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第7話 ライラとパーティーを組もう

冒頭少し、ソトリア王国の様子を入れてみました。その後は主人公の様子に戻ります。

 

 ソトリア王国の王の執務室では、議論が紛糾していた。


 魔の森から、これまで見たこともないほどに強力な竜のブレスが、天に向かって放たれたというのだ。これは何を意味するのか。


「報告された規模のブレスであれば、おそらく魔の森の銀竜の仕業でしょうな」

「妃殿下がご崩御なされ、王子殿下が行方不明というこの大事に、さらに竜とはどうなっているんだ」

「これまで、魔の森の銀竜は、あからさまな敵対行動を人間に対してとったことはありません。我が国との間にも100年ほど前に対話を行い、相互不可侵である限り、手出しはしないと……」

「100年も前の話をどこまで信じられるか」

「竜にとっては100年などさしたる時間ではございません。それよりも、ここで問題となるのは相互不可侵であるかぎりという点です。これまでも、野盗などか魔の森に踏み込むことはありましたが、彼らは王国の民ではありません。我々の責任ではないと言えるでしょう。ですが、このタイミングでの竜の警告、何か意味があるのではありますまいか」

「……まさか」

「証拠があるわけではありませんが、もしかすると、ソトリア王国の人間であると明らかにわかる存在が、魔の森に足を踏み入れたとしたら……、それを知り、竜が警告を発したのかもしれません」

「王子殿下が魔の森におられると?」

「可能性はあります。妃殿下はおそらく、王子殿下に身代わり魔法をかけておられた。そのためにご自身がまさに身代わりとなり、王子はご存命のまま、魔の森に連れ去られたという可能性もございます」

「たしかに、王子は稀なるソトリア王国の始祖竜の証をお持ちだ。銀竜にはわかるかもしれませんな」

「もし本当に魔の森におられるのであれば、王子殿下をお助けする必要がある。身代わりの保全魔法の効力は49日。まだご無事でおられる可能性が高い。魔の森を捜索する必要があるな」

「ですが、むやみと魔の森に入っては、銀竜を刺激してしまうのでは」

「まず銀竜に話をつける必要があるだろうな。対話ができるだろうか」

「そもそも銀竜など討伐してしまえば良いのでは?」

「誰がそれをやるのですかな?それに、銀竜だけの問題ではありません。魔の森には多数の魔物がおります。銀竜がその気になれば魔の森の魔物たちは人間を迎え撃つでしょう。さらに人里に下りてくるかもしれません。むやみに刺激することは避けるべきかと」


「正式な使者を送る。王国に魔の森への進出の意図はないと伝え、もしも王子がいるようであれば回収せよ。人選は任せる」


「はっ、陛下、かしこまりました!」


 こうして、ソトリア王国から魔の森へ、使者が遣わされることになった。



 -----



「あ、それいいね!とってもカッコいいし強そう!」

「うーんやっぱり?俺もこれが馴染む気はするんだけどさぁ……」


 住処である洞窟の前で、ライラと向かい合って実験中である。

 何のかというと……俺の見た目についてどれがいいか試しているのだ。

 本来の姿は赤子なのだが、赤子のままだと移動もままならない。なので、普段使いする見た目を動きやすい姿に変えようと考えている。


 いくつか試した結果、しっくりくるのは、ラスボスである魔王が、正体を隠して勇者の仲間になっていた時のものだ。目立つ金髪金眼を黒髪黒眼に変更している。見た目はゲーム中の勇者と同じくらい、10代後半くらいだ。そう、実は魔王は勇者としばらく仮の仲間として行動する。そして、勇者が銀竜の鎧を手に入れると、その鎧を奪って去っていくのだ。その時の姿が割としっくりくる。

 黒髪黒眼というのが日本人的におちつくし。

 前世?と比べても若返ってるしイケメンになってるしでちょっと申し訳ない感すらあるが、感覚的にしっくりくるので致し方ない。

 ちなみに、魔王として勇者の前に現れる時のモデルもあるが、それも馴染むものの金髪金眼は目立ちすぎるだろうから、これで過ごすのは却下かな……


「よし!じゃあこれに決めた!何か問題が起きたらまた考えよう」

「うん!いいと思うよ!私はお揃いで嬉しい!」

「そうだな、黒がお揃いだな。ライラは目が金色だけど……」


 そうだ、忘れてはいけない。

 もともとライラも一緒にレベルアップしようと考えていたんだった。銀竜の登場に気を取られてしまったが……


「なぁ、ライラ、俺の仲間にならないか?パーティーを組むって機能があって、それを使うとお互いに経験値を分け合ったりできて便利なんだけど……いやこの世界でうまく機能するのかはわからないんだけど……」


 曖昧な言い方しかできない俺に、ライラは顔を近づけるとためらいなく同意してくれた。


「もちろんいいよ!私達が仲間になってパーティー組む!って、今とあんまり変わらないけど何が違うの?」

 すんなり受け入れてくれるライラがありがたい。

 先程黄金竜モデルになってスムーズな会話をして以降、ライラとの、おそらく他の竜との会話もスムーズに感じられる。会話における魔力操作のコツを掴んだのかもしれない。


 さて、ライラの同意ももらえたことだし。

 見慣れたメニュー画面を開くと、すでにライラがパーティーに参加していた。ライラのステータスが表示されている。

 俺と意思と本人の同意があればパーティーに参加できるんだろうか?そんな感じがする。


 ライラのステータスは、と……



 名前 ライラ

 種族 古代竜

 レベル 7

 経験値 689


 体力 159

 魔力 392

 力 122

 防御力 254

 知力 150

 素早さ 95

 運 99


 称号 〔NEW〕魔王子の友

 状態:異常無し

 加護:魔王子の護り



 ………えっ

 魔王子ってなんだ?

 もしかして俺のことか?魔王になる王子だから魔王子?誰が決めてるんだよこの称号って!

 こんなのゲーム中には用意してないぞ!


 ふと気付いて自分のステータスも確認する。と。



 名前 ルカ

 種族 人/竜

 レベル 99

 経験値 999999


 体力 999999

 魔力 999999

 力 999999

 防御力 999999

 知力 999999

 素早さ 999999

 運 999999


 称号 〔NEW〕魔王子 黒竜の最愛 捨てられし王子

 状態:身代わり魔法〔心身保全〕残り45日

 加護:*****


 増えてるー!魔王子増えてる!なんだこりゃー!

 ゲーム中にはこんな称号なかった。

 思えば黒竜の最愛なんてのも無いよ!

 どういう基準で増えるんだこれ?


 ゲームの設定的には、複数の人から認識された呼称や、影響力の強い者から呼称されると称号として追加されて、セットする事で多少の追加効果が得られるようなものだった。

 もしそのルールなんだとすると……竜であるライラや銀竜がそう認識した呼称が称号になってる、とか……?


 え、銀竜のせいかな、この魔王子ってやつ。

 何かこうそこはかとなく中二感も漂う、嫌いじゃないけど、自分につくとこっぱずかしい感じのこの称号は銀竜が付けたのだろうか……


 そしていつのまにか魔王子呼び、ライラにも影響してるし!

 ライラの称号、魔王子の友については、まぁパーティーも組んだし、大切な友達だと思っているし、良しとしよう。だが。

 加護にある魔王子の護りってこれは何だ。

 ゲームでの加護は、神や精霊などの人を超越した存在から特別に認められた証としてつくものだ。

 ゲームクリアの最短ルートから逸脱して各地にある精霊の住処をめぐって加護をもらって回るのもよし、古き神の神殿を探し当て、認められて加護をもらうもよし、という、まぁやり込み用ともいう機能だ。無くてもクリアは出来る。が。

 魔王子なんて加護はなかった。


 本当にこの世界は何なんだろう。

 ここまでゲームに似ていて、ゲームメニューもデバッグモードも使えるのに、ゲームにはない要素も当たり前のようにある。


「ルカ?どうしたの?」

 ライラに声をかけられてハッとした。

 この世界の謎は深まるばかりだが、まずはライラの強化が先だ。


「何でもない、無事にパーティーを組めたのを確認してた。ところでライラ、俺の手元にあるこのメニュー表示見えるか?」

「……?何も見えないよ。手元に何かあるの?」

「やっぱり見えないのか。ライラは、メニューって何かわかるか?こう、自分の強さとかを数値で見た事あるか?」

「わかんない。人間は、自分たちの強さを数値にして見れるって聞いたことはあるけど……竜はそんな事しないし。対面すれば相手の強さはわかるし、分からなければ戦ってみればいいし」

「お、おお、意外と好戦的なこと言うねライラ……もしかして竜って、戦うことが好きだったりする?」

「本気で戦ったりはあんまりしないよ。メスはとくに戦わないし。私も、必要ないのに戦ったりはしないけど。オスは、強さを示すために戦ったりするよ」

「なるほど……」


 意外と戦うことに抵抗のなさそうなライラにちょっとびっくりしたが、とにかく、ライラに俺のメニュー画面もデバッグモードも見えないようだ。

 さらにライラ自身もメニュー機能は使えない。

 でも、人間は強さを数値化している、と。それがこのメニュー機能のことなのか、また別のものなのかわからないが。

 人間については一旦置いておくとして。

 ライラの強化をどうしようかな。

 俺はデバッグ機能によって、ステータスの数値をカンストしてしまったが、これをライラにも適用……できるんだろうか?

 一応、デバッグメニューに、全パーティーメンバーを最強状態にするコマンドはあったはずだ。

 やってみるか?……いいんだろうか?


「ライラ……えーと、一瞬で最強になれるとしたら、なりたいか?その後しばらく力が出すぎたりで不自由かもしれないし、そもそも何が起きるか……成功するかもわからないんだけど……」


 迷いつつ問いかけた俺を見てライラはキョトンとする。

「危ないことなの?」

「俺がやって見た限りは、そこまで危なくなはない……と思う。ただ、俺もさっきやってみたばかりで、長く時間が経ったらどうなるかとか、どうしてこんなことができるのかとか、わからないんだけど……だから、絶対安全とは言えないし……うーん……」

「いいよ、ルカが自分にやってみて大丈夫だったんでしょ?私はルカと同じがいいよ。やってみて!」

「い、いいのか?聞いておいて何だけど、うまくいく保証は、ないけど……」

「ルカはもう自分にそれやっちゃったんでしょ?危ないなら私も一緒に危なくていいよ」

「そうなのか…?それはリスク管理的には全く良くない感じはするが……気持ちは嬉しいし、多分上手くいく……とは思うんだけど……」


 いいのか?としばし迷ったが……やってみるか。

 だいたい他に簡単にレベルアップできる方法なんて無いんだよな。俺がパワーレベリングしてライラをレベルアップさせるとしたら、この魔の森の魔物を狩り尽くすことになる。それは銀竜も黙って見てはいないだろうし、ライラも望まないだろう。種が違うとはいえ、森の番犬ガルムとも意思疎通して俺を引き渡してもらったりしていたし、他の魔物とあまり遭遇してはいないが、とくに警戒もしていないので、うまく共存してやっているのだろう。


「よし……じゃあいくぞ、ライラ!」

「うん!」


 ポチッと!

 ステータスを確認すると、あっけなくライラの数値もカンストしていた。


「出来たよライラ。試しにちょっと身体動かしてみて。えーと、驚くほど力が出ると思うから、控えめに……」


 ブォンッ!

 目の前を黒い竜巻が通り過ぎていった。

 お、おお、これがリアル竜巻。ってライラー?!


「あれーちょっと止まらないよー!待って待ってきゃー!」


 ドゴアァァァァァァァ!!!


 焦ったライラがうっかりブレスを吐き出す。

 いやそれ前からマグマレベルだったからな!

 カンストした今は……見た感じ火山の大噴火にしか見えねーよ!やべーよ!あれを地面に到達させると凄い被害が出る未来しか見えない!


 俺も焦って、魔法で……とか言う規模じゃ無さそうだしどの魔法が良いかなんて咄嗟にわからないし!何だかんだ選択し慣れてきたおなじみ黄金竜に変化。あれっ水竜の方が良かったかもなと思いつつ、もう間に合わない!とにかくあのマグマブレスが空中にあるうちに消さねば!と、目分量で同じくらいの強さに調整したブレスを吐き出し相殺を狙う。


 ゴバアァァァァァ!

 ドシャァァァァァ!

 パキーーーン!


 ………ちょっぴりこの世の終わりっぽい爆発が起きて、何とか相殺されたようだった。

 よ、良かった……か?


 お互いのブレスが触れ合ったタイミングで一瞬あたり一帯が真っ白に光って、しかも衝撃波が球形にあたりに広がった気もしたが、うん、魔の森が消失しましたなんてことにはなっていない。もともと、近場の木々は燃えちゃってたし……


 少し離れたところに、衝撃を受けて気を失い、ペシャッと地面に伏すライラを見つけて近くに行き様子を見る。単に気絶しているだけのようでほっとする。

 人間より竜の方が基礎能力が高い分カンストしたステータスの影響も大きいのかもしれないな。などと考えていると……


 既視感のある大きな竜の影が。


「……あまり騒ぎを起こさぬようにと言ったはずだが……どういうことだ?」


 でた、ライラパパ、銀竜!

 ライラは銀竜が自分に無関心だと思っているようだが、俺はわりとちゃんと心配されてるんじゃ無いかと思うな!なんて逃避しつつ!


「……申し訳ありません……」


 ライラも気絶しちゃってるし、これは俺が悪かった。もう少し説明してからやってみるべきだったな……


 しばらくして意識を取り戻したライラと銀竜に対して説明する。といっても、原理はわからないが仲間としてパーティーを組んだ相手を強化できること。それを試したライラが力を制御できず、うっかりブレスを放ってそれを俺が相殺したこと。

 今伝えられるのはそれぐらいだが。


「……ライラが強くなることについては、基本的によいことではあるが、限度を超えているようにみえるが……お前はライラを神竜にでもするつもりか?」

「えっ?神竜にって、後からなれるんですか神竜に?」

「なったところを見たことはないが、そもそもソトリア王国の始祖とされる神竜も生まれた時には竜だったと聞く。強さを極め何かの条件を満たせば神と呼ばれるのだろう」

「へえー!そうなんですね〜」


 それは知らなかった。

 やっぱり俺の知らない設定もあったりするし、いや設定とは言わないのかもしれないけど、この世界がゲームそのものではないことは確実だな。だから何なのかはさっぱりわからないが。


「知らずにお前は……まあ、今回は直接的な被害は無かったようだが、今後危険な実験?とやらは、もっと魔の森から離れたところでやるように……」

「わかりました!」


 ですよね!俺もそう思ったよ!


「それから…お前のブレスや先ほどのライラとお前のブレス相殺の衝撃波は、近隣の人間の国にも伝わっているだろう。それによって何が起こるかは知らんが、攻め入られたり面倒なことにならないよう対処してくれるだろうな?ソトリアの王子よ」

「……わかりました……」


 そ、そうか人間の国にも見えてたかー……

 厄介な予感しかしないな!

 しかし、俺のせいで魔の森が攻め入られたり……そうだよ、ゲームシナリオで魔の森が侵攻されるタイミングはもっと後だが、これがきっかけでそれが早まったりしたら目も当てられない!

 何か対策を考えよう……


「ではくれぐれも、余計な問題を起こさぬようにな。ライラもこの魔王子が暴走せぬようよくよく気をつけるように」


 あっ!今魔王子って言った!

 やっぱりあの称号はこの銀竜のせいかー!


 飛び去り小さくなっていく姿を眺めていると、ライラがつぶやいた。


「もう何年も話してなかったのに、今日だけでこれまでにないくらい父さんと話した気がする……」

「そうなんだ?銀竜ってツンデレなのかな……?」

「つんでれ?」

「あ、えーと、好きな相手に素直に好意を表せないで冷たくしちゃう性格……みたいな?そんな感じかなって」

「父さん……つんでれなのかな?知らなかったよ……」


 いや本当にツンデレなのかはわからないけど。でもそんな感じだな。


「ライラ、ごめんな、説明不足で。急に力が強くなって困るよな。どこか遠くでちょっと慣らそうな」

「うん、でもすごいよ!全身パワーアップって感じ!ちゃんと慣れたら、ルカを絶対守れそう!」

「俺を守ってくれるんだ、ありがとう!俺もライラを守るからな!」


 物理的にも、ゲームシナリオからも守る!

 じゃあ、まずはお互いにこのステータスアップの影響に慣れつつ……人間たちがどう出てくるかにもよるけど、対策を考えることが直近の課題かな!


 デバッグモードの検証もまだし足りないけど、とんでもないことになりがちだから、項目をざっと見るだけ見ておいて、少しずつ試していこう、うん。


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