竜玉
「あの…」
私は視線が集まるのを感じながら気まずくなる。
「竜玉って、何ですか?」
ふふっとアレクは笑った。
「今までドラゴンと縁遠かった君に分からなくても当然だよ。竜玉はドラゴンの生命力を閉じ込めている、言わば心臓部分に近いな」
「…あの、どうしてそんなものが、外部に?」
「さてね、どうにかして、としか言えないが。何せこの国の王はそれを使ってディーノを思う通りに使っているのは間違いない」
「アレクさんはそれを取り戻す手伝いを?」
彼はうん、と頷いた。
「情報収集かな、どこにそれがあるのかを探っている、後誰が持ち出したか、についてもね」
(…どうして)
「セイン…」
私は今まで言葉を無くしていたちびドラゴンを見下ろした。
(だから、お前が屋敷に入ることを黙認していたんだな…だから、お前があんなに気に入っているお姉さんを連れ出しても強くは言わなかったんだ…だから…)
「セイン、彼は君のことを自分の子のように感じているのは事実だ、大事だからこそ今まで言わなかったんだろう」
(そんな…)
項垂れたちびドラゴンを見ると胸が痛くなる。家族に大事なことを隠されていたのと、大事な人が自分のために犠牲になっているのが、辛くてやるせないのだろう。
「まぁ、僕は僕から聞いたと言ってもらっても構わない。契約には違えてないからね」
「…その、竜玉を取り返す仕事の進捗なんかは?」
「それは言えないな。流石に彼に殺されそうだ」
「そうですか…」
私も項垂れてしまう。何か、出来ないだろうか。
「君達は何も知らなかったふりをするのが1番良いと思うけどね。ディーノも流石に気恥ずかしいんじゃないかな」
(格好つけて、バカみたいだ。あいつ)
「セイン…」
「セイン、そう言うな。だからと言ってお前が知ってしまってどうする?あいつが使われる度に罪の意識に苛まれるだけだよ、僕が今ここで言わなくても、だ」
(父さんと母さんは知っているんだな)
「もちろんだ。お前のために身を投げ出して守ってくれているあいつに、どこまでも感謝しているよ」
(ひどいよ…)
ボロンボロン、と大きな涙が落ちる。
ちびドラゴンは、しゅんとしてその体まで小さくなっているかのようだった。