表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/47

地獄の番犬

どうしても気になる私は渋るセインと村の外の戦闘が激しい場所まで行ってみることにした。

この辺りでは見かけない珍しい魔法使いの冒険者が居るのか、明るい火の玉が上がったり、氷の刃が空気を切り裂く音も聞こえる。

(お姉さん、危険だよ。家に帰ろうよ)

「待って、もしかしたら私にも出来ることがあるかもしれないし」

(お姉さんみたいな人に出来ることなんて戦場にはないよ。僕、ディーノに怒られちゃう…)

「大丈夫だから」

(ぜんぜん大丈夫じゃないよ…お姉さん)


「おい。こんなところで何をしている?」

荒々しい声が響く。…混乱している村を狙った物取りだろうか、大きな荷物を背負って私を見下ろしている。

「おい。こいつドラゴン連れているぞ。しかも子供だ。高く売れそうだな」

仲間だろうか、もう1人が近づいてくる。

(お姉さんに近づくな!)

セインが男達を威嚇して喉から警戒音を鳴らす。


「セインに触らないで」

私はセインに覆いかぶさって抱きついた。私の好奇心のせいでこの子をひどい目に合わせたくない。

「この女も高く売れそうだ。おい。縄を持ってこい」

血の気が引いた。こんなことになるなんて。

ディーノに言われた通りもっと早く王都に行ってたら…。




(遅いよ。ディーノ)

「悪い。これでも最短だった」

聞こえて来た声にハッと顔を上げた。さっきの男達は倒れ伏していて顔が見えない。

「シャルロッテ、大丈夫かい?」

輝く金髪が闇夜を照り返す。明るい緑の目がすこし笑って私を見ていた。私は呆然としてその綺麗で余裕のある顔を見返した。

「ディーノさん…」


「こんなところで何をしていたんだ?それに村の近くにもケルベロスが居たようだが」

(いきなり現れたんだ。理由はわからない。お姉さんはすこし様子が気になるからと言ってここまで来たんだ)

セインはフンフンと鼻息荒く答えている。ちょっと私に怒っているみたい。

「シャルロッテ、君みたいな可愛い女の子がこんな所に自分から来るなんて自殺行為だよ」

「ごめんなさい…」

「僕は君が手紙をくれたから全部放り出してここまで来たのに…自分から危険に飛び込むなんて…いけないお姫様だな」

(ディーノ、もっと言ってあげた方が良いよ。お姉さん、自覚ないみたいだから)

セインは大きな尻尾をぺしぺしと私に当ててきた。くすぐったくてすこし笑ってしまう。


「可愛い笑顔が見られて良かったよ。手紙をもらった時は最悪の想像しか浮かばなかったから」

(もうすぐでその想像通りになるところだったよ)

「もうっ、セインごめんなさい」

ぎゅっと冷たい体に抱きつくと硬質な鱗が気持ちよかった。

「それ、僕にもやってくれる流れかな?」

「しませんよっ」

私はディーノの顔を見上げて言った。含みのない爽やかな笑顔が憎らしい。


(おい、ケルベロスは?)

セインが不思議そうに言った。そういえば冒険者達が死闘を繰り広げていたはずだ。

「ん?もう終わったよ」

なんでもないことのようにディーノは言った。

(さすがはディーノだね。聖剣ラグナログで一閃?)

「まあな」

軽く言って黒衣の勇者は薄く笑った。その姿はまるで魔界からの使者のようだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
::::::୨୧::::::::::୨୧:::::::::::新発売作品リンク::::::::::୨୧::::::::::୨୧::::::

【8/22発売】
i945962
婚約者が病弱な妹に恋をしたので、家を出ます。
私は護衛騎士と幸せになってもいいですよね


i945962
溺愛策士な護衛騎士は純粋培養令嬢に意地悪したい。
ストーリアダッシュ連載版 第1話


【6/5発売】
i945962
素直になれない雪乙女は眠れる竜騎士に甘くとかされる
(BKブックスf)
★シーモアのみ電子書籍先行配信作品ページ
※コミックシーモア様にて9/12よりコミカライズ連載先行開始。

:::୨୧::::::::::୨୧:::::::::::コミカライズWeb連載中::::::::::୨୧::::::::::୨୧::::

MAGCOMI「ひとりぼっちの花娘は檻の中の竜騎士に恋願う

:::୨୧::::::::::୨୧:::::::::::作品ご購入リンク::::::::::୨୧::::::::::୨୧::::

【電子書籍】婚約者が病弱な妹に恋をしたので、家を出ます。
私は護衛騎士と幸せになってもいいですよね


【紙書籍】「素直になれない雪乙女は眠れる竜騎士に甘くとかされる

【紙書籍】「ひとりぼっちの花娘は檻の中の竜騎士に恋願う3巻

【紙書籍】「ひとりぼっちの花娘は檻の中の竜騎士に恋願う2巻

【紙書籍】「ひとりぼっちの花娘は檻の中の竜騎士に恋願う

【コミック】ひとりぼっちの花娘は檻の中の竜騎士に恋願う THE COMIC

【紙書籍】「急募:俺と結婚してください!」の
看板を掲げる勇者様と結婚したら、
溺愛されることになりました


【電子書籍】私が婚約破棄してあげた王子様は、未だに傷心中のようです。
~貴方にはもうすぐ運命の人が現れるので、悪役令嬢の私に執着しないでください!~


【短編コミカライズ】今夜中に婚約破棄してもらわナイト

【短編コミカライズ】婚約破棄、したいです!
〜大好きな王子様の幸せのために、見事フラれてみせましょう〜


【短編コミカライズ】断罪不可避の悪役令嬢、純愛騎士の腕の中に墜つ。

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ