ゲーム開始の地、プリーテラへの旅路
バサリ、と竜の翼を広げて空に飛び立つ。
ライラもすぐに後から飛び立ち、ついてきた。
ヴィヴィアンの弟を救出することはできた。
遺跡を出た後のリック少年は、あの後王城に連れて行って魔法師団のメンバーや医療スタッフに診てもらったりしたが、特に異常はなかった。
ついでにヴィヴィアンを王国の広報担当者に紹介したところ、何やら盛り上がっていたが……そこは広報担当者に任せておいた。
あの遺跡についてはまだ気になったため、もう一度フラビスの遺跡と、王弟調査本部にも顔を出したが、特に進展はなかった。まぁ、昨日の今日で何かわかるものでもない。
そこで、遺跡と王弟の調査は一旦担当者に任せて、俺とライラは冒険者としてのランクを定めるべく、依頼の達成のため旅立ったのだ。
今、俺とライラはプリーテラへ向かっている。
ゲーム開始の地だ。
何百回も開発中にはゲーム画面として見たが……この世界のプリーテラはどうなっているんだろう。
目的は、2つある。
1つ目は、魔王の情報提供の依頼を達成すること。
プリーテラに行き、ゲームでの勇者……主人公と同じ名前のテオ・カーライルに会い、魔王についての情報を提供すること。
情報提供のみの依頼なので、難易度はさほど高くない。だから、この依頼を達成してもそこまで高ランクになる後押しになるわけではない、と冒険者ギルドマスターから説明は受けた。ただ、情報提供な割に、達成の見込みが見えず放置とも言える状態になっており、依頼達成できるなら助かる、という感じではあるようだ。
しかし俺としては確認せずにはいられない。
勇者の名で魔王の情報が求められているのだ。
そして、目的の2つ目は、ライラの母竜を探すこと。ヴィヴィアンの話によれば、ライラの母竜を連れた人間たちは、プリーテラに行くと言っていたらしい。
いまプリーテラに居るのか、まだ向かっている途中なのか、それともまたどこか別の場所へ旅立ってしまったのかわからないが、少しでも情報を集めたい。
そんなわけで、ライラと2人、竜になって空を飛んでプリーテラに向かっている。
プリーテラはソトリアからかなり遠く、座標がわからないため転移はできない。
歩くとかなりかかるので、竜になって飛んでいくのが1番早いだろう、というわけだ。
あまり人目につかないよう、かなりの上空へと飛び上がる。まれに竜が上空を飛ぶこともあるらしいので、見られても問題はないのだが。
「……飛んでいくと国境がわからないな……」
「国境?人間の国と国の間のこと?でも、そんなにはっきり決まってないんだよね?」
「はっきり決まっていないというか、決められないというか……」
国境は曖昧だ。
重要な、水場だったり資源のある場所については決まっているが、そうでない部分については、山の向こうは隣の国、大河のあっちとこっち、といつ感じだ。
ゲームでも、この辺が旧ソトリア国、こっちはプリーテラ国、とざっくり山や川で区切っていた。
そもそも人の住んでいないところには魔物もいるし、人口もそこまでいないし、隣国まで行くのもなかなか大変だ。
主要な道はある程度整備されて、そこには検問のようなものがあるが、山や川や森なんかは出入りし放題だ。
魔物のわんさかいる森に一般人が入るのは自殺行為だが。
飛びながら、マップを表示させる。
マップについてわかっていることがある。
なんと、このマップには、今この世界のマップを表示させることもできる。ただし、こちらは俺が
認識しているものしか表示されない。
近くにいたり視認したり、建物があると知っていたり、何なら町や国があると知っているところは、詳細を俺が知らなくても名前まで表示される。しかし、例えば、曖昧な国境線だったり、魔物の巣だったり、うまく説明できないが、俺の中で曖昧なもの、もしかすると他の人にとって曖昧なものも、表示されない。
そして、現在のマップに重ねるように、ゲーム内のマップを表示することが出来る。
これによって、ゲームとの差異が見てとれる。
ソトリア王国はゲーム内では滅びていたのでかなり違いが大きい。
プリーテラはどうだろうな……
「ねールカ、お昼ご飯どうする〜?」
「ああ、そうだな、そろそろどこかに降りて町に行こうか」
朝出発したが、プリーテラは遠いので今日中には到着できないかもしれない。ライラはあまり食事の必要はないのだが、俺に付き合って食べてくれている。
「この先に町があるから、手前の森で降りて、人になって町に行こう」
「うん!」
そうして町に向かった。
今回は、冒険者ギルドのマスターに交渉して、俺とライラの身分証の代わりになるよう、ギルドの仕事中である旨を一筆書いてもらっている。
そのおかげで問題なく町に入り、食堂を選んで町の大通りを歩いていると。
突然、雷を落とされた。
何を言っているんだと思うが、魔法の雷撃だ。
しかもこれ雷系の最上位魔法じゃないか?
ステータスを確認すると、体力が1減っている。
1………
「お主ら……その異常な魔力!しかもワシの雷撃を受けて無傷じゃと?!人間ではなかろう!正体を見せよ!」
声のする方を見ると、小さな少女……に見える、ゲーム内の見た目と同じ、ロリババア魔法使いが仁王立ちして杖をこちらに突きつけていた。