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第17話 転生十二神

 神々の世界。


 それは、キラのいる世界、転生する者達の向かう異世界。

 そんな数多ある世界とはまた別次元に位置する、神とその使いだけが立ち入りを許される、神聖なる領域。蜘蛛の巣のように張り巡らされた世界線の中心に構えるその世界は、全ての次元に通じている。

 

 神々の世界は、幾つかの層に分かれてる。

 魔界、天界、天上界。

 

 魔界については、過去に起きた神々と悪魔の抗争において、現在は既にほぼ壊滅状態。今はただ、天界を追放された者の行く先と成り下がっている。


 天界。ここでは神々と天の使い、その双方が共存している。

 ルディアの本来の居住区もこの世界。キラは死後、この世界に連れてこられたという訳だ。ルディアに限らず、神々は基本この世界に身を置いている。最も、人間のように金銭や世間体などを気にする必要など全くないので、天界においての神と神との関わりというのはほぼ皆無に等しい。


 そして、天上界。ここは、互いに疎遠な神々が、唯一交わりを持つ世界。

 そうはいっても、彼らは世間話に花を咲かせる為にここに来る訳ではなく、訪れる理由は集会、議会、裁判などだ。自由奔放、自分勝手な曲者ばかりの神々の間でのルールの取り決め、逸脱した悪事を行う神の解任を行う場。


 辺り一面を覆う雲、石造りの建造物。差し込む陽光がそれら全てを黄金色に染める、神のみが立ち入ることのできる聖なる領域。

 その天上界の神殿に今、数名の神々が集まっていた。


 転生十二神。


 転生を司る十二人の神々の総称。

 彼らの他にも、神は星の数ほど存在する。目に見える物体や生物を司る神々や、天候などの事象を司る神々など、それこそ八百万という表現が適切な程に。

 その中でも彼らは、異世界転生の許可を与えられた選りすぐりの神々。今なおその加入と増員を求められる、一際人気の神の称号なのだ。


 此度開かれた議会は、出席義務のない定例会。面倒臭がりなルディアは、一度たりとも出席したことなどない。

 それは他の神々も同様。よほどの暇を持て余していなければ、出席を強制される緊急集会以外にわざわざ顔を出したりはしない。


「分かってはいたが、やはり参加者はお前だけか」


 長髪を結う、筋骨隆々のその男。転生神ヘラクレス・アンドロフ。

 転生神の中でもリーダー格に位置する。とはいっても神々の中に身分の差や優劣などはなく、彼自身がリーダーと称しているだけであり、誰一人、本心としてはヘラクレスをリーダーなどとは思っていない。

 ただ、毎度議会に参加する、議題をまとめる、などの面倒な役割はご免被りたいので、そのことについて誰一人言及しなかったことが黙認したと受け取られ、彼のリーダー意識を助長させた。


「来るわけないでしょ。こんな意味のない定例会なんて。活動報告なんかして一体なんになるっていうんだよ」


 生意気な口を利くその女性、いや少女は、転生神ショーコ・ハレルヤ。

 ヘラクレス同様、皆勤賞を維持する、麗しき黒髪の幼い少女の見た目をした女神である。


「だがな、ショーコよ。転生神の役割は重要なことだ。何にも無関心な数多の神々が、転生にだけは注目している。どういった転生が行われ、何に注目度が高いのか、我々はそれを知る必要があるのだ」


「はっ、出版社じゃあるまいし。そんなことで神々の注目を集めて、書籍化でもしようって訳?」



挿絵(By みてみん)



 皮肉を漏らすショーコは、翠色の瞳孔を縮めると、呆れ眼でヘラクレスを一瞥した。


「神々の活性化だ。今の神々は皆堕落し、役割を全うしていない。それを我々転生神が数多の世界に刺激を与える事で、神の役割を再興させる。そういった重要な意味を持つのだ」


「知ってるって。今更耳だこだよ。私の言う意味のないってことは、意見共有したところで誰もそれを活用しないってこと。あたしも含めて皆好きなようにやってる。それを見てどう思うか、そんなのは他の神々に任せればいいじゃないか。子供じゃないんだから」


 幼い見た目に似合わず辛口な発言。他人の意見を受け入れないショーコには、何を言ったところで無駄なのだ。

 反論したくもなる口を一文字に結ぶと、大きく息を吐くヘラクレス。

 居心地の悪い静けさが辺りを包む中、その場の空気を気にも留めずに一人の神が定例会を訪れた。


「遅れてごめんなさぁい。もう始まっていたかしらぁ?」



挿絵(By みてみん)



「アンジェリア。お前が来るなんて、珍しいこともあったものだな」


「一体いつぶりだよ。確かルディアが転生神になってから、ちょくちょく来るようにはなってた気がするけど、その後めっきり来なくなったじゃないか」


 アンジェリアと呼ばれるその女神。色白というより、色素が無い。そんな白く、異常なまでに、か細い指で冷たく輝く白銀の髪を掻きあげると、紅く燃えるような瞳をごうごうと滾らせ、昂る様子で言葉を返した。


「ちょっとぉ、最近気になることがあったのよぉ。だからぁ、緊急集会を開いてくれないかしらぁ。その為に私、ここに来たのよぉ?」


「気になることだと?」


「あんたのその口調だと長話になりそうだよ。なるべく簡潔に済ませてちょうだいね」


「駄目よぉ、ショーコ。そんな言い方しちゃあ。とぉっても面白い話なんだからぁ……」








挿絵(By みてみん)

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