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プロローグ1

「ん、んん〜」

「おはようございます、タクト様」


目が覚めるとメイドが側にいた。

変わらないいつもの光景だ。


「おはよう、シリィ。ふー、よく寝た」

「それは良かったです。もう朝食はできていますよ」

「ああ。食べに行くよ」

「それと、今日の夜は皆で会食の予定ですが部屋で召し上がりますか?」

「いや、今日はみんなと食べるよ。飲み会は遠慮させてもらうけどね」

「かしこまりました。ではいきましょうか」


俺は専属メイドのシリィと一緒に階段を降りて城内にある大きなレストランに向かう。

とても大きなレストランで城のVIP扱いの者のみが使用できる。


「おはようございます」


レストランへ行くと執事が俺にお辞儀をしながらドアを開ける。


「ああ、おはよう」


俺はいつも通り用意された勇者専用の席へ行く。

そこのテーブルの周りにはいつも通りの勇者のパーティメンバーがいた。


「勇者様、おはようございます!」

「おはようございます!」


俺はシリィと一緒に専用席へ座る。


「おはよう、って今日は俺が最後か」

「ええ、珍しく今回はカインが早いんですよ」

「珍しくは余計だ」

「いつもならみんなを待たせた挙句に痺れ切らしたフェイドに叩き起こされてる癖に」


フェイドとはレストラン入り口に立ってドアを開けてくれたあの執事だ。


「いいだろ別に。今日はちゃんと起きてんだし」

「ふふふ、まあまあ。さてと、みんな揃ったことですしいただきますをしましょうか。ね、勇者様?」

「ああ、そうだな。ではみなさん、手を合わせて……いただきます!」


『いただきます!』


みんなで手を合わせた後、シリィが飲み物を聞く。


「今日はいかがいたしましょう?いつも通り温かいコーヒーでよろしいですか?」

「ああ、頼むよ」

「少々お待ち下さい」


そう言ってコーヒーの道具を後ろへ取りに行く。


少しするとシリィはドリップポッドを持ってきた。


ーータポタポタポ


カップに湯気が立ち込めるコーヒーを注いでいく。


「お待たせしました」

「サンキュ。じゃ、食べようか」

「はい、いただきます」


俺たちは朝食を取る。


ほとんどのレストランの人々は色々話しながら食べるスタイルをとっている。

しかし俺たちは黙って黙々と食べていき、食べた後に喋るスタイルをとっている。

俺たち勇者パーティ一行は普通の兵士では傷一つ付けられない強敵を相手にし、戦う者たちだ。

喋る暇があったらよく噛んで消化を良くする。

食事も仕事の一環なのさ。


しかしそんな風に静かに食べていると、ふと周りの声が耳に入って気になることもある。


「このステーキ、俺が切ってやるよ」

「自分で切れますのでお気になさらず」

「フォークとナイフ貸してみ」

「ちょっと、やめてください」


俺は思わずその方向をチラっと見てしまう。

幼馴染にして次期国王のマルスが聖女のステーキを切っていた。

またあいつは……何やってんだか。


「ほら、あーん」

「い、いいです!」

「いいじゃんか。ステーキ美味いぞ」

「ええ。でも自分で食べれますから大丈夫です」


聖女は王子からフォークとナイフを奪い返し、自分で切っては食べ始める。


「なんだよ……じゃあお前が俺に食べさせろよ」

「私はメイドじゃありません。もう私に構わないでください」


今日はテーブルに王女がいない。


幼馴染のマルスは第一王女と婚約をしており、マルスが婿入りする予定だ。

そのおかげでマルスは次期国王ということになっている。

王女の前だと大人しいのだがいない場ではやりたい放題。


マルスはいつも王女がいなくなるとこんな調子で聖女にちょっかいをかける。


マルスは聖女の肩に手をかけ、耳に唇を寄せて何かヒソヒソと話している。よく聞こえないがそれを聞いた途端、彼女の表情が強張る。


「な、嫌だろ?だから黙って俺に食わせろ」

「そんな無茶苦茶な……。申し訳ありませんがご期待に添えることはできません」


そう言った聖女は聖女らしくない食べ方で素早く食べるとそそくさと席を立った。


「ご馳走様でした」


ーースタスタスタ


「おい、待てよ!」

「おやめください、マルス様。皆様に注目されておりますぞ」

「チッ……」


マルスが呼び止めるが聖女は振り返ることはなかった。


それを見ていた俺とシリィは顔を合わせて苦笑いする。


「聖女も大変だな。最近ずっとあんな感じで言い寄られてるみたいだし」

「ええ、少し配慮に欠ける部分があると思います。耳元で何を囁かれていたのかも気になりますが、王女様というお方がありながら他の方にあの態度を取るのはいかがなものかと思います」

「俺も幼馴染として注意するべきかな?」

「周りの方々も口々に言っておられるにもかかわらず変わってませんので、無意味かと」

「そうか……」


俺はシリィの入れてくれた温かいコーヒーをすする。


「それよりこれからは魔物を討伐に行かれると聞きましたが」

「ああ、今日は森へ行く予定だ。魔獣たちが呪いにかかって凶暴化しているらしい」

「最近呪いって単語をよく聞きますね」

「ああ、流行っているらしい。魔獣たちは普段縄張りを中心として暮らしているが、呪いにかかると凶暴化して、村々を繋ぐ安全経路や村、町に襲いにくるらしい」

「それは困りますね。それが兵士達が相手にできないレベルの魔物だったら尚更です」

「ああ、それに人間も呪いにかかると凶暴化して収集がつかなくなるらしい。それで廃村になった村もある」

「でも呪われるには呪術をかけられる必要があるんですよね?どうしてそんなにたくさんの呪われる人が出るんですか?」

「その答えが今回の呪いの厄介なところだ。これまでは呪術をかけられるのは必須条件だった。しかし今回のはそれに加えて攻撃を受けるだけで呪いにかかる。特に直に触れると危険だ」

「勇者様は大丈夫なのですか?」

「まあな。ほとんどの相手の攻撃は回避できるし、俺たちはいつも討伐に行く前に聖女から加護を受けるから呪いにはかからないんだ」

「そうだったんですね。でもくれぐれも気をつけて下さい。相手は凶暴化した得体の知れない魔物です」

「ああ、わかってるよ。油断はしないさ」


俺たちは普通の兵士、冒険者では倒せないような強敵の討伐を任されている。

だから一瞬の気の緩みが命取りだ。

そこは重々承知しているつもりだ。


俺はコーヒーを一気に飲み干してキリッとした顔になった。


「じゃあそろそろ行くよ」

「かしこまりました。ではお着替えを用意して寝室にてお待ちしております」


シリィは着替えの準備をしてくれる。


さて、今日も帝国領の民の安全のために働くとしようか。

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