第79話 続 追放転生者を始末ですわ
戻れば、既にテヘペロンはその話を終え、転生者達は何やらグループのように纏まりはじめている。まるで学校の行事のようだが、となれば起こる問題が一つある。
グループ割。
学校にて度々起こりうる、教師が求める最大の惨劇。今でこそクラスにはトウマがおり、そしてマヒロがいる。しかし過去には俺も、グループ割から外れた経験がある。幼馴染とはいえ、その時トウマとは別クラスだったし、漫画やゲームが好きな俺は周囲から根暗に見えたのかもしれない。その場では強がったが、あれは結構……しんどい。
当然それを気に掛けるものはいる。それは教師。しかし、気遣う教師の一言だって、存外その者を傷付けるのだ。
「ほらぁ、誰か渡辺くんと組んであげなよぉ。じゃないとこの子、すぐに死んじゃうよぉ? まずは洞窟を抜けるというこの課題。足を引っ張る奴がいれば、グループごと全滅しかねないけどさぁ。涙ぐましい偽善と犠牲を、誰か見せてあげなよぉ」
糞だ。こいつ。異世界を救えと言っておきながら、そんな気なんてさらさらない。
アンジェリアも、ショーコも、決して善い神とは言えない。しかし、それでも信念は持っていた。アンジェリアはルディアへ、ショーコは子供に対して。だからこそ強敵であったし、通じるところもあれば理解することもできる。
でも、テヘぺルラ・ロード。この女神にそんな崇高な想いは一切ない。世界の平和など眼中になく、誰かを想う訳でもなければ、自身が楽しければそれでいい。そんな神にあるまじき邪な想い。邪念が、こいつの顔にはありありと浮かんでいる。
しかしだ。この場には主人公がいる。SSランクを持つ正義の味方。神が見捨てようが、きっと助けるはずだ。ハズレスキルを持つ、可哀そうな渡辺くんを。
「————だな」
「————そう、だね」
ほらね。こうして彼は、偽善ではなく正義を。犠牲とは違う献身を。故に彼は、主人公——
「じゃ、渡辺は置いて行こうぜぇえええ!」
「どうせこの先、生きていけねぇよ」
————え?
「つうか渡辺、いたの? って感じぃぃぃ」
「良かったじゃん。最後に、ゴミスキルもらえたお陰で目立てたんだしさ」
その後に続く高らかな笑い声。一体何が面白いというのか。楽しくもなければ、ただ不快で、そんな嘲り見下す、耳に障る嗤い声。
ともすれば飛び出しかねない衝動に駆られる。それを堪え、震える拳を握りしめた。
く、屑ども……
吐き気を催す、害悪どもめ……
これは緊急避難だとか、そういう話ではない。大船に乗り、それでもなお、すがる人間を突き落とす。
そんな性根、今すぐこの場で殴り飛ばしたい。だが、その必要はない。胸糞悪い光景だが、お陰で主人公らしくないところは見れたのだから。こいつらは、この場ですぐに断罪する。神が消えた後、その瞬間すぐにでも。
この、右手に宿り滾る、転生者キラーの力でな——
「————って、あれ?」
か、輝かない。主人公パワーが宿ってない!?
な、なんで? どうして? 悪態を口にしたのは、紛れもなくSSランクを持つ主人公。あんな発言、全然主人公らしくないのに——
俺が、心の内でそれを認めてる? 馬鹿な! そんなはず、ある訳無い! 幾ら何でも、この胸糞悪さが偽物だなんてことは絶対に! 絶対に! あんな奴が主人公として、絶対に!! 許される訳はないんだ!!
————
——————
————————そうだ
そんな発言をするなんて、主人公じゃない。
主人公らしくないのではなく、主人公じゃない。
だから、主人公パワーを得られない。
悪役ならば、あって然るべき発言なのだから。
だとしたら真の主人公は——
罵倒する者達。それを見て、くすくすと嘲笑うクラスメイト。そんな様を、歪んだ笑みで眺める神。手を差し伸べる者は誰一人としていない。いないのならば、ここに正義はありえない?
いや——
いるじゃないか。正義とは言わずとも、少なくとも悪ではない人間が。数々の視線と嘲笑の先、そこで俯く憐れな男。渡辺くん、という人間が。
まさか、この物語の主人公は、皆がレアスキルを所持する中、唯一Dランクを所持する者。外れも外れ、大外れの、使えないハズレスキルの持ち主。そんな弱小転生者である渡辺くんが、今回の主人公だっていうのか——




