6月10日 ミルクキャラメルの日
とある郊外のコンビニ。時刻は23時をまわったところ。
店内の客の姿はなく、レジに2人の店員がいるだけであった。
「暇だな」
「暇ですね~」
「忙しいのもなんだけど、暇なのもきつい」
「時間経つのがマジで遅いっす…つーか客いないのに突っ立っておく必要あるんすか?」
「店長命令なんだよ。休憩時間以外に奥に引っ込んでると、カメラチェックしてねちねち言ってくる」
「うわ…ぜってーモテないでしょ、あいつ…」
「店長をあいつ呼ばわりするなよ(笑) まぁその通りだろうけど」
「それにしても暇っすね… 高橋さん、なんか面白い話ないんすか?」
「君な、俺は一応年上だぞ、そのフリはないだろ… なんかあったかな?」
「(なんだかんだ考えてくれるあたり、この人マジいい人)」
「今日は…6月10日か。今日はミルクキャラメルの日だな」
「ミルクキャラメルってあの森〇の?」
「そう、〇永の。1913年の6月10日に発売したのにちなんで制定されたらしい」
「へー、そんな昔からあったんすね~ でも最近食べてないっす」
「俺もだ。久々に食べてみるか。こっちのほうに並んでたような…」
「ミルクキャラメルなんてうち置いてましたっけ?」
「店長おすすめコーナーにあった気がする」
「あー、謎コーナーっすね。店長の気分でラインナップが変わる」
「どういうチョイスなのか全くわからん。この前ざびえるが並んでたぞ」
「なんすか、ざびえるって?」
「大分のお菓子だよ。おっ、あった、あった」
「あれ、そんな色でしたっけ?」
「違った、これジンギスカンキャラメルだ。こっちの黄色いのだった」
「なんでそんなものがあるんすか…」
「よし、これを買って…どうだ、一つ食べるか?」
「いいんすか!でも店長にばれません?」
「大丈夫、あの人バックヤードのカメラしか見てないから」
「完全に趣味じゃないっすか…じゃあ、いただきまーす」
「ほいほい。うん、甘い」
「あー、こんな味でしたね、なつかしー」
「発売当初は大人向けだったらしいな」
「そうなんすか?こんなに甘いのに?」
「昔の日本人は牛乳の味に慣れてなかったから苦手な人が多かったらしい。西洋の味、タバコの代わりにキャラメルを、みたいな売り方だったとか聞いたな」
「へー、高橋さんもタバコやめてキャラメルにしたらどうっすか」
「やめとくわ」
「そういやキャラメルってなめるのと噛むのってどっちが正解なんすかね」
「どっちでもいいんじゃないか。俺は噛むけど」
「ぼくはなめる派ですねー、子供のときキャラメル噛んで…」
「あっ!」
「びっくりした、どうしたんすか?」
「差し歯とれた…キャラメルに突き刺さって…」
「あー…ぼくも子供のとき銀歯とれたんすよ~って話をしようとしたところでした」
「明日歯医者行かなきゃ…ちょっと裏に差し歯置いてくるわ」
「はいはい、まったく…(ピンポーン)あ、いらっしゃいませー」