと!他人からはちっさく見えても、自分にとっては大事な夢なんすから!」
「…うん、ありがとう。目から鱗だな。田中くんに相談してよかったよ」
「ふふん!でしょ!夢といったらこのぼく、ドリーミングドリーマーの田中っすからね!」
「どういう意味なんだそれ…ちなみに田中くんの夢は?」
「ぼくの夢は顔ぐらい大きいシュークリームを食べることっすね!」
「ふふ、田中くんらしくていい夢だな」
「そうでしょう!両手じゃ抱えきれない、ドキドキするような夢っすよ!」
「ブルーハーツかよ。…そういえば小学生の頃の文集みたいなのに将来の夢を書いた覚えがあるな…」
「おっ、そのときはなんて書いたんすか?」
「たしか…『トーテムポールになりたい』だった気がする」
「…い、いいと思いますよ!ほら、その…すみません、理解できなかったっす…」
「大丈夫、今となっては俺にも意味不明だ」