聖女の勘
私は元気のないちびドラゴンと一緒に王都の屋敷に帰ってきた。しゅんとしてしまった尻尾は垂れ下がったままだ。
(ねえ、お姉さん。僕いなくなった方が良いのかな…)
「もう、何言ってるの。あなたが居なくなったら皆悲しむわ。…もちろん私もよ、セイン」
(このままだとディーノはこの国の王の奴隷だ。僕はなんとかしたい…出来ないかな?)
「そうね…なんとかしたいけど、どうかな…」
「ねえ、ちょっと」
(げ、また聖女だ。あの人暇だよね…今日は何しに来たんだろう?)
「こんにちは、ルクレツィアさん」
私は頭を下げて挨拶をした。向こうは腕組みをして不満顔だ。
「ディーノはどこに居るの」
確か今日は朝からジークフリートと出かけていたはずだ。
「えっと…お仕事みたいですね?」
「知らないなら、用はないわ」
すげなく言うと身を翻す。数歩行かないうちにこちらを振り返った。
「ねえ、貴方達、さっきまで王城に居た?」
私はセインと顔を見合わせた。
「いいえ、郊外に出ていました」
ふーん、と興味なさそうに頷くと、セインを見て言った。
「この子の兄弟でも連れて出ているのかしら。クラリスの所に?早く行かなくちゃ」
ぶつぶつと呟くとまた足音もなく去っていく。
「…セイン」
(何、お姉さん)
「あなたって兄弟居るの?」
ちらっと下にいる赤いちびドラゴンを見る。
(僕が生まれた時は卵はひとつだったみたいだよ)
「ねえ、セイン…」
(僕、お姉さんの言いたいことなんとなくわかるよ)
「…ルクレツィアさんは聖女だから」
(僕の竜玉の在り処も分かるかもしれないってことだよね?)
「そうよ、急いで追いかけましょう!」
「なにそれ」
私とセインは今にも馬車に乗ろうとしていたルクレツィアさんを捕まえた。
「お願いします。とても重要なことなんです」
「…ふーん、確かにこの子の生命エネルギーの感じるところならなんとなくわかるわ」
(教えてよ!もしかしたら僕の竜玉があるところかもしれないんだ!)
ルクレツィアさんは私とセインの顔を交互に見やると魅惑的な笑みで微笑んだ。
「教えてあげないこともないわよ?」
「教えてください。お願いします」
「私の条件が聞けるなら、教えてあげても構わないわよ」
腕組みをして、満足そうに微笑んだ。