表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/12

6

紅の結界の中心。

そこには結界の基点が有る。

レイが作り上げたそれは、まるで樹木であった。

レイもそれを"賢者の樹(セフィロト)"と名付けた。


紅い六角柱は幹のようで、それからは樹液のように絶えず水が滴り、上方は枝葉のように風と火が踊る。幹を支える根のようにあらゆる貴金属が六角柱に絡み付く。


本体は勿論、高さ10m程の六角柱。賢者の石とも呼ばれる材質の紅い柱こそが広大な範囲を覆っている結界を作り出す。


初めは、一辺1cm、高さ10cmの小さな小さな血晶だった。それに、レイが毎日血を注ぎ、六角柱は成長した。結界も少しずつ少しずつ大きくなり最初に作った結界を越えて、今では元の樹界の範囲にまで育ったので強度を上げている。

レイが作ったそれは、成長する魔道具だった。


「体積にして26,000L……。200年ならこんなモノか」

レイは引きこもってひたすらボーッと生きてきた。気がついたら200年。まあ、100年や200年はレイにとって短い。人間の生で2回分しかない。


一応、毎日()やりして植物(結界)を育ててきただけじゃない。

ペットを飼ってみたり、家を建ててみたり、独りだがスローライフ?を満喫していた。


いっそ、人間もペットとして割り切って考えれば楽かもしれない。

レイはペットにもたれかかり、その艶々としたひんやりしながらも確かな熱を持つ体を撫でつつ、そう考えた。

「クルルルル……」

「シッ!」


「はいはい。フーもちゃんと撫でてあげる」

「シャァ」

「ヒイは今撫でたじゃない。順番」

「クルルルル」


くるる、とコロコロとした澄んだ音で甘えるのは2体の"羽毛もつ蛇(ククルカン)"である。鳥の翼を持った蛇の姿である。ヒイと名付けられた白い個体と、フーと名付けられた一回り大きい緑の個体。どちらも光の加減で虹色に見える。

どちらも体はレイを丸呑み出来る程大きく、恐ろしいがレイはただの甘えん坊なペットに見えているらしい。

因みに近々ヒイは父親に、フーは母親になる。


魔界となったこの場所では最強種族()の一種とされるククルカンでも、一番強いとは言えない。と言うか真実、羽もつ蜥蜴なドラゴン()が魔界の一角を縄張りにしている。

最初にうっかりレイに襲いかかったヒイやフーは、その振動や熱感知によって番犬ならぬ番竜として可愛がられていた。


「今日は"家"の質を引き上げようか」

今現在、家は一つの魔道具として存在していた。セフィロトを中心に六角に囲む形の家は魔方陣でもあり、セフィロトを守り隠す。家の外からはセフィロトは見えず、セフィロトには負けるが建物を含めて攻撃しようとしても阻む結界を作る。

後は、細々とした建物を保つ保守の効果や、汚れを消す清潔の効果が有る。


賢者の石やそれに連なるモノを核とした魔道具、現状レイとセフィロトのみ、は自然から魔力を吸収して半永久的に動くが"家"はそうではないので、レイが魔力を補給するか、魔石を追加する必要が有る。

今回、レイはその魔力効率の質を上げようと考えた。


「ん~。魔力効率を上げるだけなら『移動』や『流れ』を司る水属性メインか……いや、『安定』や『守護』の土も。そもそも家に向いてるのは土……。効果が落ちても意味無いしなあ」

「シュルルルル……」

「ん?どうしたの、ヒイ?」


レイはその日も平和に過ごした。












フェルナン帝国


「陛下、第7防衛都市から連絡です」

「言え」

魔物敗走(スタンピード)、規模二百、種類は小型の獣、主は大岩猪(ビックロックボア)。鎮圧終了。死者5、ポーション類が不足。『肉祭りだぜ!』……と」

「……」


約200年前に魔王が現れてから、ただ広いだけの森林地帯だった場所は魔物の楽園、魔界となる。大陸の西側に位置する魔界に対し人間は防衛都市を築く。

第7防衛都市はフェルナン帝国内には5ヵ所有る防衛都市の一つだ。5ヵ所しかないのに第7なのは、他国の都市も含めた魔界から人間の領域を守る都市に通して付けられた番号だからだ。


それほどまでに真剣に、人間同士が協力しあい守らねばあっという間に魔界から溢れ出る魔物に飲まれるのだ。ここ百年は拮抗しているが、樹界だった頃に比べ魔界の方が広い。

結界は幸い樹界の範囲までしか広がらなかったが、縄張り争いに負けた魔物が敗走、そのまま別の場所に縄張りを構築しようとする。この魔物の敗走をスタンピードと呼び、時にその勢いは人間の街を襲うのだ。


防衛都市は半分、魔物討伐専門であるギルドが治めているようなモノで、様々な特権も持つ。

今回、フェルナン帝国に報告が上げられたが、帝国として出来る事は安全な東大陸で作られるポーションの税を更に安くする事だけ。防衛都市は強い魔物と戦う、つまり質の良い素材が得られる地である為、物価も高く税収自体は悪くない。

因みに、死者が居て負傷者が居ないのは、ポーションのお蔭だ。余程、酷い事にならなければ怪我は完治する。治しきれなくて片腕、何てのはざらに有るがやはり死者よりも少ない。


「我が国の防衛都市は1、6、7、13、15か。7は優秀だな……13を支援させるべきか」

皇帝が呟く。執務室には皇帝と秘書官達、幾人もの人がいる。

そのうち一人のヒトが口を開く。この場においてのみ秘書官は皇帝に意見する事が出来る。いくら国のトップに立つと言えど人間。意見する人間が居る事は重要である。帝国は皇帝の力が特に強い事もあって。


「13はここ()()、死傷者が多いですね」

「そう……最近……。……防衛都市は人間の要。優秀であっても安易に動かすべきでは無いか。帝国から兵を出そう」

「しかし、防衛都市はギルドの影響が強いですよ。国が介入する事を良しとしないのではありませんか」

「それが面倒な所でも有る。が、死傷者が多いとあっては対応せざるをえない。向こうは物資を望んでいるようだが、な。何、名目としては兵の訓練とでもすれば断れまい。物資も訓練費として割く」


防衛都市の長は無能では勤まらない。が、有能な者がバカな考えをしないとも限らない。

そして、防衛都市の人間も、帝国の人間も魔界の存在に慣れていた。慣れてしまった。


そして数日後、事件が起きる。



確かに、第7は優秀だっただろう。

確かに、第13は短期間で死傷者を多数出しただろう。


しかし、帝国は目を向ける所を間違えた。

帝国はもっと広い視野を向けるべきだった。


短期間。

第7はほぼ完全に防衛出来たから見落としたのか、明らかにスタンピードの回数が多い。人間は、魔界に入れないからと言って、魔界の変化を見逃すべきでは無かった。










「シュ~」

「ヒイ?ん、魔物が騒がしい?……ああ、そう言えば。近所の風竜一家の長男長女がそろそろ巣立ちか……。挨拶(牽制)しておかないと」

結界が人間だけ通れないようになっているのは、単にレイが会いたくないのが人間なだけ。後はセフィロトには関係無いが、対象が少ない方が結界の消耗が抑えられる。

だから魔物の出入りは自由だった。


レイが人間からちょっと(二百年)目をそらしている間に、人間社会は動く。

それでもレイは、自身の感情が揺さぶられる人間と居るより今の方が穏やかだった。


どうせ、レイは人間では無い。


人間と居ようが魔物と居ようが、何処に行っても……たった独りなのだから。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ