条件
「…ディーノにもう近づかないで。そのドラゴンが原因だと言うのなら一緒に連れて出て行って」
(は?何言ってるんだよ。そんなの無理に決まっているだろう?)
「…セインの父親のジークフリートがなんて言うか、皆で話し合わないと無理だわ」
私の言葉にふん、と息をついた。
「そう、そちらの事情はどうでも良いのよ。私はディーノの傍にあなたが居るのが気に食わないだけ」
「…わかりました。またお返事は後日させて頂きます」
(お姉さん…)
「良いのよ、セイン。とりあえず最善を考えましょう」
ぺたぺた、と足音をさせてセインは私の後をついてきた。ルクレツィアさんは颯爽と馬車に乗り込み去って行って、私とセインは無言で廊下を歩いている。
「シャルロッテ様」
「ルカリオ」
小柄な黒髪の執事に呼び止められる。
「あの、シャルロッテ様にお手紙が届いています」
「私に?」
彼の手から一通の手紙を取る。アレクからだ。
「…ディーノ様には?」
「言わなくて良いわ。忙しいと思うし」
言いながら手紙を広げる。とりあえず持ってまわった言い方を除くと、都合が許す限りすぐに会いたい、とのことだった。
(お姉さん?)
「アレクさんが会いたいって言ってるけど、あなたも来る?」
(もちろんだよ!なんで僕を置いていく選択肢があるの?)
慌ててセインは飛び上がった。
「急いで準備しましょう。彼にもルクレツィアさんのことを言っておいた方が良いわ」
「それは、そうか、ルクレツィアがね…」
そう言うと白衣の騎士、アレクは絶句したように俯いた。
(でも、到底受けられる条件じゃない。どうすれば条件を受けずに場所だけ聞き出せると思う?)
うーん、とアレクはため息を落とす。
「…難しい質問だな。あいつはディーノのことになると見境ないからそれを逆手に取れば…」
「えっと、アレクさんが今回呼び出した件というのは?」
「そうか、悪い。君達の話にあまりにも驚いて忘れてしまっていたよ。…それに似た話だ。…セインの竜玉を盾に王女クラリスがまたディーノに婚約を迫っているらしい」
(え?なんだよ!それ!)
「とにかく、事態は混迷して来たな…どちらにしても、僕達の力ではどうにもならなくなる前に何か策を考えたかったんだが…」
「ディーノさんにこの事を話すのは?」
「そうだな、もう話してしまうか。ルクレツィアの件でもあいつが考えたら何か良い案が浮かぶかもしれないしな」
どこか疲れた表情でアレクは言った。
(ディーノは父さんと居るはずだから、多分城に居ると思う。あっちから気配がする)
「どうする?待つか、こちらから行くか」
私はすこし考えて言った。
「行きます。時間が惜しいもの」




