内実
アレクはふーん、と呟くと面白そうに笑った。
「そうだね。…君達は何も知らないのかい?」
私はセインと顔を見合わせてからうんうんと頷いた。
「そうか…僕が言っても良いのかな…これは契約には含まれていないからね。どうしようかな。不利になるようなことはするな、とは言われているけどね」
ふふ、と楽しそうだ。私とセインはもう一度顔を見合わせた。
(アレク、もったいぶるなよ)
焦れたようにちびドラゴンは言った。私も同じ思いだ。話せるのなら、話してほしい。
「勿体ぶりたくもなるさ。勇者ディーノでも、どうにもならないことを僕は頼まれている」
顔の前で指を組んで本当に楽しそう。茶色い目も好戦的に輝いている。
(…ディーノでもどうにもならない?どういうことだよ)
「そのままの意味だよ。セイン」
(嘘だ。お前とディーノ、その力は互角、だから…並んで称されるんだ)
「そういう意味じゃない。ディーノは大事なものを今失っているんだ。それは君にも関係ある」
(僕にも…?僕に関係あるって…なんで?)
セインは今にも泣き出しそうだ。私はそっと頭に手をやると意を決して言った。
「アレクさん、お願いします。教えて頂けませんか」
「…君はそれについてどんな代償を払える?」
(アレク!お前!)
シャーっと威嚇する音を出す。アレクはそれでも笑顔を崩さず楽しそうだ。
「…私に出来ることなら。アレクさん」
アレクは器用に片方だけ眉を上げると言った。
「そんなこと言っても良いの?」
「私はアレクさんを信じます」
強い茶色の目の強い視線に思わず負けそうになりながらきっぱりと言う。
「おや、そうだね。騎士である僕が要求出来ることは限られているか…シャルロッテ、その言葉忘れないでね」
「はい」
「…ディーノは親友であるジークフリートの息子、セインの竜玉を王に握られている。だから逆らわないし、国政にも、極力協力をしている」
竜玉?
(なんだよ!なんだよ!それ!)
「事実だ。セイン。彼は君を守るために自分を犠牲にしている」
アレクは静かに言った。