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第5話 デバッグモードを使ってみよう

 デバッグモード。

 ゲーム開発では必須のものだ。


 デバッグ。ゲーム開発において、プログラム上の誤り(バグ)を発見して訂正することを言う。

 ついでに、そのために用意されたモードをデバッグモードと呼ぶ。


 ゲーム開発中、初期段階ではまだマトモなメニュー画面なんてない。モード毎にバラバラに作っていたりするし。そんなわけで、初期においてはメニューの代わりを果たし、開発後半には、一部分を詳しくチェックするために、ゲーム中のパラメーターを弄れるように用意したりもする。


 後半に出てくる敵の強さを調整したり、テストしたり。マップ確認の為に無敵状態にしたり。


 そう。この世界がなんなのかはいまだ謎だが。

 メニュー画面が使えるのなら、もしかするとデバッグモードも使えたりしないだろうか?


 もし使えたら……凄く便利なんだけど……

 と、デバッグモードを表示させるコマンドを押すイメージで手元を見ると………


 出た。


 デバッグモードの表示が出た。


 マジか!

 メニュー画面に被せるように、デバッグメニューが表示されている。モニター上では見慣れた表示だ。


 やばい心臓がバクバクいってきた!

 何をこんなに驚いているかわかってもらえるだろうか。デバッグモードでは、大抵のことが出来たからである。

 パラメータ全てカンスト、無敵化、敵が出ない設定、魔法やアイテム、ゲーム中フラグなど全取得状態………セーブやリセットも出来る。シナリオモードではシナリオの途中から指定条件通りに開始も出来る。


 ……このデバッグモードでは、何が出来るんだ。

 まさか全ての機能が使えたら……どうなるんだ?


 気持ちを落ち付けようと深呼吸しつつ、デバッグモードを試してみるべく、洞窟から少しだけ離れた草地に移動してきた。

 ライラも付いてきたがったので、少し離れた後方に待機してもらっている。何が起きるかわからないので、あまり近くにいない方が良いかと思ったのだ。


 さて。何からやってみるべきか……


 まずは、実行はせずに項目を確認していこう。

 初めは……ゲームスタート。

 これは、まっさらな状態でゲームを開始する、ごく普通のゲームスタートと同じ機能だ。

 ……押したらどうなるんだろう。

 ちょっと怖すぎるので、保留だ。一生保留かもしれない。本気で死ぬ間際には押してみてもいいかもしれないが……今押して、ゲームスタートってどこからのことなのかわからないし。本当に開始するのかも謎だし。そもそも本来ゲームスタートで開始するのは勇者の物語だ。ラスボスの俺に何が起こるのか不明すぎる。


 次は、セーブ・ロード。

 セーブはハードディスクに空きがあれば無限に出来るが…今はデータがない。

 ……え、セーブ出来るのか?まさか、セーブしておけば死んでもロード出来たりして……

 一応、セーブしておこうかな……

 通常メニュー画面にもセーブはあるが、セーブポイントでしかセーブ出来ない仕様のため、出来ていなかった。だがデバッグモードならいつでもセーブできる。


 ポチ、とセーブを選択してみた。

 即時、セーブ済み項目として1つ追加された。


 セーブ1:ルカ 魔の森 プレイ時間:5日15時間


 ……マジか。

 セーブできた。

 しかしこのセーブデータをロードしてみる勇気は出ない。何が起こるかわからない。これまた、万が一死ぬ直前になら選んでもいいかな……

 使えるか不明だけど、たまにセーブしておくか……


 そういえば、オートセーブ機能は無いんだろうか。ゲームにはあったが。オートセーブは、何かイベントや画面遷移のタイミングで勝手にセーブされる機能で、死んでもその直前のオートセーブから復帰できる……が。


 セーブ・ロード項目の次、ゲーム設定へ移行する。

 デバッグモードのゲーム設定の一項目として、オートセーブのオンオフがある。オートセーブはゲーム中は必須なので、通常メニューにオンオフは無い。が、オートセーブのせいでバグが起きることもあり、原因究明のためにオフにする機能をデバッグモードに用意したのだ。


 確認すると、今は……オフになっている。

 まあ、現実世界ではオートセーブなんて無いから、オフということなんだろうか……

 オンにしてみる。出来た。オンになった。

 どういうことなんだ?本当にセーブされるのかも不明なのでオートセーブの機能も不明だが、死んでも直前に復帰出来るんだろうか……便利すぎないか?いや、実際どうなのかは死んでみるまでわからないという恐ろしい話だ。実験はできない。これを信じて死んでみるなんて出来ないし、まぁ、これもオンにはしておくけど保留かな。


 ゲーム設定の他の項目を見てみる。


 効果音や音楽の音量設定……変えてもあまり変化ないような……あ、周囲の音が聞こえやすくなってる気がするな。小さな音を聞く必要がある時に音量上げてみよう。


 画面の明るさ……うわ、ま、眩しい!逆にすると……く、暗い!サングラスかけてるのかって暗さだな。これまた明るすぎたり暗すぎたりする場所でなら使えるかもしれない。今は初期設定でいいや。


 その他設定系の数値をいじってみたが、概ね現実に適用された。というか、俺の体感が変わった。左右の音バランスとか変えると気持ち悪くて酔いそう。


 さて、次は……アイテム全取得コマンドを押してみるか。駄目でも被害はなさそうだし。

 ポチッと。


 ……メニューのアイテムリストが埋まった。

 ゲームに出てくる全アイテムを取得できた、のか……?


 とりあえず、初期装備の冒険者の服を着るコマンドを選択してみる。


 一瞬で着替えが完了した。

 赤子サイズの冒険者の服を着ている。リアルで。

 おお、おおお!すごいな!

 これで着替えがない問題が解決じゃないか?!

 やったー!!いやマジで困っていたので助かる……!赤子の服をこの森でどう入手しろと!良かった……


 ちょっと待て。どうなってるんだろうこのアイテム。

 いや、デバッグモードで操作したらアイテムが入手できてること自体も異様だが。まだこういう既製品というか、この世界に複数あるアイテムはいい。レアアイテム……というか、シナリオアイテムはどうなってるんだ?

 魔王が竜化するキッカケになる、銀竜の鎧とか……あ、ある。

 え?あるのか?だってまだ銀竜は生きているはずだ。じゃあこれは何なんだ?いや、項目だけあって選べないとか……ポチり。


 ……え。着れた。銀竜の鎧もしっかり赤子サイズになってフィットしてるー?!何なんだこれ?

 今この瞬間に銀竜が消滅してたりしないよな?

 えぇ、コレはこの世界に唯一のアイテムの筈だけど、どうなってるんだ……?


 やや離れたところにいたライラも驚いてキュイキュイ鳴いている。それ何ー?!って言ってる。だよな。俺も知りたい。

 答える事も出来ず、首を傾げながら、いくつかのアイテムを装備してみる。

 カシャカシャっと軽い音と共に、サクサク装備を変更できる。剣や弓などの武器はリサイズされなくて大きすぎるけど。服は体型に合わせて変化するらしい。ゲームでも服はキャラの体型に合わせて変更される作りだったからか……?

 銀竜の鎧のような、シナリオアイテムやレアアイテムも出せる。回復薬なども選択すると手元に出てくる。レア回復薬も、……死んだ仲間を復活させるアイテムも出せた。本当に効くのか試せないが。


 回復薬程度なら試せるかと、ほんの少し剣先に触れて指を切ってみる。ライラがわあわぁ言っていたが、傷口に回復薬をかけてみる。……治った。


 すごいなぁ…… 便利だなぁ……


 やばい、チートっぷりに遠い目になってた。

 いやコレは俺だけではなくてこの世界では一般的なものかもしれない。そうだ、俺はそもそもこの世界が何なのかもわかっていないのだ。この程度でチートとは笑止!


 と、とりあえず服やアイテムの問題は概ね解決したんじゃないだろうか。うん。いいことだな!


 次行こう、次。


 ……所持金マックス。ポチ。


 お、おぉ……増えた。カンストした。

 お金をアイテムとして使用するイメージで金額表示をタッチすると、金貨が出てきた。お、おぉ……


 金銭問題も解決したようだな!

 よし!コレで金に困ることはなさそうだ!


 ……なんかだんだん申し訳なくなってきたぞ!

 良いんだろうかこんなことして?!

 これ流通させるとこの世界の貨幣バランス崩れるんじゃないか?

 いや、まて、だからこの世界ではコレが一般的かも……


 次行こう次。だいたい赤子が大金持ってても使い道がないし。魔の森で人間の金貨をどうしろって話だし。


 次……シナリオフラグはヤバイ感じがする。

 シナリオフラグというのは、一度プレイした部分のシナリオのフラグを立てるという感じで、シナリオの進行を管理したりするものだ。

 だけど、シナリオって……ゲームと同じシナリオの区分が表示されているが、そもそも主人公が勇者のシナリオだし、時間軸ももっと先だし、このフラグを立てたとしてもどういう影響があるのか訳が分からなくなりそうだ。

 ここはそっと封印しよう。うん。


 あとは……

 魔法は既にフルオープン状態になっているみたいだ。確かにフルオープンしている。


 強さの設定も変更できるけど……

 すでにカンストしているものはさておき、体力とか力とか、変更してみようか……

 よし。ステータスカンスト!ポチっとな!


 おお!力が湧いてきたー!みなぎるぜ!

 ビュンっ!

 うおわぁぁぁぁぁぁぁ!


 ちょっとガッツポーズをとるつもりが、身体が予想以上に早く動きすぎておかしな事になったー!

 上にあげた腕につられて身体まで飛び上がったー!

 浮遊魔法でふんわり勢いを殺す。

 こ、こ、こわいなこの身体!

 赤子の腕折れるんじゃないか?!いや、全パラメータマックスにしたから大丈夫だったのか。

 でも慣れないとやり過ぎそうだな……


 ふと思いついて、近くの大きめの岩を小突いてみた。赤子の小さな拳で、コンっと。


 ドゴァァァ!と音がして岩が割れた。割と盛大に割れた。マジか……すげーなーパラメータマックス……


 後方のライラは、もはやあんぐりと口を開けて呆然とこちらをみている。ダヨネー急に赤子が岩割ったら驚くよネー。

 だめだ、現実逃避したくなってきた。


 とにかく、地道なレベルアップをしなくても、もしかすると最強になれたのかもしれないな、うん。人ゲーム内のパラメータ基準だとすると、人類最強程度かもしれないが。うん。

 強くなることを求めていたんだ、願ったり叶ったりだな。ちょっと予想以上に凄そうで気持ちが付いて行ってないけどな。


 よし、パラメータもテストできた。

 マックス状態を使いこなすにはちょっと練習が必要そうだが、まあ、何とかなるだろう。


 次は……スキルを試してみるかな。


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