第4話 今後について考えてみる
さて、住処は少しマシになってきた。
ライラとも問題なく仲良くやれている、と思う。
日用品(毛布など)は欲しいが、とりあえずなくても死なない。
そう、死なないことが大事だ!
ものすごく基本的なものだけだが、まずは一応の生活基盤ができたと言えるだろう、うん。
あ、あと風呂とかも欲しいな……魔の森は天気が良くてもカラリとしていて、気候的には秋くらいの感じだ。つまり、水あびして放置はつらい。夜に濡れたままだと凍え死にそうだ。俺はまだ赤子で体力ないし。
あ、体力といえば、ちなみに今のステータスはこんなだ。
名前 ルカ
種族 人/竜
レベル 1→5〔UP!〕
経験値 0→366〔UP!〕
体力 5→15〔UP!〕
魔力 999999
力 1→3〔UP!〕
防御力 1→2〔UP!〕
知力 999999
素早さ 1→5〔UP!〕
運 999999
称号:〔NEW〕黒竜の最愛 捨てられし王子
状態:身代わり魔法〔心身保全〕残り45日
加護:*****
正直、防御力が1から2になったからと言って、だから何だよという感じがしないでもない。どちらにせよ紙レベルに弱いことは確かだ。いや、赤子レベルかな。ハハッ。
……そしてカンストしているらしきものに変化は見られない。上がっているのかもしれないが不明。なんだろう、テンション上がりにくいステータスだな……。
とくに魔物と戦ったりしているわけでもないが、日々の浮遊魔法なり洞窟のリフォームなりで使った魔法や体力の結果なのだろう。
あと、称号が増えた。捨てられし王子より良いけど…ちょっと照れるなあ。最愛だって。
ライラは俺を大事に思ってくれているらしい。ちょっと照れくさいけどうれしくはある。
ライラはゲームには出てきていない、と思う。魔王の過去設定として魔の森の長は出てきたが、そのほかの竜についての細部までは用意していなかった。もしかするとその他の竜、と表現していた中にいたということだったのかもしれないが、不明だ。
そう、ゲームだ。そろそろ、その問題についてまじめに考えておいたほうがいいかもしれない。あまりにも不便でリフォームを頑張ってしまったが、気になってはいた。
この世界が本当にゲーム世界なのかとか、俺が本当に魔王の子供時代を体験しているのかとか、わからないことは多いが、現状もし本当にそうだったらどうすべきかを考えておいたほうがいいだろう。
つまり、この世界がゲーム世界…すくなくともそれに酷似した世界であるとして。このまま放っておくと俺が魔王になると仮定したら。俺はどう行動すべきだろうか。
まず、このまま流れにまかせて、魔王になって、勇者に倒されるのは全力で回避したい。
ゲームのシナリオ的には回避せず魔王になるのが正しいのかもしれないが、嫌だ。
最終的に倒されるのももちろん絶対に嫌だが、そこに至るまでの過程もものすごく嫌だ。
魔の森に捨てられた王子がなぜ魔王になるか、という理由付けがしっくりくるように、この魔王には動機となる暗い過去を用意していた。
魔の森に捨てられた王子は、魔の森のボス、古代竜に育てられる。
王子が赤子から少年へと育ったある日、実の親である王が魔の森に攻め入り、育ての親である古代竜が実の親に殺される。
実の親とは知らないまま、王子は人間を憎み、魔族側の立場となって力をつけていく。実の親である王とその祖国を攻め滅ぼし、比類なき強さを手に入れ、魔王を名乗り、魔族に敵対する人間を容赦なく倒して行く。
人間側は魔王に対抗するため、勇者を送り出す。だが、それが魔王をさらに怒らせる。
自分を育ててくれた古代竜の亡骸が、勇者の鎧などに加工されていたことを知って許せなかったのだ。勇者を打ち滅ぼし亡骸を回収して、弔うため、魔王は勇者と敵対する。
最後の戦いで、ラスボスは勇者から奪った竜の鎧と一体化しドラゴンへと変貌する。
そして激闘の末倒されるのだ。
……そのシナリオを自分が体験したいかというと絶対にNO!だ。
今のところ魔の森のボス古代竜には会ってもいないが、考えたくないが、同じシナリオがライラに適用されたとしたら……ライラが殺され、勇者の鎧にされる?
絶対に!NO!だ!!
この道を歩むわけにはいかない。出会ってからまだ短い時間しかたっていないが、こんなに俺を大切にしてくれているライラを、俺のせいでそんな目に合わせる?ありえない!
この世界に骨をうずめることになるのか、突然夢が覚めるのか、わからないが、とにかくこのシナリオだけは回避したい。
本当は、もうこの世界が夢だとは思えなくなっている。リアルすぎるのだ、すべてが。
だから安易に死んだりもできない。保全魔法がかかっている今でも、ライラのブレスで髪が焦げたりするのだ。死ねるかもしれないが、死にたくない。ライラを害されたくもない。
よし。
まずは、王子の祖国…ソトリア王国から攻め入られても、決して負けないように用意すること。圧倒的に強くなること……だろうか。もしもライラを狙われても、守り切れるように。
同時に、攻め入られないように王国側を説得できるかやってみるべきか。
ゲームでは、この魔の森の資源欲しさと、ボス古代竜の弱みであるつがいの竜を捕獲したことで、今なら倒せると攻めてきた……という設定だった。王子が古代竜に育てられているとは夢にも思っていなかったのだ。
森の資源が魅力的なことはどうにもならないが、つがいの竜の捕獲を阻止するか、逃がすかできれば、攻め入ることを諦めるかもしれないな。
それが起きる時期は、王子が少年になったころ…7歳くらいのイメージだったが、詳細に決定していたわけではない。もしかするともっと早く起きるかもしれないし、ゲームと全く同じ時期とは限らない。早めに対策しておくに越したことはないだろう。
まずはレベル上げでもしつつ、ボス古代竜に挨拶にでも行くかな……。
そうだ。自分のレベル上げももちろんだが、念のためにライラも一緒にレベルアップしよう!
そうだ。デバッグモードつかえないだろうか?