三話 勇者の心境
中二病を患っている妹から没収したローブを出来心で羽織っただけなのに、急に意識が遠のいて気がついたら森の中なんて。
いったいどういうことなのよ!!!
高校から帰ってきて、その足で妹の奇行をやめさせるべく奮闘した後。
やっと自分の部屋に戻れた矢先、どんな気持ちなのかとふと思いさっきまで妹が着ていたローブを羽織った過去の私を責めたい。
そう思いながらも、今は私がどこにいるのか、どうやったら家に帰れるかという点が大事よねと現実に目を向ける。
辺りを見回していたが、特に目につくものはなく。木々が生い茂っているだけ、それよりも自分の格好に辟易としている。
妹の怪しげな黒いローブとまだ、袖を通してから一月も経っていない真新しい高校の制服。
紺のジャケットに白のブラウス、ジャケットに合わせた色合いをベースにしたチェック柄のスカート。そして、黒のニーソに包まれた自らの足を見つつ、室内用のもこもこスリッパで地面を踏みしめている。
あぁどうかこれが夢であってほしいな。
とりあえず、目をつむり再び目を開けるともう一度辺りを見回す。
うん、森の中のままね。
はぁ、中二病の妹が密かに書いていた小説「ゼムシス記」もこんな感じでいきなり知らない場所に飛ばされた主人公(妹)が冒険するような話しだったけれど、まさか、ね?
小説ならどこかの地下で召喚され、そのまま異世界の国の保護を受けながら生活しつつ、訓練し勇者として旅に出るという流れだったけれど。
私が置かれている状況は似ているけれど違う部分が多い。それに戦う力なんて私は持っていない。
周りに人がいないことから私は勇者ではなく、ただ単に迷いこんだだけなのではという考えがよぎり、青ざめる。
そんな重い思考を払拭するべく、森を脱出して誰かに助けてもらおうそこからね!と自らを奮い立たせ、歩き始める。もこもこスリッパで