9月23日 不動産の日
高橋 バイトの先輩。記念日に詳しい。好きな不動産用語はメゾネット。
田中 バイトの後輩。「〜っす」が口癖。好きな不動産用語はサービスルーム。
ここはとある郊外のコンビニ。
「一人暮らしがしたいっす」
「一人暮らし?急にどうした?」
「友達の家にみんなで集まって大こっくりさん大会をやったんすけど、こういうのって実家だとできないじゃないっすか。それで一人暮らしって自由でいいなーと思いまして」
「こっくりさんってそんな大々的にやるものだっけ…?まあたしかに自由ではあるな」
「そこでですね、一人暮らしの先輩である高橋さんに一人暮らしに必要なものをご教授願おうかと思いまして」
「必要なものねぇ…店長のおすすめコーナーにあるとっておき家電セットを買うとか?」
「それ高橋さんが騙されたやつっすよね…また売ってるんすか?」※8月29日参照 ホットプレート、コーヒーメーカー、ホームベーカリーのセット
「そうみたいだな。でもちょっと中身変わってるぞ。ひとつ追加になってる」
「追加じゃなくて全部見直すべきだと思うんすけど…ちなみに何が追加されたんすか?」
「えーと、ニカド電池の充電器だな」
「またいらないものが…そんなものより必要なものあるでしょ!」
「ごもっともだな。しかし、一人暮らしっていってもこの辺りに住むんだろ?家賃とかもかかるし、親御さんは許してくれるのか?」
「それを言ったら高橋さんもそうじゃないっすか。ご実家がすぐ近くでしたよね?なんで一人暮らしすることになったんすか?」
「うちは特殊だからな。父親の知り合いに不動産関係の仕事してる人がいてな。心霊現象が多発する事故物件を抱えてて、同じマンションの他の部屋もどんどん退去していっちゃうってことで困ってたんだよ」
「それ今高橋さんが住んでるとこっすか?」
「そうそう。その話をしてたのが俺が高3の3月ぐらいで、実家から大学通う予定だったけど、俺の知らない間にその部屋に俺が一人暮らしすることで話がまとまってな。そして今に至るってわけだ」
「無茶苦茶な話っすね…」
「まあなんだかんだ楽しいからいいんだけどな。俺が住んでから心霊現象の噂が止んで、他の部屋にも入居者が入ったらしい。よかったよかった」
「心霊現象は止んでないっすけどね…でもやっぱり高橋さんはレアケースっすよね…うちの両親が許してくれるかどうか…」
「交渉材料として家賃とかをある程度自分で負担できると話がしやすいかもな。とりあえずいい物件がないか探してみたら?今日はちょうど不動産の日だし」
「不動産の日?」
「ああ。この時期は10月転勤の人とかがいるから、不動産取引が活発なんだよ。そして『ニ 十 三』で『ふ どう さん』の語呂合わせで9月23日になったそうだ」
「へー。しかし物件探しっすか…家賃の相場ってどのくらいっすかね?」
「立地とかにもよるけど…この辺りだったらワンルームで4,5万くらいかな。部屋数とかセキュリティとかこだわるともっといくと思う」
「4,5万かぁ…プラスして生活費がかかるんすよね?厳しいっすね…」
「それと引越しと敷金礼金もかかるし、最初に家具とか揃えるのもそこそこかかるぞ。ちなみに貯金とかある?」
「ふっ、宵越しの金は持たない主義なんで」
「…まああれだけ衝動買いしてればそうだろうな」
「うっ…反論の余地もないっす…」
「うーん、初期費用問題か…俺の住んでるとこに代わりに住むか?俺は実家に戻ればいいし」
「いえ、さすがにそこまでしていただくわけには…そうだ!高橋さんの家でルームシェアさせてくださいよ!ぼくの漫画を置かせてもらってる部屋を借りますので!」※8月26日参照
「でも今でさえ結構手狭だぞ。それにもう半分漫画があるんだろ?実家を出るならそれも持っていくように言われるんじゃないか?」
「あっ、それがありました…1500冊ぐらいありますからね…」
「…なんか500冊ぐらい増えてないか?」
「…」(サッ)
「おい、目を逸らすな」