聖女になる
「聖女になる?どういうことだ?シャルロッテ」
ディーノは眉根を寄せながら言った。
「…あの、私もルクレツィアさんのように病を癒したり、怪我を治せるようになれるなら、なってみたい…です」
若草色の強い目に思わず目を伏せてしまう。
「…うん、僕は良いことだと思うけどな。その力を活かすようにするって言うのは良いことだよ。シャルロッテ」
(アレクは関係ないだろ?話入ってくるなよな)
「…シャルロッテ、修行なんてしなくて良い。何か要る物があるならなんでも僕が用意するから」
「そういうのがして欲しいわけじゃないんです。私、もっと自分に自信を持ちたくて…」
(そうだよ、ディーノ。お姉さんはお前のためにも聖女になるって…いたたた、お姉さんひどいよ。ドラゴンの口はデリケートなんだから)
「僕のため?…どういうことだ?」
本当に不思議そうに聞いてくる。
「あのっ、別にディーノさんのためなんかじゃないんですけど、勇者と一緒に居るんなら聖女の方が良いんじゃないかなって思っただけなんです。それだけです」
「うわ、シャルロッテ、可愛いなあ。こんな朴念仁じゃなくて僕にしない?」
(だから、お前が入ってくるとややこしいから黙れよ、蝋燭野郎)
みるみる顔を赤くした私を2人と1匹はまじまじと見てきた。
「…うん。そうか。わかった。少しの間会えないかもしれないけど、シャルロッテがそう言うなら僕も我慢する。…でも約束して欲しい、聖女になれてもなれなくても、修行を終えたら僕の元に戻ること。良いね?」
「ええっと、わかりました」
私が頷いた。
「…セインはどうする?」
(僕はお姉さんと一緒に居る。心配だし、何より神殿でアレクの魔の手から守らなきゃいけない)
「…セインは何か勘違いしているようだが?僕は魔の手なんて持ってないよ」
(なんだよ、絶対お姉さんには指一本触れさせないぞ)
「そうだな。ジークやヴィクトリアにも悪いことをするが、シャルロッテもセインと一緒の方が安心だろう」
私は頷いた。その通りだったからだ。
「じゃあ、用意の時間も要るだろうから、僕は一度城に帰るよ。その後に戻ってこよう。…ラナトーンは神殿の総本山だからね。君が頑張って修行すればディーノにも会う機会も早いだろう。聖女候補のシャルロッテ、君を歓迎するよ」
アレクは一度礼を取ると、光の中去っていった。