恋心の行方
「じゃあ、出かけてくるよ。ルカリオ、怪しい不審者はもう入れるなよ」
「御意」
敬礼するルカリオを見てからディーノはこちらを見て会釈すると黒竜ジークフリートに乗って出かけて行った。
(自分で仕事頼んでいたんだから帰りを待たれるのもしょうがないよね。ルカリオ悪くないと僕は思う)
お姉さん、どう思う?とちびドラゴンは言った。
「そうね。でもディーノさん、すごくあの人のこと意識しているみたいね。過去に何かあったの?」
(意識しているのは向こうだよ。何かあるとディーノに対抗意識を出してくるからうっとおしいんだ。今回ディーノがイラついてるのはお姉さんが絡んでいるからだと思うよ)
「そんなものかしら」
黒の勇者と白の騎士。ますます物語の中での出来事みたいだ。
「あら」
「ルクレツィア様、この間はありがとうございます」
突然屋敷の廊下に現れた聖女に礼をする。
「ただの村娘が服を変えると見られるようになれるものね。…あなた、ディーノに手を出してないでしょうね」
「ええ。全く」
ルクレツィアは勢いを削がれたみたいに一度黙り込むと言った。
「…まあ良いわ。ディーノは本当にいないの?」
「ええ、今日は朝からお出かけだったみたいですけど」
「本当に?約束していたのにどうしたのかしら。良いわ。ディーノが帰ってきたら、私に連絡するように言って頂戴」
つんと言い捨てると去っていく。
(さっそく怪しい不審者入り込んでるね…お姉さん)
ずっと黙って隣に居たセインが言った。
「約束していたみたいだもの、ディーノさん忘れちゃってたのかな?」
(まあ、ディーノはまったく相手にしてないからね。…約束していても忘れるのはいつものことだよ。ひどい男だよね)
「確かにそうね。ルクレツィアさんはディーノさんのことをそれでも好きなんだからどうしようもないわ」
(僕にはわからないよ。こどもだからかもしれないけど、想ったら想われたいと思うものだ。お姉さんはそうじゃない?)
「いえ、そうね。好きな人には想われたいと思うわ…ルクレツィアさんは少しでも希望があるならずっと捨てられないのよ。…私もきっとそうだもの…」
(お姉さん…?)
ふふっと笑ってちびドラゴンに言った。
「さあ、今日は何を作ろうかしら?手伝ってくれる?」
(うん!)
ぴょん、と大きな尻尾が揺れた。