向かい合う
ディーノさんは私の腰あたりを持つと、体を持ち上げてくるんと半回転させた。いきなりの不安定な格好に、慌てて彼の肩に手をかける。
「ディーノさん…?」
驚きながら間近にいる端正な顔を見上げる。
「あのままだと顔が見えなかったから」
「…恥ずかしいです」
「あのままだと涙も拭えないだろう?話が終わるまではこうしていようか」
「も、もうお話も終わりました」
「いや?」
「ディーノさんっ」
ディーノさんはとんとんと子供をあやすように私の背中を叩いた。
「シャルロッテ、落ち着いて」
「落ち着いてます」
「落ち着いてない人は皆そう言うんだよ」
今まで背後にあった顔が向き合ってしまうとなんだか落ち着かない。
ディーノの優しい目も、細められたままだ。
「もし、僕と君が付き合うことになったら」
「え?」
「の、話をしようか?」
「ディーノさん?」
「一先ずは君を連れて南の島に行こう。ラナトーンの近くなんだ。小さいけど砂浜もあるよ、きっと気に入ってくれると思う。そこで2人くらい子供が出来るまで過ごして」
「あの、」
「どうしたの?」
「話が早くないですか?」
「もっと詳しく説明した方が良かったかな?」
私はすこし色気のある目をしたディーノさんにぶんぶんと首を振った。
「はは、そうだろうな。そこで子供が出来てから君にはジークの嫁のヴィクトリアと契約してもらう」
「どうしてですか?」
「君には僕と同じ寿命でいて欲しいからね。もうヴィクトリアの了承は得ているよ」
「これはもしもの話なんですけど…」
「何?」
「なんで子供が出来てからなんですか?」
「不老になると、体の時が一定で止まってしまうんだ。だから、女性は子供が作れなくなるらしいね」
「あ、10か月かかるから、か」
うん、とディーノは頷きながら言った。
「子供は欲しいからね」
「意外でした」
「なにが?」
「ディーノさんて冒険と魔物退治しか興味ないって言ってたから」
「それと、君だ。シャルロッテ。君そっくりの子供が欲しい」
「…ディーノさんは…」
「何?シャルロッテ」
「なんで、私なんですか?綺麗な王女様や美しい聖女様だって居たのに…」
「僕が見て君が世界一可愛いからだ。それ以外ない」
私は真っ赤になった顔を見られないように彼の胸元に顔を隠した。