第78話 追放転生者を始末ですわ
渡辺くん。ハズレスキル、だなんて。なんと憐れなこと。
しかしまあ、仕方がないか。世の中、人々が考えうるだけ無数に存在するであろう異能力。大したことないスキルだってあるだろう。それに——
”主人公じゃない”なら、得られるスキルもこんなもんだろ。
恐らく本命はSSランクの所持者。見た目もイケメンで正統派主人公らしい。
しかし一点気になることがある。こればかりはルディアに一度聞きにいかなくてはならない。それは、複数転生者の倒し方。
転生者キラーというからには、転生者全般を倒しうる能力なのかもしれない。しかし得られる力は”主人公パワー”で、主人公らしくない行いからその力を得る。
ルディアのことだ。転生者という存在自体を許せないのだから、主人公だけを始末しても仕方がないだろう。故に、主人公以外の倒し方を聞きに行かなくては。
「んじゃ、ワタなんちゃら君とかいう雑魚はほっといて、この世界のことについてお話するね。うるせぇの嫌いだからさぁ。黙って静かに、聞いててね——」
テヘペロンの語る異世界の事情。これもまた始末のヒントになりうるかもしれないが……仕方がない。この隙に一度、ルディアの下へと急ぎ戻る。
「おい、ルディア! やべぇぞ!」
「ふえ?」
こいつ、絶対寝てやがったよ。まあ、療養するべきなのだから仕方がないけど。
「神だぞ。転生神がいやがった。多分、テヘペロンってやつだと思う」
始末の仕方もだが、まずこれは伝えておかねば。転生神は厄介この上ない。毎度現れるごと、転生者以上の危険性を生み出しているのだから。
しかし、それを耳にしても、存外ルディアは驚きを見せることはなかった。
「そう、ですか。ま、気にせず進めなさいな」
「あれ? 嫌に冷静だな。もっと驚くかと思ったけど」
「私が警戒する、いや、警戒したのは、アンジェリアとショーコの二人だけ。テヘペロン如き下等な転生神に、知も策もないのですわよ」
想定外は驚きに繋がるといったが。ルディアは転生神とのバッティングを想定している。二度も遭遇したのだから、むしろ想定しない方が確かに不自然。
おまけに危険と断ずる転生神は、もはや二人ともに懐柔してしまった。よってルディアが、この程度のハプニングに動揺することなどありえなかったのだ。
「まあ、確かにあまり知的だとは思えなかったな」
「一言で言えば、馬鹿なのですわ。単純で、自分勝手なお馬鹿ちゃん。故に恐るるに足らず。用が済めば、自然とその場から消えるでしょう。さ、早く戻りなさい——」
同僚は問題ないとして、再び場に戻ることを促すルディア。しかし、転生神はあくまでおまけ。本題はここからなのだ。
「待てよ、あともう一つ伝えたいことがあってだな」
「なんでしょう」
「実はな、今回の転生者は複数人だ。年齢的にも、恐らく学校の一クラス。それが丸々、異世界に転生してんだよ」
「あー、それは、面倒くさいタイプですわね」
やはり、ルディアをして厄介だと思う事態らしい。しかし、憎き転生者をウン十人と量産してくれたのだから無理もない。
「だろ? で、ルディア的にも主人公だけ始末すりゃいいってもんじゃないだろ? だから、脇役転生者はどう始末したらいいか聞きに来たんだ」
「それは納得。ですが、難しいことでもありません。面倒には変わりありませんが」
「と、いうと?」
「主人公の消えた物語は、新たな主人公を創出するしかない。つまり、順繰りに主人公を始末していくという話。ですが、ストーリー上の設定でも無ければ、付け焼刃の代役など知れたもの。最初の一人さえ片付けられれば、プロットのない物語が如く、あれよあれよと粗が見えてくるのですわ」
主人公がいない物語は無い。あえて、それが明確でない作品。曖昧な作品というのはあるかもしれない。しかし、一つの流れには必ずスポットを浴びる人物がいて、複数主人公だったり、章ごとの主人公だったりする訳だ。
ましてや今回のケース。元は明確な主人公がいるのであれば、消失すれば、誰かが次を担わなければならないということ。
しかしここで一つ。主人公の消失は本来のストーリーの一端ではない。舞台を妨害する、観客の乱入と相違ない訳だ。だとすればさすがに役者も、その演技を中止せざる負えないのであって——
「物語の致命的な進行妨害。この世界の者も俺の存在に気付くはずじゃ……」
「元より神の視点は使ってないのですから。気付かれるには気付かれるでしょうね。しかし、それがなんだというのです。以前私は、世界の進行を舞台に例えました。しかし結局のところ世界は演劇と違い、先を歩んでいかざる負えません。そして、代役となる主人公まがいの転生者に、よもやキラが敗北するなんてこと、ありまして?」
随分と信頼されているみたいだが、あながち間違いでもない。今まで、神に見つかっても切り抜けて来たんだ。今更転生者に負けるなんてことはない。もし仮に俺が負けるとしたら、それはあいつが——
ま、それはありえないか。
しかし、冒険ファンタジーから一転。転生者を一人一人消していくだなんて、ジャンルはもはや、パニックホラーだな。
「分かった。じゃあ、行ってくる。もう、主人公の目星は付いてるんだ」
「さすが、早いですわね」
「さすがって言うほどでもねぇよ。一人だけ、あからさまに強かったしな。じゃあ、また後でな。残りのS・Aランクやハズレのスキル持ちもまとめて始末して帰ってくるよ」
「えぇ、楽しみに——って…………ハズ……レ?」
ルディアを背に、俺は俺の戦場へと向かう。クラスまとめて、四十弱。かなりのハイペースが求められるな。さっさと始末し、ルディアをゆっくり休ませてやるか。
「ま、待ちなさい! キラ! それは違——」




