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私に出来ること

「無理だよ」

あっさりと普通のそこらへんに居る少年のような姿をした古の魔法使いは言った。こう言ってはなんだけど、庶民でも下層、スラムで生活しているような服を着た男の子だ。でも茶色い髪には櫛が通っていて服もきちんと洗濯されている清潔感はあるけれど。

あの後、近くにある神殿へと場所を変えて大きな広間でバルトロは召喚の術を使い、魔法使いはそれに応えたのだ。

「エイブラハム、そう言わないでください。私はこの子を殺さなければならなくなる」

サラッとバルトロは恐ろしいことを言った。


「相変わらずの馬鹿具合だな。本当にお前がこの娘を殺せると思うのか」

ふんと小馬鹿にしたように小さく嘲った。

「何を?」

(エイブラハム、このお姉さんを殺したらディーノが激怒するぞ)

おや、と目を眇めてエイブラハムは笑う。

「セイン、大きくなったな。元気だったか」

(どいつもこいつも久しぶりに会った親戚みたいでうんざりするよ…こんな状況なのわかってるの?)

本当にうんざりした様子でセインは顔を下げた。


「僕は若造とはいえ勇者にも喧嘩を売りたくないし、竜の加護を受けた娘も害する気はない。諦めるんだな、バルトロ」

「…貴方の大好きなお金ならいくらでも支払いますが」

古の魔法使いはお金が大好きなんだ…。

「お金で命は買えないな」

「…珍しいですね。貴方がそんな#良心的な__・__#事を言うとは思いませんでした」

「本当に馬鹿なんだな。お前は。僕は自分の命を失いたくないと言っているんだ」

「あなたの命が?…こんななんでもない村娘になんの価値があると言うんですか」

バルトロは眉間に皺を寄せた。

(バルトロ、お前本当に最低だよ)

セインは吐き捨てるように言った。

「さあね。それがわからないのか。ルクレツィアもお前も、本当に馬鹿が揃って見るに堪えないな…」


「あのっ」

私は勇気を出して言った。その場にいる人たちの視線が集まる。

「私にある竜の加護はどんな力があるんですか?」

エイブラハムは面白そうに口にした。

「…君には竜の血が流れている。奴らは数が少ないだけあって同胞殺しには敏感だ。もし君を殺したらこの国は焼け野原になるんだろうな。まあそこの馬鹿には君の加護を破ることも不可能だろうが」

(えっ?お姉さんが?…僕と一緒の血ってこと?)

「そうだ。セイン。しかも、絶滅した聖竜の血だ。彼女を故意に亡くせば竜族の怒り凄まじく、人間が滅びても不思議ではないだろうな」

淡々とエイブラハムは言った。

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