瀬羽屋 きな子
どうも皆さん。
私は瀬羽屋 きな子と申します。
何処にでも居るような高校二年生の女子ですが。一応、容姿の方を説明させていただきます。
髪型は黒髪のポニーテールで、前髪の両サイドを黒い髪留めで留めています。顔の方は少し細長で目は細く、目が悪いので黒縁の四角い眼鏡を掛けています。服装の方は、帰宅途中なので学校指定の白いセーラー服です。
以上が私の容姿であり、あとは皆様のご想像にお任せします。
それで前述の通り、学校終わりに帰宅しているのですが、ここで唐草模様の風呂敷の大荷物を背負って、息を荒げているベタなお婆さんが現れました。
ここで私の導きだした行動は、代わりに荷物を持って、お婆さんの自宅まで歩いてあげるですが、ほんとうに大きな風呂敷荷物なので、これは気を引き締めて取り掛からなければならない案件ですね。世話焼き女の血が滾ります。
と、人の目も憚らずに準備運動を始めた私ですが、ここで見知った顔が現れて、私より先にお婆さんに声を掛けました。
「お婆ちゃん大丈夫?荷物、俺が代わりに持ってあげようか?」
190センチの大柄な巨体にボサボサ頭、あと決して悪く言うワケでは無いのですが、少し目付きが悪いですかね。でも凄く普段から優しいんですよ。まぁ、とにかくそんな私のクラスメートである学生服姿の大熊 小太郎君が現れたのです。
「えっ、そんな悪いから良いよ。」
「ダメダメ、無理したら体が悪くなっちゃうよ。遠慮は要らないよ。俺、暇なんだ。」
大熊君は半ば強引に風呂敷荷物をお婆ちゃんから受け取り、右手だけで荷物を簡単に持つものだから、実は風呂敷荷物は軽かったのではないか?説が浮上しました。しかし、ココで親切丁寧なお婆さんの説明が入ります。
「えぇ!!五キロのダンベルが10個も入ってるのに片手で大丈夫なのかい!?」
・・・五キロのダンベル10個?一体何に使うのでしょう?少し話を脱線させてでも謎を追求したい気分ですが、ここはグッと堪えましょう。
それにしても片手で50キロを軽々しく持ち上げるなんて、大熊君恐るべしです。
「軽い、軽い。家ではコレの倍を持ち上げてるよ。」
100キロを?大熊君は規格外過ぎます。
そのあと、お婆さんと大熊君を追って歩くこと15分。西洋風の大きな屋敷にたどり着き、お婆さんは何度も大熊君に頭を下げて、風呂敷を担いで家に入っていきました。
すると大熊君は歩いて、その場を立ち去ろうとしたので、私は思わず声を掛けました。
「大熊君。」
「あっ、瀬羽屋さん・・・どうも。」
うーん、クラスメート相手に目を反らす、大熊君は相変わらずの人見知りですね。ここはちょっと私が大胆になりますかね。
「ここで会ったのも何かの縁です。ファミレスでも行って、お話ししませんか?」
「えっ、あの、その・・・。」
「行きましょう!!」
私は大熊君に言いたいことがあったので、半ば無理矢理にファミレスに連れて行きました。
ファミレスに着いて中に入ると、私たちは適当に窓際のソファーの席に向かい合うように座り、私はブラックコーヒー、大熊君はホットココアを頼みました。あぁ、甘いの好きなんだ。
「あの・・・それで話って?」
むぅ、いざ相対すると、やはり190cmの巨体は迫力がありますね。でもそんなことに臆してもいられません。
「大熊君、もっと自分のやった善行をアピールすべきです。そうすれば、もっとクラスメートもアナタに好意的になると思いますよ。」
私は、かねてより大熊君の様な優しい人が、少しばかり怖い外見のためにクラスメートから怖がられてしまうのは、納得がいかなかったのです。
「いや・・・別に俺は。」
「いや、いやいやいや・・・学校に早く来て皆の机を掃除したり、小鳥達に自分の御飯を米粒の最後の一粒まであげたり、授業中に隣で寝ている人の代わりにノートをとってあげたり、もうマジ天使ですよ。」
あとは皆でハイキング行った時に本物の熊が出て、それにいち早く気づいて人知れず戦ってました。大熊 対 本物の熊は見応え充分でした。
「俺のこと、そんなによく見ててくれたの?」
「えぇ、結構な頻度で見てました。」
大熊君、私にとったらメチャメチャ目立ちますから。
「それって、俺のこと好きってこと?」
・・・はいっ?今この人なんて言いました?
「いや、冗談・・・だからそんなに顔赤くしなくて良いから。」
「な、何言ってるんですか!!赤くなんてなってません!!」
「ご、ごめん・・・なさい。」
ゆ、油断してました。まさか大熊君がこんなことを言い出すなんて、思わず取り乱してしまいました。
「い、いえ、別に怒ってるわけでは無いんです。ただ少し驚いただけです。」
なんだか妙な感じになってしまいました。二人の間に妙な緊張感が出来てしまい、非常に気マズいです。
「あの、俺、もう帰らないと・・・」
「あっ、は、はい、長々と拘束してすいません。」
大熊君は立ち上がり、自分の飲んだココア代だけを置いて店を出て行こうとします。結局私の意図は大熊君には伝わらなかったかもしれませんが、またの機会にでも・・・。
「あの。」
「わっ!!」
帰ったかと思った大熊君が、いつの間にか私の目の前にいてビックリです。
「わ、忘れ物ですか?」
「いや、その、あの。」
「ん?」
何故かドギマギしている大熊君。一体どうしたんでしょう。
「きょ、今日は俺・・・瀬羽屋さんと、お話出来て嬉しかったんだ。今度は俺から誘っても良いかな?」
「えっ、あっ、はいっ、いつでも御誘い下さい。」
なんだか予想外な展開になりましたが、なんだか私も嬉しいので、一件落着でしょうか?