表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

25/52

第25話 帰り道 、これから

ライラ視点、フェリクス視点、ルカ視点に切り替わります

 

「ありがとう、ライラ」

 そう言ってくれたルカは、私をその美しい黄金の瞳で見つめて、微笑んでくれた。


 少し悲しそうに見えたルカが、少しでも慰められたなら嬉しい。


「ライラ、これから王子としての俺がどういう扱いになるかわからないけど。もうあんまり、気にするのはやめようかと思ってる」


 ルカが私を見ながら、私の大好きな声で、大切な話をしてくれる。


「これまで、一応王子だし、ゲームのシナリオ……えーと、王子としての未来?みたいなものを気にしておかなきゃいけないのかなって思ってたんだ。だけど、そうやって考えて動いても……いい結果になるとは限らないし。好きな事、やりたい事、しようかなって思ってる」

「うん!いいと思うよ!」

「つきあってくれるか?ライラ」

「もちろんだよ!ずっと一緒だからね!」

「ありがとう」


 優しい目で微笑まれて、すごく嬉しい。少し照れる。


「信じられないかもしれないけど、聞いてくれないか、ライラ。俺には前世の記憶があるんだ」

「前世?」

「そう……この世界に生まれる前に、別の世界で暮らしてた、っていう記憶がある。そこでは俺は、ゲームっていう……遊びを作ってて。その遊びの設定が、すごくこの世界と似てるんだ」


 それから、ルカは、前世に作ってたゲームっていう遊びと、その中のお話やルールがこの世界ととても似てるって事を教えてくれた。それから、なぜかそのゲームの中のルールがルカだけは使えるみたいだってこと。だから、沢山の姿に変われたり、ありえないほどの物を持ってたり、強さを一瞬で強くする事が出来たんだって。


 私は、なんとか理解しようと思って頑張ったけど、多分半分くらいしかわからなかったかも。

 ううん、もっとわかってない気もするけど……


「……ルカ!」

「ライラ、ごめんな、今まで言えなくて。どう言ったらいいかわからなかったし……変だと思われそうで……今もちょっと怖い。こんな奴、変だと思うよな」

「ルカ!私、ルカが好きだから!それは絶対変わらないから!そうじゃなくて、ルカ、こんなにたくさんの事が出来て、なんでも思い通りに出来るくらいなのに、みんなに優しくてすごいね!」


 興奮して、ドーンとルカにしがみつく。


「うわ、びっくりした、小さくても竜の勢いすごいな」

「あのね、あの、私ルカが好き!もっと好きだってわかったよ!だって、ルカ凄いんだもん!ルカみたいに優しい人、竜も、見たことない!」

「……優しいかなぁ?」

「だって、もしも竜の誰かがそんな力を持ってたら、絶対に世界征服とかしてるよ!それで全部の雌竜を侍らせたりして!」

「メス竜のハーレムか……すごそうだな……」

「でもルカは、私にも優しくて、それに、父さんに怒られても怒らなかったし、みんなに優しいし、もう!もう!好き!」

「そ、そっか、ありがとうライラ、嬉しいけど、なんか照れるな……」

「いいよ!照れて!」

「う、うん……あ、それで、気になってたことがあって。ライラのお母さんのこと」


 ビク、と体が反応してしまった。

 お母さん……私を置いていった、母……


「ライラのお母さんが銀竜の番なんだろう?俺の知ってるそのゲームでは、人間にその銀竜の番が捕まって、そのせいで銀竜、つまり魔の森の魔物たちが人間に負けたって話があるんだ」

「人間に捕まって……?でも、母は、今も人間と一緒にいるはずだよ」

「うん、だから、よくわからないんだ。今一緒にいる人間は安全なのかもしれないけど、何かがあって、別の奴に捕まるのかもしれないし……とにかく、行方知れずなのは良くないと思うんだ。だから、少し落ち着いたら、一緒にお母さんを探しに行こう」

「ルカ……」


 突然母の話になって、うまく受け止められない。

 母を探すことは、嫌じゃないけど、ちょっと怖い。なんで探しに来たのって言われたら、拒絶されたらどうしよう。


「俺が気になってるだけなんだけど……ライラをこんなに俺のことに巻き込んでるのに、お父さんである銀竜には一応、挨拶したけど、お母さんに挨拶しないっていうのも悪い気がするし。城にずっといる必要がないように、交渉するからさ。一緒に冒険者とかになって、色んなところに行きながら、この世界を知りながら、探そう。ライラと一緒に色んなところに行きたいんだ」

「ルカぁー!好き!!」


 どしーん!またぶつかってしまった。

 でももう!ルカ!好き!


「いいかな、ライラ」

「いいよ!一緒に、色んなところに行って、遊ぼう!そのついでに、母のことも、調べる、そういうこと?」

「そういうことだ!」


 ルカと旅。色んなところで冒険!

 そんなの楽しみに決まってるよ!

 母のことは、まだ、こわいけど、でも。


「一緒に冒険、楽しみ!」

「うん、俺もだよ」


 ウキウキしてきて、体がユラユラ揺れてしまった。


「ライラ、踊ってるのか?可愛いな。……さて、そろそろ休憩終わりにして、行こうか」

「うん!」


 こうして、ルカと宿まで飛んで行った。

 すごく、幸せだった。



 ----



「おとうさまが……つかまった……?」


 とある城の一室。

 フェリクスは、今聞いたことが信じられなかった。


「はい、王弟殿下は、国王陛下に毒を盛った疑いで、先程拘束されました。これから取り調べが行われますが……しばらく、お会いになることはできません」

「どうして!おとうさまはそんなことしないよ!」

「それはこれからの取り調べで判明することでしょう……幸い、国王陛下は、フェリクス様に罪は問わないと仰っておいでです。ですが、王弟殿下の罪状がはっきりするまで、カーランの領地にてお過ごしいただくことになります」

「おかあさまの……」

「はい、王弟妃殿下のご実家の領地になります」


 王の使者が去った後、フェリクスは自室で泣き続けた。侍従や侍女が慰めるが、泣き止まない。


「そんな……!どうしてなの、どうしておとうさまがつかまったの?どうして!」


 泣きつかれた侍女のサーシャは、困り果ててつい、話してしまった。


「聞いたところでは……王子の友を名乗る竜が現れ、毒に侵された王の命を救ったとか……その時に、毒が王弟殿下の手によるものと竜が主張したという噂です……」

「まさか……りゅうって、まさか、ルカ……?!」

「名前まではわかりませんが、もしかするとそうかも知れません……」

「ひ、ひどいよ、ルカ、ぼくとともだちになったとおもったのに!ひどい!ルカも、おうさまも、王子も、だいきらいだ!」

「フェリクス様……」

「ぼくは、ぜったいゆるさない、りゅうも、おうさまも、おうじも……!」


 ---


 宿に戻ったライラと俺は、アレンたちを呼び出し、お互いの情報交換を行った。


 俺からは王が毒で死んでいたこと、蘇生したこと、王弟が犯人だと伝えたこと、王子が分身した身だと伝えて、受け入れるよう要請中なことを。


 こちらは特に異常はなかったようだが、無事に捉えた賊や領主の弟を締め上げていること、領主が監督不行き届きを反省していることなどを聞いた。


「うん、こっちは問題なさそうでよかったよ」

「そちらは問題だらけだったようですね……」

「王が死んでたのは俺のせいじゃないし、俺がこのままずっと赤ちゃんらしい行動をして誤魔化し続けるのも無理があるし、仕方ないだろ。王弟が捕まるか、見張られていれば、取り急ぎの命の危険はなくなるだろうし、やっと王城に行けるな」

「そうですね。王が検討しているという王子殿下の扱いについては気になりますが……」

「心配しても仕方ないだろ。最悪、ライラと逃げるからよろしく」

「ええっそんなのアリですか王子!」

「最悪の場合はな、まぁ王様の出方次第かな」


 そして、俺は赤ちゃんの身体に視点を切り替え、パーティメンバーとして出していた若者魔王モデルの表示を消した。これでパーティは赤子な俺とライラだけになった。


「うわ、消えた!」

「本当にこの魔法は何がどうなっているんですかの、殿下」


 そして、赤ちゃんの身体で表示するモデルを若者魔王に変更した。


「どうなってるかは実は俺にもわからないんだよな」

「うわあぁ?!え、殿下が、赤ちゃん殿下が消えちゃいましたけど大丈夫っすか?!」

「赤ちゃんだけじゃなくて、こっちでもこの体に変化できるんだ」

「本当に、訳がわかりませんな……」


 目を見開いてみてくる彼らにわかってもらうため、パッ、パッ、と若者魔王と赤ちゃん状態を切り替えてみた。

 みんなの口がポッカーンとあいているのが面白いな……


「さてじゃあおれも素早く移動できる体になったし、城に向かってサクサク行こう!」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ