対決
「…お前の口を閉じればそれで済むのならそうするか」
ディーノが私を後ろへと手を引くと、光が右手に宿って剣が現れた。
「すごい」
思わず口に出してしまう。
(お姉さんビックリした?あれ、聖剣ラグナログだよ。勇者の証だ)
セインがペタペタと寄ってくる。
「僕の口を封じたらそうだな、確かに上手くいくかもしれないが…本気か?僕とやり合えば君でも無傷では済まないだろう」
「やってみないとわからないな、ギリギリまで生命力を削って封印してやるから安心しろ。気が向いたら出してやるさ。何百年か後、にだけどな」
アレクはふうん?ともの言いたげな顔をすると右手を振って白い剣を出した。そこも白にこだわるんだな、なんて変な感想を持ったりもした。
大きな陶器が割れるような音がすると、それは始まった。
ディーノはその場から動かない。
大きな黒竜は私のセインの元に寄ると翼を広げて包むようにした。何か視界に色がついたような気がしたからきっと結界も張られたんだろう。
断続的に大きな音が聞こえてくる。ディーノは涼しい顔をして姿の見えないアレクと打ち合っているようだ。あの白い服に血がつかないとは、なるほど、速さがあまりに素早すぎて血がつく前にその場からいなくなることも可能だろう。
「ねえ、セイン」
(どうしたの、お姉さん)
「怖いわ、怪我したりしないかしら」
私はその姿をハラハラしながら見守った。
(ケガはすると思うよ、デイーノもアレクも元々超一流の冒険者だし、どちらも無傷では終わらないと思う)
「そんな…こんなことで、ダメよ」
(こんなことだなんて、お姉さんを渡したくないから、ディーノは戦っているんだよ)
「そんな…私が聖女なんて…」
(聖竜の血を引いているなら当たり前だよ。浄化の力はその辺の人間にどこかの神の加護があるくらいじゃ追いつかないくらいあるはずだ。ただ、すこし修行は必要だとは思うけど)
「待って…私が聖女になりたいって言ったら?」
(は?何言ってるの、お姉さん!)
「ケガしたり、病気している人を浄化出来るならそうなりたいの。…お父さんを見てて、何も出来ない自分が辛かった、ルクレツィアさんのようになれるのなら頑張ってみたい。…それに…」
ディーノの隣が似合うようになるかもしれない。
私は顔が熱くなった。あの人と関わるといつもこんな風だ。変な事ばっかり言うのに。
(…ははーあ、お姉さん、そういうことだね?わかったよ。僕も協力するよ)
「…う、ん、ありがとう。セイン」
ちびドラゴンはすうっと息を吸うと大きな思念の声を出して言った。
(2人ともー!やめやめー!お姉さんから発表がありますー!)




