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63話 続 ショーコと愉快な子供達

 魔法に溢れた異世界に、夢中になってはしゃぐ転生者。大人であればつっこみどころの一つでもあるだろうが、なにせ相手は転生者とはいえ子供なのだ。かくいう俺も、高校生にもなって此度の世界観に魅了されている。好奇心溢れる児童ならなおさら仕方がないというもの。



挿絵(By みてみん)



 興味を惹くものを見つけては逐一足を止めて”これは何?”と、召使いの少女に尋ねる姿も愛らしい。それをたどたどしい言葉で、一生懸命解説する少女の姿も同様に無邪気なものだ。


 そんな子供同士の和やかな場面を見守る傍ら、ルディアは腕を組みながらトントンと、指先で二の腕を叩いてはイラつきを露骨に表している。


「城を出て、たったの百メートルも進んでませんわよ。まったく、よそ見などしてないでさっさと歩いて欲しいものです」


 まるで我が子を急かす母親だ。子供の時分に道草を食う俺に対して”早く行くよ”と、よく母に急かされていたことを思い出す。


「お前、母さんみたいだな」

「失礼しちゃいますわね。私は純潔なる淑女でしてよ。しかしまぁ、”母なる”大地だとか、そういう比喩的な意味で言えば例えて然るべき表現だとは思いますがね」


 なんとまあ尊大なこと。我が子を愛するだとか、無償の愛とか、そういった母要素は一切感じられない。口うるさいだけならば、母というより小姑という表現の方が正しかったか。


「それはともかく、本当にトロいのですわ。蟻の行列でも眺めていた方が幾分進みはマシなくらい。一旦この場を離れて、転生者が召喚された目的から調べる方が有益な情報を得られるかもしれないですわね。でないと、日が暮れてしまいますわ」

「——それもそうだな。これから起こりうるイベントを予測して、備えをしていた方が建設的かもしれない」


 いつまでたっても進まぬ様子に待ちあぐねた俺とルディアは、転生者の周辺環境から得られるヒントを捜索すべく、その場を離れて一旦城へと引き返すことにしたのだった。



 ――――――――



「ねえねえ! この花ってなんで——って、ちょっと? どこ見てるの?」

「…………」


挿絵(By みてみん)


 ――――――――



 時間にして小一時間にも及んだが、振り返れば城まではほんの数十メートルの距離。早速城内の捜索に手を付けたいが、その前に入城するには城門をなんとかしなければならない。しかし、そこは追跡に定評のあるルディア。扉に触れるや否や、魔力で掛かった錠前をあっさりと解錠してしまった。


 見事なお手前だが、どちらにせよルディアの腕力なら無理やりこじ開けることも容易であっただろう。


「神の特技がストーキングにピッキングって、なんか犯罪者臭い特技だよな」

「先程から例えが失礼でしてよ。あくまで”捜査”と言ってほしいですわね」


 表現の仕方にご不満のルディアはさておき。潜入した城内の壁面は外壁と同じように、いたるところに宝石や水晶が埋め込まれている。その役割は言わば照明。柔らかい煌めきを放ち、室内を色鮮やかに照らしていた。


 広大なホールの先には大階段があり、それは一段一段、足をかける毎に七色の光を演出する。ここでも感心する俺を余所に、ルディアは仏頂面でつかつかと足早に階段を上っていった。


 遅れて上階に足を運ぶと、その先には国の紋章と思わしき柄の刻印された扉が構えていた。この扉にも魔力の錠がかけられていたようだが、ルディアは扉に手をかけると有無を言わさず開錠し、躊躇いもなくそれを左右に押し開く。


 開かれた扉の先は、まさにお偉方の集会の真っ最中だった。突如開かれた扉の方向へ一斉に視線が集まる。

 

「おい、そこに誰かいるのか?」


 呼び声を掛けるのは中央に座する、立派な髭を蓄えたとりわけ位の高そうな者。恐らくこの城の主と思われる。扉の開閉には気付けたようだが、彼らに俺達の姿までは見えはしない。


 が、そこは人間としての性。俺は条件反射的に扉の脇へと身を潜める。しかしルディアは逃げ隠れる俺の首根っこを掴み引きずり出すと、怯む様子もなく、堂々と大広間へと足を進めていった。


「誰も——いないか。しかし一体、召喚した魔道士は街へと赴いたと聞いたが?」

「それは間違いありません。現在、召使いと共に城外見学へと出ております。召使いにはしばらくの間、城には帰ってくるなと伝えてあります故、魔導士殿の仕業ではないものかと」


 主らしき男は家臣の返答を聞くことで、大きく安堵の溜め息を漏らした。


「それなら良い。この話を聞かれてはならんからな。扉は差し詰め、魔導士の魔力の残り香で開いたのであろう。召喚直後は、その膨大な魔力にあらゆるものが誤作動し大変な騒ぎとなったからな」


 なるほど。どうやら城に戻って正解だったようだ。


 この集会、なにやら相当にきな臭い。重鎮共が真面目な顔して集まって、転生者のお祝いパーティでも企画してるなんてことはあるまいよ。


「話を戻しますが、魔導士殿を利用し隣国に攻め入るということで異論はございませぬか?」

「かまわん。魔導士がガキだったのは想定外だが、かえって取り入れやすく都合が良いかもしれん。それに魔導士の持つ魔力は想像以上に強力だ。あの力ならば、一晩もあれば隣国をねじ伏せることができるだろう」

「では、そちらの段取りで戦略を進めて参ります。魔導士殿には一旦、迎えを寄越すことにしましょう」


 話の一端ではあるが、どうやら戦争利用の為に今回の転生者は呼び出されたようだ。ルディアとの会話でも何度か話にもあがった、争いでの転生者の参入。その類稀なる力が一国に加担しようものなら——


「これは、相当にまずいんじゃないのか?」

「ですわね。一国の召喚ということで予期はしてましたが、やはり争いが要因でしたか。なにより転生者はまだ幼い子供。相手は悪者だと一方的に吹き込まれれば、自身の正義の名の元に躊躇いもなく隣国を叩き潰すでしょう。それだけは絶対に阻止しなければなりません」


 戦争に加わること。それ自体を”らしくない”と判別することはできない。戦に赴く主人公など星の数ほどいるし、物語としては王道でオーソドックスな部類に入ってしまう。であれば、何か別軸で”らしくない”ことを探さねば——








挿絵(By みてみん)

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