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今日は何の日  作者: 毎日がエブリデイ
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9月28日 プライバシーデー

高橋 バイトの先輩。記念日に詳しい。幽霊と暮らしている人にプライバシー問題を相談したい。

田中 バイトの後輩。「〜っす」が口癖。幽霊と暮らしてる人なんていないでしょ…


武 高橋家に住み着く男性の幽霊。

貴子 高橋家に住み着く女性の幽霊。田中のメル友

ここはとある郊外のコンビニ。


「…」


「…今日はやけに静かだな。何かあった?」


「えっ⁉︎い、いや、特に何もないっすよ。ほ、ほら、秋の夜っすから、虫の音に耳を傾けながら物思いにふけたくなるときもありますよ」


「店内だから虫の音は聞こえないだろ」


「そ、そこは想像力でカバーっすよ!ぼくには聞こえますよ、わだつみの声が」


「別のものが聞こえてんじゃねーか。まあ何もないんならそれでいいんだけどさ」


「(…ばれてないかな?さすがに謝った方がいいかな…でも絶対怒られるし…後々ばれた方が怒られるだろうなぁ…でも…)」


「…」


「ど、どうしたんすか?急に黙って?」


「…なんか言わなきゃいけないことがあった気がするんだが…忘れた。まあそんなに大したことじゃないんだろ」


「そ、そうっすか」


「…やっぱりなんかあったのか?様子が変だぞ」


「い、いえ、なんでもないっすよ!そ、そうだ!いつもの記念日の話を聞かせてくださいよ!秋といったらやっぱりこれでしょ!」


「別に季節は関係ないと思うが…まあいいか。今日は…プライバシーデーだな」


「プ、プライバシーデーっすか?」


「ああ。有田八郎って言う元外務大臣が三島由紀夫の『宴の後』って小説でプライバシーを侵害されたってことで裁判を起こしたんだけど、1964年のこの日にそれを認める判決が出たんだ。それからプライバシーの概念が広く世間に広まったことからこういう記念日になったらしい」


「小説がプライバシーの侵害ってどういうことっすか?」


「登場人物とか内容が、見る人がみればその人を元にしたことが丸わかりだったんだよ。ちなみに『この物語はフィクションです』とかいう但し書きはこの事件がきっかけでつけられるようになったといわれてる」


「へー。世間に大きな影響を与えた事件なんすね。…プライバシーっすか…」


「ああ、記念日を作られるのも納得だな。でも気をつけないとな…自分ではそんなつもりはなくてもプライバシーの侵害になってることもあるだろうし」


「あっ…」


「特に家族とか親しい間柄だと認識が甘くなりそうだ。…どうした?そんな思いつめたような顔して?」


「高橋さん、すみませんでした!」


「ど、どうしたんだよ?謝るようなこと何もないだろ?」


「いえ、実は…今日の日中に高橋さんの家に無断でお邪魔してしまいまして…」


「ん?」


「その…恥ずかしいことに漫画の整理が進んでなくて…母からも毎日怒られててですね…少しでも家から減らそうと思って追加で高橋さんの家に置かせてもらおうと考えまして…」


「…」


「でもさすがに怒られると思ったんで…貴子さんに相談して、鍵を開けてもらったんです…あっ!貴子さんは悪くなくて、ぼくが無理矢理お願いしたからなんです!」


「なるほど、事情はわかった」


「本当にすみません…最低でした…」


「別にそんなに謝らなくていいだろ、漫画の整理が進んでないだけで」


「…えっ?だって勝手に家に入ったんすよ⁉︎」


「いや、貴子さんの許可とったんだろ?それ普通に遊びに行っただけだろ。漫画もそんなべらぼうに増えてたわけじゃなかったし」


「えっ⁉︎気づいてたんすか⁉︎」


「そりゃ気づくだろ。ああ、内緒のつもりだったのか。道理で日中に田中くんが来たのか聞いたときの貴子さんの反応が微妙だったわけだ」


「えぇ…ぼくがいうのもなんすけど、高橋さんはもっと怒っていいことなんじゃないっすかね…?その…プライバシーの侵害だ!って」


「幽霊と同居しておいてプライバシーもクソもないさ。そうだ、思い出した。田中くんにこれを渡そうと思ってたんだ」


「これは…店長のおすすめコーナーにあったやつですよね。剣に龍が巻きついたデザインのキーホルダー。こういうの集めるのは去年卒業してますよ、ぼく」


「去年まで集めてたのかよ…それはおまけだ。鍵がついてるだろ?」


「はい」


「それ、うちの合鍵」


「はあ…はぁ⁉︎た、高橋さんの家のっすか⁉︎」


「ああ。うちに置いてある漫画が読みたくなったり、持って帰ったり、もしくは今回みたいに新たに持ってくることがあるかもしれないだろ?だから渡しておくよ。その方が便利だろうし」


「で、でも合鍵を渡すって…その…と、特別な意味があったりとか…」(ゴニョゴニョ)


「やっぱりいらないか?いらないなら返してもらっていいけど」


「いえ!お預かりします!悪用はしませんので!」


「それならいいんだけど。あっ、そうだ。ベッドの下だけは覗くなよ」


「あっ、何かエッチなものを隠してるんすね!古典的なとこっすね!」


「いや、俺は何も隠してないんだけど、武さんから強く言われてるんだよ。なんか嫌な気配がするって」


「えっ…な、何がいるんすか…?」


「さぁ?実はもう1人ぐらい住人がいたりしてな。ははは」


「ははは、じゃないっすよ…」

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