遺跡調査員は何をしていたのか
「遺跡での仕事について、ですか……」
これで本日2人目。
高魔力保持者であり、遺跡調査を行なっていたという男性の話を、ライラと2人で聞きにきた。
今日訪ねたはじめの1人は地方貴族の子息で、今は具合が悪いからと面会を断られた。
2人目が、このフラビスの商人の息子だった。
そこで、連絡先だった実家の商家を訪ねたのだが。
案内され、面会したこの男性、コナーさんの顔色は見るからに悪い。
「あの、コナーさん、失礼ですが体調が良くないのでは?何かの病気ですか?もし良ければ、回復魔法をかけましょうか」
どうにも具合が悪そうに見えるので提案してみる。
「ああ……ありがとうございます。ですが、体調が悪い訳ではないのです。家族にも心配されて、回復魔法もかけてもらったのですが……良くなるものではなく……怪我でも病気でもありませんから」
つつけば倒れそうな顔色でそう言われても……
「なにか原因があるんですか?あなたの前に訪ねた遺跡調査員の1人も、体調不良で面会できなかったんです」
「ああ……他の人のところにも行かれたんですね……おそらく、元気なものはあまりいないと思いますよ……」
「遺跡調査で何かあったんですか?何かガスが出ていたとか……いやそれなら回復魔法が効くはずか。何があったんです?」
「……身体には、何もありません、ただ……」
「ただ?」
「……ここにこうして、遺跡の話を聞きに来てくださったのも運命かもしれません。私の中ではもう消化できないのです。王弟殿下は捕らわれたと聞きました。もう話してもいいはずだ……聞いてください……」
そうして話されたのは、遺跡調査として行われていた内容だった。
「はじめは、王弟殿下から募集があったのです。魔力の高いものを集めて、遺跡の謎を解き、その後には観光地にするという話で、魔力が高く商家として仕事の機会があるかもしれない、王弟殿下との繋がりが出来るかもしれないと、私は遺跡調査に参加することになりました」
それは普通の流れな気がするな。
王弟がなぜ遺跡調査をし始めたのかはわからないが。
「集められた私たちは、遺跡調査を始めました。たしかにあの遺跡は、奥へ進むたびに魔力が減っていくという仕掛けがあり、魔力が多いものでなければ太刀打ちできなかったでしょう」
……たしかに、あの遺跡のトラップの一つに、魔力が奪われるエリアというのはあった。
しかし実はそれは地面に接地していなければ防げるので、俺が赤子の時に愛用していた浮遊魔法で回避できる、魔法使いには簡単なトラップなのだが……それに気づかないなんてことあるかな?ないよな?
「どうかしましたか?」
「いや、例えば浮遊魔法とかそういうものでトラップを回避しようとはしなかったのか?」
ゲームと同じだとは限らないし、やってみても効かなかったとか?
「……あのう、魔力が高いとはいえ、私たち魔法使いの修行をした訳ではないので、生活に必要ない魔法まで使えるものはいませんでした」
「えっ!そ、そうか……悪い、続けてくれ」
あの遺跡がゲームのように、魔法使いを鍛えるための遺跡だとしたら、魔法が使えないと魔力がいくらあっても無理ゲーだと思うんだが……
とにかく、話を聞いてみよう。
「……そして私たちは、そのように、遺跡にある仕掛けをひとつひとつクリアしては報告をまとめ、また遺跡に行き……と遺跡の調査を繰り返しました」
「調査というか遺跡の攻略に聞こえるけどな……」
「……私たちも、そうかもしれない、と思い始めていました。ただ、もし攻略したいのであれば、魔法使いの冒険者などに依頼を出した方が早いのです。それなのに私たちを雇い、報告書を求めているからには、やはり調査を優先しているようにも思われました。報告書では特に、読めない文字らしき石碑の内容や、壁画などには正確さを求められました」
「文字の石碑……」
それは、ゲームではクリアのヒントを書いたりしていた石碑だろうか?
「そうして、遺跡の最奥の部屋になんとか到達しました。そこに……あの、生きた魔石のようなものが……あったのです」
「生きた魔石?」
なんだそれは?
ゲームにはそんなものはなかった。
最後の部屋には魔法しか効かないボスがいて、倒すと魔法使い用のアイテムが手に入るというものだったはずだ。
「それが……何なのかはわからず、ただ、脈を打つように、ドクンドクンと動いていて、とても気味が悪かったのです。それを報告したところ……」
コナーさんのもともと悪かった顔色がさらに悪くなる。
「ある時、小さな魔物を連れて最奥へ行くことになりました」
「魔物を……?」
「はじめは小さな魔物でした。檻に入れられて、それを奥まで運び、最後の部屋に放しました。そして部屋の扉を閉めて私たちは戻りました。それで思うような変化がなかったのか、何なのか……だんだん魔物の大きさが大きくなっていきました。そして、最後には……子供が連れてこられました」
「……まさか」
「私たちは、その子供を、同じように遺跡の奥の部屋に置いてきました……次に行った時には、子供はいませんでした。そして、生きた魔石も無くなっていました……」
「どういうことだ?」
「わかりません、ただ、私たちは、ただの調査のつもりで、何をしてしまったのか……あの子供はどうなったのか……」
「……どんな子供だった?」
まさかそれが、ヴィヴィアンの弟なのか…?
「まだ小さい……おそらく5歳か6歳くらいの……男の子でした。意識は無く、寝ている状態で渡され……ただ、呼吸はしていました。髪は癖のある赤毛で……服は特に特徴はない、普通の平民の子供がきているようなものだったと思います」
「そうか……」
ヴィヴィアンから聞いた弟の容姿と合致している。おいおい……
「私は、あんな小さな子供を殺してしまったのではないか、何ということをしたのかと、また、王弟殿下が捕まり、このことが明らかになればどんな罪になるのかと……思い悩み、耐えられなくなって……」
「それでそんなに憔悴していたんだな」
「……はい……」
ヴィヴィアンの弟である可能性の高いその少年は、どうなったのだろうか。
遺跡の奥にあったという生きた魔石とは何だ?
「私がお話しできることは……これぐらいで……あの、私は罪に問われるのでしょうか。どんな罪になるのでしょうか?言われるがままあの少年を……生きて戻れないとわかっているあの部屋に置いて……私は……」
「……俺が今、裁くことはできない。結局その部屋で何が起きたのかわからないんだろう?」
「……」
「遺跡のことはさらに調査を進める。コナーさんの話を聞いて、どこを重点的に調べればいいかわかったし、とても助かった。話しづらい内容を話してくれてありがとう」
「……はい……」
コナーさんはうつむき、深いため息をついた。
震える手で顔を覆う。
「……こちらこそ、聞いてくださってありがとうございます……」
コナーさんの話を聞いて、次の行動が決まった。
ヴィヴィアンへの手紙をソトリア王都のギルドマスター宛に書き、3日間戻らなければ郵送してもらうようにこの地フラビスの冒険者ギルドに頼んだ。
それから、王弟調査本部と王城の世話係には連絡をして。
明日から、ライラと2人、問題の遺跡に入って行く事にした。
「楽しみだね、お弁当持っていこ〜!」
「……ピクニックみたいだな……」




