10月3日 登山の日
高橋 バイトの先輩。記念日に詳しい。登山はほとんど経験がない。
田中 バイトの後輩。「〜っす」が口癖。登山はときどきする。シーズンオフに走って登り下りする。
ここはとある郊外のコンビニ。
「ふと思い出したんすけど」
「なんだ?」
「この前登山に行くって話をしませんでしたっけ?」※8月12日参照
「あっ…そうだったかな…記憶にないな」
「今、『あっ』って言いましたよね?」
「くっ、バレたか…そういやそんな話もしたね」
「結局行けてないじゃないっすか?そろそろ行楽シーズンだし、どうっすか?登山」
「ああ、いいと思うぞ。いってらっしゃい、気をつけてね」
「いや高橋さんも行くんすよ。…ぼくと出かけるのそんなにいやっすか…?」
「い、いやいや違う!田中くんと出かけるのは好きだぞ!俺が嫌いなのは疲れることだ!」
「何を堂々と情けないこと言ってるんすか…」
「俺も自分で言っててそう思ったわ…うーん…うん、そうだな。行ってみるか」
「ほんとっすか!いつ行きます?今日っすかね?うん、今日にしましょう!」
「君の判断の速さは凄まじいな…鱗滝さんもびっくりだろ…さすがに夜勤明けは勘弁してくれ。でもせっかくなら今日から動き出したいな。今日はちょうど登山の日だし」
「またタイムリーな記念日っすね!しかもこれも語呂合わせの匂いがしますよ!」
「うん。『10 3』で『と ざん』の語呂合わせ。日本アルパインガイド協会が1992年に制定した記念日だ」
「登山を始めるにはぴったりの日っすね!やっぱり今日出発がよくないっすか?」
「すまん、君のように体力オバケじゃないから…」
「誰が体力オバケっすか!」
「あと登山用の道具を何も持ってないんだよ。よかったら今日は道具を買いに行くのに付き合ってもらえないかな?」
「なるほど、それは重要っすね。いいっすよ!」
「ありがとう。でも登山に必要なものって具体的には何を買えばいいんだ?」
「そうっすねーあっ、そういえば店長のおすすめコーナーに行楽シーズン必需品セットってのがありましたよ」
「ああ、そういえば…でも店長の必需品セットって胡散臭いな…」
「まあ、とりあえずみてみましょうよ!えーっと、まずコンパスですね」
「まあ必要っちゃ必要か。迷ったりしたら大変だし」
「次は六分儀」
「…どこに行くつもりなんだ…というより使い方がわからん」
「そして熊撃退スプレーっすね」
「…それ非常持ち出し袋にも入ってなかったか?店長の熊対策への情熱はどこから来てるんだろうな…」※9月1日参照
「以上っす」
「やっぱり詐欺商品だったな…他に必要なものがあるだろ…」
「そうっすね。最低限ザックと水筒、雨具、あと実際に着る服とトレッキングシューズぐらいは欲しいっすね」
「なるほど、そういうものを揃えればいいのか。正直全くわからんから田中くんだけが頼りだな」
「任せてくださいよ!まあそういうの無しで山に突っ込んで血反吐吐きながらなんとか帰ってくるってのもまた一興ですけど」
「全然一興じゃないから勘弁してくれ」
「そうっすか?限界は越えるためにあるのに…まあしっかり準備して楽しむのが一番っすね!そういう道具を揃えるなら隣町のモールっすかね?」
「そうだな。じゃあ車出すかな」
「あ、ぼく運転してもいいっすか?」
「ああ、いいよ」
「やった!ふふふ、ついにぼくの稲妻のような車線変更をお見せする時が来ましたね!」
「安全運転で頼むぞ、マジで」